146議論する
前話の続きからです。
甲斐甲斐しい=確りとしていて手際よく、きびきびと立ち振る舞う
(親身で手厚く、丁寧な様。けなげな様などの意味もあるが作中では上記)
「あ、解りました。イザベラ様、お答え頂き有難う御座います」
リーシャは少し許り恥ずかしそうに、やや目線を下げ気味でお礼を述べるのだ。確かに少し現状を慮れば、自ずと出て来きそうな答えである。
「ええ、宜しいのですよ。斯う遣って疑問に思った事を気軽に訊けるのは若い内だけですから、訊く義務が在ると謂っても過言ではありません。訊かずに自分の狭い視野で想像するだけに止まり、微妙に間違った内容で覚え判断する事の方が余っ程有ってはいけませんからね」
イザベラ様の言い分は過分に思えるが、リーシャの若干見せる後悔の念を慮っての事だろう。
「はい、分かりました。肝に銘じて置きます」
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何時に無く真面目な面持ちで其処には6人が向かい合う形で座って居り、何やら活発な意見を交わして居る処なのである。
場所は変わらずお茶も終わらず少し座る位置が変わって人が減っただけである。
マギーとミリザさんが示し合わせたかの様に、其の場を後にして何処ぞに行って仕舞ったが、侍女3人は残って甲斐甲斐しくお茶の世話をする。
そして、リーファ様、イザベラ様、マリオン先生の3人は少し離れた所で無関心を装いつつも、確り様子を窺って居るのだから落ち着かない。
扨、言わずと知れた6人だが何故か二分した集団を形成しつつ在る様だ。
「抑、私は事の経緯を余り解って居ないのですが?」
「あっ、私も」
ラクス様の質問に便乗してリーシャも控えめに手を上げ賛同する。そして全く知らぬ筈のティロットとリルミールはごにょごにょと2人して、之復真剣に何やら話して居る最中なのである。
「――ティロット様、何故私たち迄、此の場に引っ張り込まれたのでしょう? ――」
「――ふむ、成る程! 確かに私たちは此度に於てアリア殿下のご指名に与って居らず、又、此の件に関しての知識も乏しい故、一見して蚊帳の外に感じるやも知れぬ。だが、此処に座して居る事で初めて知れる事もあろう! 無知が故に気付ける事もあろう! 何れにせよ私たちは助っ人で在るのだから、ものの方向たるを少しでも知り得れば、よりきめ細やかな御手伝いができると云うものなのである! そして、其れが騎士たるものの在り方に通ずるのではないかな! ――」
「――おお、何だか能く解らないけれど座ってる事が重要なんだね――」
「――然も有りなん! ――」
どうやら、ティロットはリルミールの前で恰好を付けて居るだけの様である。
「はい、それでは私が述べさせて頂きますわね」
流石は水中音声蒐集機の専任担当であるベイミィだ。
「事の発端はアリア殿下と水中音声蒐集機の性能確認を行って居る時で御座いました。其の性能は例えば遠くに居る人が水辺で詠む歌の声が聴こえる程でして、更には其の音の伝わり方や反響を【器用繊細】に依って精査し鑑みる事で、発生した場所の距離すらも測れるのではないかと謂う結論に至ったので御座いますわ」
「――ぬぬっ! ――」
「――何だか気になる言葉が混じってた様な……――」
「――騎士たるもの何事にも動じぬものであらん! ――」
「但、問題も御座いますのよ。音と距離が判っても器具を通して聴く為にどうしても方向を判断する事ができないので御座います。そして音の反響から推測して周囲の地形まで把握できる可能性を見出したですが、之には何処かで音が発生して居る必要が御座いますの。あっ、更に言えば潜泳機自体から音が出てれば、迚も判断や推定が簡易化されますわ」
「だからアリア殿下は音の発生する方向を確認できる方法と、自ら音を発生して反響を精査できる方法の2つを御求めに為られたのですわね。ところでベイミィ様、言葉遣いが普段と違くありませんか?」
「此の方が議論を重ねて居りますって、雰囲気がありませんか?」
「特には?」
ラクス様は首をこてりと傾げて率直な感想を述べるのみである。
「……では何か提案が有りましたら……各種機材取付け技術主任で在るリーシャ様、お願い致します」
「えっ!」
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修正記録 2017-07-22 10:17
其処に6人 → 其処には6人
幾つかのルビを追加
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修正記録 2017-07-22 02:07
残って居りお茶の → 残って甲斐甲斐しくお茶の
無関心の振りをして、確り → 無関心を装いつつも、確り
全く知らぬ筈 → そして全く知らぬ筈
最中だ。 → 最中なのである。
動じぬのものであらん! → 動じぬものであらん!
「。あっ、更に言えば潜泳機自体から音が出てれば、迚も判断や推定が簡易化されますわ」追加