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アリアは知らない  作者: taru
三章
16/345

04影でござる?

『私の奏でる素晴らしい演奏を遮音するとはどういう了見ですか!』


 本陣の指揮官と予測されるものの位置から周囲70mに渡り音が消えた。

 同時にアリアが捉えている立体世界の感覚も、その周辺がぽっかりと見えなくなった。だが【念話】や【遠話】を使う気の線、繋がりは捉えたまま維持できている。


『反響を捉えられなくなったのは、あの空間だけね。

 逆にその範囲は骨打楽器の演奏による言霊? が使えなくなったと言うことかしら。

 たぶん【大気】の掌握圏に入れば音を消してる気の流れを抑えることができるわね』


--

『中将閣下、観測阻害地帯が此方(こちら)に進行するにつれて粒系御業の制御が遮断され、【念話】拡散連絡兵との連絡が途絶える現象が起こっております。

 それと遠距離攻撃系の御業は観測阻害地帯の外であれば射出系だけは使えたと。

 この現象、以前にも似たような事が』

『あの化け物か……そうだな、リンガーク中佐を光点に向かわせろ。

 牽制(けんせい)にもなる。遠距離攻撃部隊を外辺に編成し統制射撃の指揮をとれ。

 (つい)でここで起こる現象の情報は逐一他の部隊にも連絡を回せ』

--


『誰かいらっしゃるのかしら』


 アリアはここに来て少し手こずり始めていた。

 ここの骨兵たちが使う【剣技】の御業は今までの奴らとひと味違うようである。砂の射撃に致命傷を避けるものがいれば完璧に避けるものもいる。光兵の【剣舞】に剣を交え打ち合えるものも出てきた。


「【剣技】の卓越したものを中心に戦線に送るのはわかりますが、ここまで違うものなのですね。

 本陣直轄部隊、あなどれませんわ。

 ミーア、先遣隊を支援してください」


 アリアの【光幻】は親衛隊を模倣し創造したものたちである。どうしても個々の能力は模倣した人物に依存する。ミーアは親衛隊副隊長を任せられるほどの腕前である。

 【光幻】は強いがそれなりに制約があるようだ。何故ならエミリア級の光幻を多数複製しなかったことがもの語っている。

 それはさておき前線に展開した光兵は30体、それを補佐するミーア(模)。演奏音と共に行動する四方の10体。今アリアの周りには光兵9体、エミリア(模)、アリア(模)となっている。

 時折統制射撃とやらが定点に来るが、戦場の友軍砲火を避けているため驚異とはならないので放置している。

 というか礫や(かたまり)(たぐ)いは敵直前まで誘導するのが基本であって、速度は人が全力で投げる石ころ程度であるから、この位置までは届かない。


 アリアは52体の視野と演奏の反響、気の詳細を掴む【魔見】? を駆使してお客さんとやらを待ち構えているのだが一向にその気配は無い。油断はしていなかった。

 なんとなく模造発声器官を使ってアリア(模)に指示を出す振りをさせたのはたぶん意味があった。

 アリア(模)の首に剣尖が舞う。これは意味が無い。だが全く予兆に気付かなかった。同時にエミリア(模)の剣が抜き放たれる。おい! 操作してないでしょ。骨の腕が舞った。その事象を刮目するとうっすらと影が見えていた。気の感が阻害というか惑わされているような曖昧さだった。


『確か後天御業に【気隠】がありましたわね。目視まで誤魔化すのは無理だったはずですわ。

 だとしたら【影潜】……持ちが存在するのですね……。あれは影上という制約に縛られた異空間移動。ここは全て影みたいなものじゃないですか! 何て理不尽な』

 まさに、どの口が言う


--

 本陣司令部でも動きがあった。

『ものは試しか。【窒素】の御業持ちが一人居たな観測阻害地帯に重奏支援部隊を編成し窒素を流し続けさせろ。

 押し上げられるようなら【火】部隊を編成し連携して防壁を作れ

 音消失地帯に来るまでになさんと骨言霊の重奏支援は受けられぬぞ』


 7年前の戦いで突然に現れバグルス王国軍を壊滅させたもの、その業を研究しないはずが無い。といっても予想に過ぎず。対策は立てられているが今回使えるかはわからなかった。


 迅速に部隊再編は整い窒素の増加が開始される。大気の窒素含有率(ちっそがんゆうりつ)が大幅に増加することによって、【窒素】の御業を持つものの制御権が【大気】と拮抗し、そして逆転する。

 窒素の流入が観測阻害地帯を押し上げ始めたのを合図に【火】の御業が炎の壁を構築する。


 言霊属性の御業に影響する力関係は距離と状態、成分に依存する。いくら相手の制御が杜撰(ずさん)で効率が悪くても近距離から力関係が上位の御業に骨言霊? の支援が加われば逆転してしまうことになるはず?

 また、【火】で大気の温度を上げられると膨張し細かい制御が難しくなる。ただこれは効果があるかは微妙と言わざるを得ない。どれくらい気力の弾幕が障壁として意味を為すかが焦点だろう。

--


 アリアは焦りつつも思考する。こんな時こそ落ち着けと自分に言い聞かせて。この時ばかりは泣けない、震えない体に感謝する。


『骨影の独壇場(どくだんじょう)独擅場(どくせんじょう))……ではないですわね。エミリアの光幻に腕を跳ね飛ばされてましたわ。

 淡くても光の(そば)では異空間への出入りはできなかった。ですから逃げ損なった。

 まあエミリアの動きがやばすぎたとも言えますけども』


 骨兵の【影潜】使いさん略して骨影といつの間にか命名しているアリアだがそれはさておき。

 時間を与えすぎてはいけない。此方(こちら)を分析し情報を持ち帰られても困る。今はまだ困惑しているだろう。安全圏である異空の中で優位としている意識が判断を鈍らせているはず。逃がしてはならない。

 アリア(模)の感覚から自分の空間収納を【魔見】をもって観察する。繋がりがある。気の繋がりが光幻たち、大気、演奏操作と細くうっすらとした線が全てにあった。

 だが骨影に繋がりを必要とするものはあるのか。【念話】系統は控えているらしく感じない。外はどうやって確認している? 今は(むくろ)となって必要ないだろうが以前は大気の循環が必要だったはず。制御下の大気が不自然に移動している、あるいは切断されていないか。


『穴を見つけましたわ!』

【影潜】:影に潜り隠れる  取得率0.00003%


---

ミルス・リンガーク

 バグルス王国伯爵子息 中佐


 言霊御業:岩、石灰、火

 御業:影潜、健康、強頭

 後天御業:剣技、気隠、乗馬、魔練



---

修正記録 2017-02-23 14:00



観測不可の地帯 → 観測阻害地帯

観測不可地帯 → 観測阻害地帯


幾つかのルビ追加


幾つかの改行追加


それと → というか


「礫や(かたまり)(たぐ)いは敵直前まで誘導するのが基本であって、速度は人が全力で投げる石ころ程度であるから、」追加


「どれくらい気力の弾幕が障壁として意味を為すかが焦点だろう。」追加


「骨兵の【影潜】使いさん略して骨影といつの間にか命名しているアリアだがそれはさておき。」追加


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