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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
167/345

148音を鳴らす

 (さて)、水中音声蒐集(しゅうしゅう)機の改良案が大凡(おおよそ)(まと)まれば、お次は機材の入手をアリア殿下にお願いするにしても、仕様を固めて必要な部品は(なに)()るかと決めて()かねば()らない。

 一応は、ベイミィの進行に()って話は進められて()るのだが、リーシャはやけに積極的な意見の繰り出して潜泳機の構造を踏まえつつも、チェロルと高度で専門的な話し合いを展開するのである。

 ()(ため)に他を寄せ付けぬ(きら)いは()るが、次々と設置場所や()れに伴う部品を定めて()く。そしてリルミールは寂しそうな顔をして()れを眺めて()た。


「そうですわね。今此処(ここ)で判断して決められる内容は()れくらいでしょうか。ところでリーシャ様、潜泳機の構造を熟知されて()るのは(わか)りますが、()の様に張り切られても周りが付いて()けませんわよ。(おも)に記録(いただ)いてる方たちが……」


 ラクス様とティロットは(いま)だ必死に筆記を続けて()る。今()って()るのは依頼する部品と()の必要数を定める作業であるのだから、譜を記載して()れて()る方々に配慮を払うべきだった。

 (また)()って仕舞(しま)った。そんな感じのする覚束無(おぼつかな)い顔で、ちらりとリルミールを見遣(みや)ると優しく見守る親鳥の様な顔をして()るではないか。


「次は潜泳機自体から音を発生させる機構を作れないか、と()う話でしたよね」


「ええ、取り()えず落ち着いてお茶でも飲んで()て下さいませ」


 そんな勢いだけで空回りし始めたリーシャを、ベイミィが強制的に(なだ)める最中(さなか)(ようや)くと(ばか)りにラクス様が口を開く。


「お待たせ(いた)しました。ティロットさんも書き終わった様ですわね。次の議題である音の発生方法に()いて情報が()りますの。発言して(よろ)しいかしら」


「ええ、是非ともお願い(いた)しますわ」


「はい、昨日、(たまたま)、アリア殿下が御所有()されて()ります蓄音魔器を、解析する機会が()りまして、と言っても(ほとん)どアリア殿下に解説して(いただ)いたのでありますが……」


「……ええ、()の時、黒い板を(たずさ)えて、アリア殿下と(なに)やら()されて()られた事は存じ上げて()りますわ」


 ベイミィは少々(さえぎ)る形で、尚且(なおか)(なに)をして()たか全て理解して()ると、言わん(ばか)りの言い(ぐさ)である。


「……まあ、詰まり御教示して(いただ)いた話に()りますと、蓄音魔器には音を蓄える性質を持つ魔石と音を増幅する性質を持つ魔石が()りまして、()れを小型の蓄魔(ちくま)器と魔気道管で(つな)げ魔気を流します事で音楽演奏を(もたら)すそうですのよ」


()れは魔気を魔気道管に流す事で音も運ぶ作用が()ると()う意味ですか?」


「はい、今迄(いままで)も適性物質で構成された板に集めた音を()(ため)、まあ、集音板? と仮称しますが()れを気力の線で(もっ)て自分の耳へ(つな)ぎ音を届けて()たのです。そして昨日は色々と試して()たのですが、()の集音板から耳へと(つな)ぐ気力の線を、耳では無く音を増幅する魔石に流してみた(ところ)()の鉄の花みたいな所から音が()こえて()たのですわ」


 リーシャは内容よりも話しに加われた事が(なに)より嬉しそうである。そして()(わか)りましたといった面持ちで、言葉に花を咲かすのである。


()(ほど)、詰まり蓄音魔器の仕組みと同じく蓄魔(ちくま)器に魔気道管で2つの魔石を繋ぐだけで音を鳴らす機構を作れる(ため)()れを潜泳気にも(こしら)えれば良いと()う事ですね」


「違いますわ。確かにそれでも目的は達成できますが、音を蓄える魔石は珍しいものなので矢張(やは)()れなりの値段がしますのですわ。ですから魔石も小さいものが使われ()(ため)に音の増幅も必要なのですよ。()れもアリア殿下に拝聴した御話ですが、魔石には魔気を流すと(ただ)、ピーとかビーとか音を出すだけのものが()るそうですわ。ものに()って鳴る音は変わりますが、()れも(くず)魔石として無価値扱いされて()るそうですのよ。それで、()の音の鳴るだけの安価な魔石と音を蓄える高価な魔石とを取り替えて使えば、(よろ)しいのではと考えました次第ですわ」


「まあ! ラクス様、大変良いお話を()かせて(いただ)きましたわ。昨日の集音板を此方(こちら)に向けて()たお話の件も、吹き飛ぶぐらいに良いお話でしたわ。()の案を採用とする方向で皆様も(よろ)しいですわね?」


 言わずもがな皆、異論は無い。(ただ)、リーシャは再びしゅんとして肩を落として()り、其処(そこ)へ優しく肩へ手を添えるものが居る。勿論(もちろん)、リルミールが全てを包み込む暖かな笑顔で迎えて()れるのである。


「ところでリーシャ様、ラクス様がおっしゃられて()ました(くず)魔石、()れを使って楽器を作ったら面白いと思いませんか?」


「え、うん面白いと思うよ。蓄魔(ちくま)器が簡単に買えないけれどね」


 何時(いつ)の間にか奥で座して見守って()(はず)のイザベラ様が後ろに()()り、大変喜ばしい面持ちで言葉に花を咲かすのである。


「リルミール様、先程の提案は中々素晴らしいものですよ。()しかしたら朝の功績も含めてアリア殿下もお喜びに()るかと存じます」


「ええっ、本当ですか! ()れでハンナ様の信頼に応えられたかも知れません! ――……ん? 朝の功績ってなんだろう――」


 花が咲いた様な笑顔を見せるリルミールとは対照的に、リーシャが若干涙目なのは気の所為(せい)だろう。



---

修正記録 2017-07-24 10:06


幾つかのルビを追加


そうですわよ。それで、 → そうですのよ。それで、


↓移動

「ん? 朝の功績ってなんだろう?」 → ――……ん? 朝の功績ってなんだろう――

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