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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
168/345

149平然と

 平常通りと()わずとも若干落ち着きを取り戻した昼下がり、派出所だけは変わらず近衛(このえ)騎士が其処(そこ)彼処(かしこ)に厳重過ぎな警備を誇ってる。

 ()の派出所前の通りに時折第二騎士団と見える小隊が巡回に来るのだが、近衛(このえ)騎士たちとは目を合わそうと一切せず足早に通り過ぎるのだ。


 アリア殿下の近衛(このえ)騎士たちは最初から演習の(てい)(よそお)い、任務に当たって()れと()われて()た訳で、不審者が発見され捕らえられた上に大規模な底引き網の(ごと)き包囲展開索敵陣を(おこな)った今と()れば、アリア殿下が立ち寄られる()の派出所一帯を守るのに遠慮も糸瓜(へちま)も無いのである。

 勿論(もちろん)、通り沿いを守る騎士たちは人が通る度に(にら)み付けてる訳では無いが、周囲に警戒を(うなが)して【気隠】などで隠れ潜む(やから)(あぶ)り出せるよう、(わざ)と威武を放って犇犇(ひしひし)と威圧を感じさせる状態にして()るのだ。


 巡回に当てられた第二騎士団とて皆一流の熟練した武人であるのだが、近衛騎士団は更に()の上を行くものたちを集めたと()っても過言では無いだろう。

 同程度の力量であれば威武を向けられても(いささ)かも平気であろう。

 だが実力差が歴然としたものから放たれる威武を受けては、萎縮(いしゅく)して居心地悪いこと()の上ないものだ。

 (ただ)、それでも平然とし晴れやかな微笑みを絶やさぬものが居た。


「んーお腹いっぱいだよ。定刻の昼餉(ひるげ)は幸せを犇犇(ひしひし)と感じるわ」


犇犇(ひしひし)……()の威圧を幸せに? 何故(なぜ)リルミール様は平然として()られるのでしょう。ところでラクス様、今朝より威圧がきつく()って()りませんかしら?」


「ええ、ベイミィさん、()れは、今朝(まで)は訓練中の振りをして()ましたからね。今は(しっか)りと此処(ここ)が近付いては()らぬ場所だと、威武を(もっ)て示す必要が()りますのよ」


「チェロル! ()の様にくっ付かれては咄嗟(とっさ)の時に動けませぬ!」

「嫌っ! リーシャ小隊長、(なん)だかぴりぴりしてるし中堅(どころ)の隊が巡回して()れて()るんだからもう帰ろ!」


「……()の区画を正式に任されて()るのは私たちなのですよ。命令が()ったのなら()だしも此方(こちら)の都合で良いように解釈してお役目を放棄するなんて、()っては()らない事なのですよ。()れにラクス様とリルミール様の2人が折角参加されて()るのに失礼ですよ」


 今朝巡回した時の顔触れに加えてマリオン先生とラクス様の8名が、()の巡回に参加して()るのだ。


()う言えば、リルミール様はお友達を(あお)……もとい、お友達を探してお(しゃべ)りに興じる一時(ひととき)ではありませんでしたか?」


「ええ、ベイミィ様、確かに今回の不審者を捕らえた時の私が()した活躍や、ハンナ様に信頼を(もっ)此方(こちら)に来させて(もら)って()る事、更にはイザベラ様に褒められる着想を提案した事なんかも語りたい(ところ)でした。ですが、()のイザベラ様が(いわ)く威武を最も強く高めて()る警備強化地域を、平然と歩かれると自信を無くすものが続出するから控えて下さい、だそうだよ。まあ、今朝の巡回も中途半端に終わって仕舞(しま)って()るので、ちゃんと完遂したいってのも()るのですけどね」


「――……今朝の活躍? リルミール様は【強精神】を……持って無さそうですね。――まあ、お昼からの仕事が無くなったのですし、巡回以外は待機して()るしか無いのですよね。()う考えると()れは今日できる数少ない仕事なのですから、(しっか)りと()りたいですね」


 リーシャは道端で話せる内容でも無い(ため)簡潔に話して()るが、結局の(ところ)アリア殿下へ各種部品の入手をお願いする件はイザベラ様が引き受けて()れたので、後は()れら部品が届くの待たないと作業に掛かれない訳だ。

 普通に考えると一部だけ早めに届いたとしても夕方頃に()るだろうから、今日はもう地底湖に降りないと高を(くく)って()るのだろう。


「リーシャさん、多分急いで用事を済まされて戻って()られると思いますので、昼からも()れなりに忙しいと思いますよ。後、私が()の巡回に付いて()たのは服の中に潜ませて()る適性物質の素材通して実験する(ため)ですわよ。派出所の敷地内で使うと大概は同僚に向けて仕舞(しま)いますので、流石に(はばか)って此方(こちら)に来た訳ですの」


「あ、はい」

「ええ!」


否否(いやいや)、ベイミィさん、こんな間近の人を対象にしても意味が無いですから。そうですね……。今、私たちは第一騎士団所属の騎士たちとハンナ様の命を受けた近衛(このえ)騎士に監視されて()る様ですわよ」


「ヒッ!」

「むむ!」


「ティロットさん、チェロルさん慌てないでも()の近くでは無いのですから。第一騎士団が民間街側の壁上からでハンナ様の部下の方が城壁ですわね」


「おお、()の下に何時(いつ)も私たちが訓練して()る場所が()るのですよ!」


(いや)、リルミールさん、手を振らないで下さいませ……」




---

修正記録 2017-07-25 11:26


(あぶ)り出せるるよう → (あぶ)り出せるよう

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