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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
166/345

147和やか

今回も前話の続きからです。

 否否(いやいや)、ベイミィさん、今確かに一度チェロルを流し目で見てから、早々に見切りを付けて指名制へ変更しましたよね。

 勿論(もちろん)、昨日アリア殿下の御言葉を(いただ)いてからも、十分時間が()り考える余裕も()ったのだ。

 ()して潜泳機に機材を取付けてるのは(ほとん)どチェロルとリーシャなのだから()れなりの提案くらいは用意して()るだろう。(いや)(しか)()き事だろう。

 そんなベイミィの()も『当然リーシャ様は何か提案を用意して()ていらっしゃるのですよね』と言わん(ばか)りにも押し付けがましい(にこ)やかな笑みに、若干引き気味であるものの、(なん)とか気を取り直して語りだすのである。


「……はい、では、水中音声蒐集(しゅうしゅう)機の音を拾う役割を持つ器具の部分、()れを一定の速度を(もっ)てくるくると回転させて()れば、()こえ方の違い強弱で方向が導き出せるのでは無いかと考案しました」


 きらりとベイミィ目が光った気がする。そしてすうっと顔付きに真剣味を帯びてくるのだ。


(ただ)()れだと()の……音感器具と()いますか蒐集(しゅうしゅう)器具が、常に何処(どこ)を向いて()るのか(わか)らないと意味が無いのではありませんか?」


 実際に使って()たのも()れから専任担当として使って()くのもベイミィである。現場を知り想定も経験則を交えて現実味を帯びて()るし、()し不都合が()って困るのはベイミィなのだから真剣味も増すと()うものだ。

 ラクス様とティロットは議事録の(よう)なものを、せっせと付け始めた。

 そして、リルミールは若干()(たま)れない面持ちで、そわそわして()るのである。

 気にするな。少し騎士仕事で()らかして、お酒で()らかして、()の場で()れる事が無いだけだから。


()の点に()いては……感知器具ですか? ()れを動かす一定の速度と調子を合わせて回転する指針を(こしら)えれば、(なん)とか()ると考えて()ます」


()(ほど)(ただ)、それでも矢張(やは)り問題が想定されますわ。特定の箇所から聴音したい場合は、如何(どう)するのですか。音感器具が逆方向に向いて()れば、蒐集(しゅうしゅう)効率が下がると()う事ですよね」


「はい、()の場合は回転を任意の場所で停止させる事で、対応できるかと思います」


「まあ、回転に伴う雑音の発生と矢張(やは)り特定方向のみを対象とする(ため)に、常に死角と()わない(まで)も弱い部分ができる問題を抱えて()りますが、目的を達成するに値する案だと感じました。取り()えず及第として保留して()きますわ」


 リーシャは何気にがっくりと肩を落として()る。多分、ベイミィの厳しい指摘の中、提案を論ずるのに少し疲れたのだろう。


「うん、(ようや)くうずうずして()た様ですわね。チェロルの()りたい事を教えて(もら)えますか?」


「うん、分った! あのね、ベイミィの()(ところ)の音感器具をね、潜泳機の機体に四方八方上下に付けるんだよ! そして()の取付け位置に合わせるように、音声伝達器具を配置して耳当てを作れば、擬似的に立体的な音声空間を構築できるんじゃないかな! (これ)に【器用繊細】の御業(みわざ)を使えば十分判別できると思うんだよ!」


 おや、奥では先程(まで)イザベラ様が他のものと同じ様に、議事録らしきものをせっせと(こしら)えて()たのだけれど、今度は【念話】でもして()るのかも知れない。(ただ)、黙り込み一点を見詰めるだけなのである。

 そして、パチパチと拍手が()こえて()る。(まさ)に我が意を得たりという顔付きで、実に(にこ)やかだ。


流石(さすが)は潜泳機総合技術責任者の貫禄(かんろく)でしょうか? 実に素晴らしいですわ。値段とか製作所が悲鳴を上げるとか関係ありませんわ。死角がありませんわ。私の能力が十分生かされますわ。(なに)より苛苛(いらいら)しい待ちも、絞り込む推測も、無駄な作業も()りませんわ。()の大変素晴らしい案を採用に(いた)しましょう。皆様も特に意見とかは無いですわね?」


「えへへ」


 おや、リーシャが更に首を垂らして仕舞(しま)い。()(また)、居た(たま)れない面持ちと()って()る。

 其処(そこ)へ肩に手を置き(にこ)やかに励まして()る人物が居たのである。


「リーシャ様、御安心下さいませ。私は貴女(あなた)を共通の思いを(いだ)く同志と認定(いた)しましたのです」


 うん、リルミールにしては素晴らしい察しの良さを見せたのか、暇を飽かして仲間を見付けれて実に嬉しそうだ。心暖まる友情って(やつ)だろうか。

 だが何故(なぜ)だろう、リーシャが更に落ち込んだ表情をして()るし、若干涙目なのは気の所為(せい)だろうか。


「ぶはっ」


 奥でリーファ様が吹き出した。隣ではマリオン先生の苦言を呈する姿が見受けられる。



---

修正記録 2017-07-23 07:44


句読点を変更


気味であるが何とか → 気味であるものの、(なん)とか


顔付きが真剣味を → 顔付きに真剣味を


流石(さすが)は潜泳機総合技術責任者の貫禄(かんろく)でしょうか? 実に」追加


リルミールは

リルミールにしては素晴らしい察しの良さを見せたのか、


何故(なぜ)だろうか、 → 何故(なぜ)だろう、


所為(せい)だろう。 → 所為(せい)だろうか。


マリオン先生が苦言を呈する → マリオン先生の苦言を呈する

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