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アリアは知らない  作者: taru
三章
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05愚かですわ

『穴を見つけましたわ』


 とアリアが思った瞬間にエミリア(模)が踊るように動き穴の位置に向かって剣尖を切りつける。いや【剣舞】で空間ごと切り裂いたのか? というか、また勝手に動いてなかったかな。

 異空の(まとい)が崩れ去ると共に親衛隊(模)の光兵たちがよってたかって切りつける。直前に何か御業を使おうとしていたが、【大気】の支配圏では行使不可能だろう。


『やはり卓越した技系の御業を使われたら、異空も幽体も切られる可能性がありますのね』

 アリアは身震いをしない。震えない。泣けない。


 だからこそ次に進める。


 アリアは【大気】の支配圏を押し戻そうとする熱源に意識を傾ける。


(おろ)かですわ』


 火の壁は前線を支える骨兵たちを分断していた。まあ此方(こちら)の支配圏の中は情報が伝わらないのだから、切り捨てられるのは仕方ないのだろう。


 【火】の御業は【大気】の御業対策なのだろう。確かに大気では火の壁を越えられないかもしれない。だが【熱】の御業も使えるアリアには対策があった。というか壁に素直に対峙する必要は無いかもしれないのだが、それはそれ。



 【熱】はあらゆる物質に変化を与える。防ぐ手立ては強い意志で状態変化への制御。後は距離との力関係ぐらいである。

 では、【火】はどうだろう。確かに物質としては微妙かもしれない。だが【火】は温度を上げることか全ての火を消すことしかできない。

 火力調節はできるかもしれないが、他の物質に与えた温度は下げられないのだ。


 窒素を大気中に大量放出することは流石にアリアとしても不味かった。だが、この【窒素】の御業使いは拙い。

 アリアは8歳ではあるが物心付いたときには大気の扱いを教えらて、この年まで掌握圏の制御を日々維持してきた。

 【窒素】や【火】、いや他の属性御業だって常日頃と使えるだろうか。物騒極まりない。特に維持という意味では一日の長がある。



 片手間(かたてま)に維持していた大気の支配、いや少し押される演出もあったかもしれない。


彼方(あちら)の火によって大気の温度は500度ほどでしょうか。

 私も手伝って1400度まで上げてみましょう。

 制御し辛い層は窒素の塊でしょうね。確かに制御権は彼方(あちら)が上ですが、大気には変わらないのですよ。

 しかも通常の大気より成分が統一してますから【熱】の御業としては温度を上げやすいですわよ』



 本来は御業による直接的な攻撃なんてものは決まりにくい。

 生物や魔落の周りには自然と本人の気が発散されている。其処(そこ)へ直接に岩や火を顕現しようにも漂う気に阻害され無効化や威力軽減する。

 また、それなりに訓練されたものであれば周辺で他者が何らかの御業を使おうとした時点で、その兆候として気力の充填を確認できる。後はその場所もしくはその線を塞ぐ形で気力を流せば妨害する事ができる。

 相手の距離も近いとなれば純粋な力量と環境次第となってしまうが全ては理論上の話である。


 全般的に御業の制御が下手なものが多いというのも事実である。

 骨兵たち陣営の空域には砂鉄、砂、砂糖、塩の粒系因子が制御されたまま漂っている。この状態の場合、近くであれば力関係の強引な制御で物質の顕現が可能であるが、少し離れると粒系因子の些細な干渉で制御できなくなり顕現が不可能となるものが多い。

 卓越したものであれば自身の周辺は中距離であっても気の制御だけで相手の気に干渉することも可能なのだが。


 では、この場で何が起こっているか。【窒素】や【火】が御業を行使できるようにこの空間の粒系因子が取り除かれていて、ろくに制御しない窒素を垂れ流し、戦線の敵光点が制御していると思われる大気の層に火の壁を構築している状態である。



 アリアにとっては例え粒系因子があったとしてもあまり関係ない。だが、無ければやりやすいのは確かである。

 とりあえず火に(あお)られた大気を1400度に変えていく。残念ながら【火】の御業に着火時の2000度を超える酸化という大衆概念は無い。1000度を超えれば火の概念は存在できなかった。


 突然の火の消失に唖然(あぜん)とする【火】の御業を使う骨兵たちは間髪(かんはつ)()れず自身たちを覆う窒素の大気への気力の充填を感じた。

 ここで運が悪かったのが後方から常に窒素の補充として御業が行使されていた為に警戒を怠った。そして灼熱となった窒素の大気が骨兵たちを炭にしたのである。

 この時、消失した火の手前にさらに火を置けば防ぐ手立てはあったかもしれないが、じり貧であったと付け加えておく。


 【窒素】の御業を持つ骨兵部隊は熱せられる御業の攻撃に必死に(あらが)っていた。自分たちの操る窒素に熱が加えられているのだ。

 窒素も大気の成分である。次々と制御を奪い気力の線を繋げ加熱する。いくら適合御業を保持していようと全てを制御できるほど熟練している訳ではない。

 ()してや他の兵による骨言霊? の重奏支援で制御を拡大しているのだから余計に難しい。

 とれる手段は窒素を増やし押し上げる事だ。そしてそれは熱風となり前線を維持する骨兵たちを炭にした。


--

『中将閣下、【火】の部隊と前線を支える部隊が壊滅致(かいめついた)しました。光点には【熱】の御業持ちが居ると推測されます。現在【窒素】とその支援部隊が戦線を維持しておりますが光点からの苛烈さが増してきていると』

『岩橋を架けよ。両岸の部隊を再編し後方支援に……』

『上空がっ! 観測阻害地帯の層に覆われつつ……すっ、全ての偵察部隊との連絡が途絶しました……』

--



『あ、岩で橋を架けて渡っていたのですね。(なん)だかすっきりしましたわ』


---

 安心してください。窒素爆弾ネタは使いません。

 窒素爆弾:エヴァ○○○○○に登場した架空のヤバメの爆弾N2。窒素を1700度110万気圧にして作られるとかなんとか



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修正記録 2017-02-23 21:40



幾つかのルビ追加


幾つかの改行追加


「【熱】はあらゆる物質に変化を与える。」からの下りの文を改稿


「本来は御業による直接的な攻撃なんてものは決まりにくい。」からの下りの文を改稿


観測不可地帯 → 観測阻害地帯


観測隊 → 偵察部隊



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