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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
169/345

150龍の嘶き

 本来ならば、順当に考えれば、普通は、()の言葉も現状に(おい)ては(はばか)りを覚える不思議な事態である。

 リーファ様の口添えから早期に開示される情報へ制限を(もう)けれたのは、僥倖(ぎょうこう)()えよう。

 ええ、勿論(もちろん)、リルミールの聞こえが悪い話を上層部(まで)で抑えるのが目的、と()う訳では無い(はず)? である。

 そして、ハンナ様は額に親指と人差指を当て支えるように唯唯(ただただ)(うつむ)いて()るのだ。


「ええ、続け()さい」


 現状報告を伝えに来た若い近衛(このえ)騎士は皇太后陛下から(うなが)され、(かしこ)まって報告を続けるのである。


「御意に、ですので先程申しました酩酊(めいてい)した間諜(かんちょう)の方は大体イザベラ様の憶測通りでしたと、それから引続き隊長格と()われる間諜(かんちょう)の尋問を()の場に()りました矛盾点から問い(ただ)し、同時進行で別途()の土地周辺で(なに)(とど)まる理由は無いかと、土地主たちに問い(ただ)し調書を()りました。総合して得られた有力な結論は二重密偵であり、本来使者を通じて連絡を取り合う(ところ)を、()間諜(かんちょう)に使者を尾行されて邸宅に(まで)忍び込まれた様で御座(ござ)います。元々内偵に()り忠誠も(こころざし)も無い不逞(ふてい)(やから)を選んで金を持たし、得た情報を話半分くらいの積もりで取り扱って()りました模様ですが、使者の密偵を尾行し(あまつさ)()の屋敷に忍び込んだ事から、三重密偵の可能性も視野に入れるべきかと存じます」


「帝国の密偵が仕事の(のち)に尾行され尚且(なおか)()れ気付かずに()り、更には直接(まと)め役の屋敷へ報告する愚を犯したと?」


「いえ、ハンナ様、どうやら貴族街で(たまたま)見掛けた(ため)に、尾行に及んだとの事です。間諜(かんちょう)御業(みわざ)である【強聴(ごうちょう)】からして、()の屋敷で機密を得て()る可能性も()りますので、此処(ここ)数日の内に報告された情報を、唯今(ただいま)機密蒐集(しゅしゅう)文官たちに問い(ただ)して調書を()って()ります」


 ハンナ様は若干、溜め息気味の息を()(なが)ら次の質問へ移る事にした様だ。


「分かりました。それから、もう起こら無いでしょうけれどと念の(ため)に付けた、巡回中のリルミールたちを監視する班からは(なに)か報告が()りましたか?」


「はい、私たちも()だ未熟なリルミールに(なに)()っては大変だと、城壁には飛翔(ひしょう)板の中隊を待機させ上空には飛翔(ひしょう)板の小隊を飛ばし、何時(いつ)でも救援に駆け付けられるよう体制を整えて監視に当たったとの事で御座(ござ)います。(なん)でも巡回部隊の中に感の鋭いものが()りますらしく此方(こちら)の監視に気付かれたとも報告が上がって()ります。リルミールは此方(こちら)に手を振って()れたとか、実に微笑ましい事で御座(ござ)います」


「ふふふ、()の子らしいですこと。戻りましたら今朝のことも()めて()らねば()りませんね」


「ミグネア皇太后陛下や皆が()の様にリルミールを甘やかすと駄目に()って仕舞(しま)います」


「孫が(わたくし)近衛(このえ)()めるのであれば同じく()めて()らねば恰好(かっこう)が付きません。そうでしょうアリア殿下」


「はい、ミグネア皇太后陛下、功績を立てたものを(しっか)りと()めるのも、私たちの大切な努めですから。ところで、リルミール様は手を振って()られたのですわね」


「はい、御意に御座(ござ)います」


「手を振られたからには私も誠意を(もっ)て応えなくては()りませんわ。ええ、午前中の(もよお)しを見逃したのですから、午後はちゃんと参加して(しっか)りと堪能(たんのう)しなくては()りませんわ。リルミールなら必ず(なに)為出(しで)かして(もら)えると、信頼して()りますのよ」


 ハンナ様は片手で報告に来た近衛(このえ)に下がるよう指示し(なが)ら、アリア殿下に物申すのである。


「……アリア殿下、報告を御聴(おき)きに()られてうずうず()されるのは拝察(いた)しますが、先程エミリア様からの報告を()く限りでは、今日はもう地底湖へ降りる事はありませんと予測(いた)しますよ」


 若干ぷるぷる震えるアリア殿下がエミリア様の方を見遣(みや)ると、エミリア様はこくりと(うなず)いてから口を開く。


「はい、丁度(ちょうど)(さっき)食後の御歓談を()されていらせられる折にイザベラから連絡が入りまして、勝手(なが)ら潜泳機の新装備に必要な部材をルトアニアへ発注()しました、との事で御座(ござ)います。(あと)は殿下の御承認を(いただ)ければ一部は夕刻ぐらいには、残りは数日後に届く予定と()るそうで御座(ござ)います」


()ぐに承認として必要な部材は総力を上げて用意して(もら)()さい。そして音を越えて此処(ここ)(まで)運ぶ事を許可しますと、上皇陛下には龍の(いなな)きが()けますと御説明して()きますわ」



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修正記録 2017-07-26 10:15


幾つかのルビを追加


唯今(ただいま)問い(ただ)して

唯今(ただいま)機密蒐集(しゅしゅう)文官たちに問い(ただ)して

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