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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
163/345

144忘却

 緩やかに悠久の歴史が刻んだものがある。

 ()の動作は(おごそ)かで気品が()って全てに意味と矜持(きょうじ)がある。


「んくっ、熱っ!」


 言わずもがなリルミールの事では無い。


「リルミールさん慌ててお茶を飲んでは危ないですよ」


「うう、あっ、大丈夫ですラクス様」


 今朝の事も()って若干病人扱いされて()るのか、心配そうに覗き込まれて()るのだ。


()れはアリア殿下から、宮殿にて(いただ)いたものの御裾分(おすそわ)けに(あずか)ったもので御座(ござ)います」


 ティロットの侍女ライチェさんが、丁寧に洗練された動きでお菓子を配って()く。勿論(もちろん)、ティールさんもアイラさんも宮殿侍女の(ごと)く、洗練された優雅さを(もっ)給仕(きゅうじ)して()くのである。

 扉の横では元皇太后陛下付きの侍女であり石祠(せきし)管理施設付きの侍女であるミリザさんが、(にこ)やかに満足気に()の振る舞いを見守ってるのだ。


「何だか日に日に動きに荘厳(そうごん)な儀式めいたものが加わって()りますわね……」


「私も()う振る舞わられると()う背筋がぴんと伸びるというか、自分の動作に気を使うように()るかな」


 そんな、ベイミィとリーシャの会話を()いて()たのか(わか)らないが、マギーは真面目な面持ちで(なに)やら【念話】を取り交わし始めた様である。


『ミリザ様、マギーです。時間が取れれば私も侍女の宮廷式礼儀作法を習いたいのですが、勿論(もちろん)、普段からティールさんたちの動きを参考に見習わさせて(もら)って()ります』


『ええ、マギー様、何時(いつ)でもいらっしゃって(くだ)さい。お待ちして()ります』


有難(ありがと)御座(ござ)います』


 (ちな)みに、ミリザさんも【念話】の御業(みわざ)を授かって()るのだろう。普通に【念話】でマギーさんに返事を返して()るのだから。


「ところで、リルミール、もう体に違和感とかは残ってないか?」


「あ、はい、リーファ様、先程(まで)謎の頭痛に襲われて()たのですが、リーシャ様に……あ」


「ああ、リーシャの御業(みわざ)で快然したんだな。大丈夫、此処(ここ)のものたちであれば外部に漏れる事は無い。(しか)し、ふむ、そうだな。【癒し】は身体に活性化を(もたら)すので酒精を急速に分解すると、だから回復は早いが場合に()っては酒精が一気に回ってぶっ倒れると()う話だぞ。(これ)の上位に当たる御業(みわざ)()われる【治癒】は、身体を正常な時の状態に復元する作用を(もたら)すので体内(たいない)の酒精に影響を与えず回復する(ため)()体中(からだじゅう)に残留する酒精で再び酩酊(めいてい)状態に陥るそうだ」


「はあ、どういう事でしょう?」


()まり()ういった検証は希少御業(みわざ)だと、滅多にできるものでは無いからな。特にリーシャのは言霊属性だと()う事も(かんが)みて、又違う特性を持つかも知れない。()の機会にじっ……」


「?」


 リルミールは自分を見詰めて口籠るリーファ様を不思議に思いこてりと首を(かし)げるのだ。


「ま、まあ、次の機会を期待しよう」


 適当にごまかして口を濁すリーファ様に対して、リルミールは少し(おもむき)の違う回答をした。


「うーん、話しが見えないのですが……。()う言えば私、今朝の巡回で不審者を捕らえてからの記憶が無いのですが、如何(どう)()って()るのでしょう?」


「えっ」×5


 ラクス様を含めた14歳以下のものたちが(そろ)って声を上げる。


「ああ、上品な家庭や文官派閥の貴族では、()の手の話だと余り知識として入り(にく)いのかも知れないな。リルミールはティロットが【酒】の御業(みわざ)を不審者付近に顕現した(ところ)(まで)は覚えて()るのか?」


「あっ、はい()の辺り(まで)は覚えて()ます。確か御業(みわざ)を使う隙を与えないように不審者に詰め寄った(ところ)、リーシャ様に後退するようにと指示が入ったもので、細心の注意を払い(なが)ら徐々に後退して()たら、不審者が突然に鼻水と(つば)を周囲に撒き散らして……色々な意味で恐ろしい(わざ)でした」


「……ああ、()の捕らえる時の行動も教えて()いた方が良いのか。まあ、(これ)は後にしてと、端的に言うとお前さんは()の酒を(わず)(なが)らも吸って仕舞(しま)った訳だ。他の(みな)は酒を吸引したリルミールや不審者の症状を、(じか)に見て()たから分かると思うが、程度に()って卒倒したり人が変わったかの様に不可解な言動や行動を()ったりと、前後不覚な症状が見受けられる。まあ、人に()っては(ほとん)ど症状が出なかったり少し感覚が狂う程度で済む場合も()る」


「私は勿論(もちろん)毅然(きぜん)として()ましたよね」


「やけに興奮した感じで鼻息が荒く呂律(ろれつ)が回らず(たま)に変な言動をして()たぞ」


「ええ、(なん)だか恥ずかしくて居た(たま)れないのですが……」


「大丈夫、覚えて()いのだろ。次いで酒を飲んだ後、寝起きと言うか数刻後に起きる症状だが、先程の症状とは繋がらず頭痛や忘却が起きるものも居れば、(なに)も症状が出ないものも居る。例えば酒を飲んでも平然として居たものが、次の日に忘却や頭痛の症状を何方(どちら)()しくは両方発症したり、()ぐに卒倒して()たものに症状が現れず平然としてたりする事もあるのだ」


「ええ、じゃあ私は僅かなお酒で変梃(へんてこ)な人に()った上に、頭痛も忘却も起きて仕舞(しま)ったのですか……」


「まあ、体ができあがって()ないと酒に影響され(やす)いと()くしな。……大丈夫、覚えて()いのだろ。()れに(みな)口は硬いと思うぞ」


「……」



---

修正記録 2017-07-20 10:09


話だし、()の上位の御業(みわざ) → 話だぞ。(これ)の上位に当たる御業(みわざ)


幾つかのルビを追加


幾つかの句読点を追加


症状が何方(どちら)()しくは両方現れたり → 症状を何方(どちら)()しくは両方発症したり

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