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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
162/345

143聖光

 目の前は全てが真っ白だった。

 (いや)、細部には模様めいた凹凸(おうとつ)が見受けられる。

 ()れは知らない天井だ。

 其処(そこ)には目を大きく見開き時偶(ときたま)ぱちくりと(まばた)くリルミールが横たわる。


「頭が重い様な……。うっ、起きると痛む。あっ、()の寝具は前に運んだ覚えが()るよ。うーん、喉が渇いた」


 よたよたと覚束無(おぼつかな)い足取りで、窓の(そば)へと歩み寄る。


「あっ、(あれ)派出所の屋上だよ! あたたたっ」


 其処(そこ)からは2階建て屋上付きの派出所が見えて()り、屋上にはでんとチェロルの飛翔(ひしょう)機がのさばってる。

 地上には所狭しと飛翔(ひしょう)機が並べられて()り、(あれ)らはアリア殿下配下の近衛(このえ)騎士団に所属するものだ。

 ()の周りは要所要所に近衛(このえ)騎士が配備され、厳戒な警備態勢を敷く物々しさが見て取れる。というか派出所の屋上に(まで)(しっか)り配置して、近衛(このえ)騎士が睨みを利かせてるのだ。()れは派出所の中も近衛騎士団の休憩所と化して()るのだろう。


 本来であれば此処(ここ)の派出所は仮の司令部が設置され、有り余る空き地は当初の目的通りに集められた騎士たちの一時待機所と()(はず)だった場所である。

 言わずもがな近衛(このえ)騎士団に()いてはアリア殿下に物申す奇特なものは()らず、(むし)ろ反帝国主義集団を(おび)き出す(おとり)()って()れたと、感謝しても良いくらいであろう。

 勿論(もちろん)、リルミールには関係なく(あずか)り知る(ところ)でもない(ため)其処(そこ)には興味を示さず、取り()えず場所が(わか)ったと納得したらしく、ぷいと(ひるがえ)し部屋を出て()くのだ。


「あたたた……」


 そんなリルミールが頭を押さえつつも、再び覚束無(おぼつかな)い足取りでよたよたと廊下を進み行くと、隣室の扉から話し声が漏れ()こえて()るのである。

 入ろうか(いな)かと逡巡(しゅんじゅん)して()ると勝手に扉が開くのだからリルミールもびっくりだ。


「あら、リルミールさん起きたのですわね」


「わわっ、あたたた……」


「あらあら、大丈夫ですか? ()れが話に聞く二日酔いと言うものでしょうか」


 ひょいと出て来たラクス様は心配する素振りは見せるものの、暢気(のんき)にリルミールの症状を珍しがって見入るのである。


「ラクス様、私が診ます。リルミール様お加減の悪い所は何処(どこ)ですか?」


「え、あっ、リーシャ様、はい、起きてから頭がずきずきと痛み声とか自分の動作にも(さわ)る感じです」


「はい、頭ですね。[聖光よ此処(ここ)()れ]」


「えっ!」×2


 聖光と言えど他人の気力防壁を越えての直接干渉は行えないし、空気などに()る物質の減衰も起きる。(なに)しろ顕現する前はどんな御業(みわざ)()っても気の塊でしか無く、顕現しても性質は光なのだから遮るものがあれば届かないのである。

 ()れ故、自分を起点とし障害物を(かい)(くぐ)って、目的の場所で顕現して光らせさえすれば、勝手に放射して其処(そこ)彼処(かしこ)を照らし尽くして()れるのだ。

 リーシャは手を伸ばして直接リルミールの気力防壁を越えて近付き、頭を押さえる様に(かざ)してから手に聖光を顕現したのである。

 そして色()()りに輝く聖光はきらきらしくて目に優しくない。


(ああ)、すうっと頭の痛みが抜けて()く。って否否(いやいや)リーシャ様も希少御業(みわざ)をお持ちでしたのですね。私初めて見ましたよ。凄い! ()れって【聖】の御業(みわざ)なんですよね」


 折角、()い感じで封じられて()た暴走娘の調子は抑えらて()た分を取り戻すように乗りに乗って絶好調だ。


「ええ、私も滅多(めった)に見られないものを拝見できて感激ですわ。【聖】の属性は僅か(なが)らも治癒の効果が有ると()うのは本当でしたのね」


「ええ、【聖】の御業(みわざ)です。いやあ、()れと言って使い道も()(わか)ら無いので、()れ程のものでも無いですよ。リルミール様のお加減が良く()られたのなら幸いです。ふふ、さあ、戻りましょ今からお茶にするそうですよ」


「わあ、()()う、喉が乾いて()てお茶が飲みたかったのです。()ぐに()(いた)しましょう」


「もうすっかり顔色も良くなって仕舞(しま)いましたわね。元気も普段より()るのではなくて? ところで()の聖光を酩酊(めいてい)状態のリルミールさんに使ったら、如何(どう)()って()たのでしょう」


 リーシャの動きがぴたりと止まり、ぎぎぎとぎこちなく振り返ると、しどろもどろに話し出す。


「う、うん確かにね。使う価値は()ると思うよ。うん、でもね。仲間に実験めいた御業(みわざ)を試すなんてね。如何(どう)なのかなって……」


 声が少しずつ小さく()って()き最後には口を(つぐ)んで仕舞(しま)う。


「……ええ、()う、確かにお酒は体を活性化して()るだけかも知れないですし、聖光が変に作用したら危ないわね。御免なさいね。変なことを()いて仕舞(しま)って」


 ラクス様は黙り込んで仕舞(しま)ったリーシャを()り成そうと必死に(なだ)めるのである。



---

修正記録 2017-07-19 10:11


「障害物を(かい)(くぐ)って」追加


聖光を手に → 手に聖光を


平仮名推奨文字を漢字に変更


ルビを追加


取り留めようと → ()り成そうと

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