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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
153/345

134早朝

 朝はにっぱりリルミールもにっぱり若気(にやけ)た顔が止まらない。

 (なに)をそんなに張り切るのかは知らないが、朝日は()だ昇った(ばか)りである。

 何時(いつ)もの様に飛翔(ひしょう)板を駆って急ぎ勇んで、()(まま)城壁すら飛び越えてリーシャたちの派出所へと真っ()(かけ)()く。

 ()だ騎士見習いでは()るけれど、連日ハンナ様たちと行き交うものだから、使命を帯びての事だと勝手に解釈して()れて、誰も(とが)めるものは居やしない。



 ()の空を覆った飛翔(ひしょう)機群は(ほん)の一部がアリア殿下と共に離宮へ移動したとはいえ、(いま)だ大半が此処(ここ)派出所裏の空き地に所狭しと並べられて()るのである。

 有り体に言えば曲がり(なり)にも他国の近衛(このえ)騎士団で()るのだから、宮殿の区画へと全てを連れ()くのは(はばか)れるし、()れは近衛(このえ)騎士団が要人警護の演習と講じて居座って()るのだから、()の様に振る舞わなくては()らないのだ。

 (いず)れにしても騎士見習いも含めて可也(かなり)の人数が(いま)だ駐留して()り、本番を想定して(たゆ)まず励んで()(ところ)なのである。


「まあ、それでは(また)もやアリア殿下に(ほま)れを(いただ)いたのですか! (しか)()(たび)(しっか)りとリルミール様の意見が役に立ったと……。ああ、私も縦令(たとえ)一度でも(よろ)しいですから()の様な御声を掛けて(いただ)きたいものですこと」


 リルミールは再びミルストイ学園の顔馴染(かおなじ)みを見付け出し、昨日、リーファ様に教えて(いただ)いた自慢話に興じては、憧憬(しょうけい)の眼差しを受けて目尻を下げ(なが)ら照れる余りに体を左右にくねくねと曲げて()る。

 微妙に事実と異なって()る様だが、()れを訂正する積りははたと無いのだろう。


「ところで、随分と朝早くから参られたのですね」


「はい、ハンナ様から厚い信頼を寄せて(いただ)きまして今日は小隊の皆が来れない代わりに、(わたくし)1人でリーシャ様たちの補助をするように仰せ付かったのですよ。皆の分まで役立つ所存ですわ」


()れは(また)誇らしい事ですこと。……あら、(わたくし)(たまたま)、先程(まで)警邏(けいら)の交替任務をして()りまして知り得たのですが、リーシャ様たちはつい今し方夜間勤務の方々と勤務交替で到着()されて、もう少し()ってから担当区画街の巡回に出られるそうですよ。()の間は派出所が留守に()るからと、(よろ)しくお願いされたそうですわ」


「ええ! 折角(せっかく)朝早くから此方(こちら)で役立つ(ため)にと張り切って()()るのですから、巡回が終わるのなんて待っては居られませんですよね。()()ったら巡回にも参加して(まい)りますわ!」


--


 昨日(きのう)は夜間勤務の騎士たちに(しっか)り申し送りをしたものの、精鋭と名高い近衛(このえ)騎士たちに囲まれて(さぞ)かし居心地悪かったのか、勤務交替が終わるとそそくさと逃げる様に()の場を後にするのである。


(なん)だか慌てて帰って()かれましたわね」


 ベイミィの些細(ささい)な疑問に答えて()れたのはティロットである。


「多分だけどね! 近衛(このえ)騎士の皆さんが本気で警戒任務を行って()るからではないかな! 少しぴりぴりと緊張した空気を感じるんだ!」


 アリア殿下の警護を想定して実践(さなが)らの演習である上に、宮殿の近衛(このえ)騎士団や第一・第二騎士団には、()()を今後の参考にするようにと申し伝えられて()るとの(うわさ)(まで)あるとか。

 そして誰かが朝っ(ぱら)から張り切ってアリア殿下に(ほま)れを(いただ)いたと、自慢話を吹聴(ふいちょう)して回ったのだから(みな)の気迫が増すというものだろう。


「へえ、私には(わか)らないですけれど()の内気付けるように()れるのかしら」


 ベイミィは意外と()ういった機微には(うと)いようである。


(みんな)ー、そろそろ巡回に行くよー」


「了解!」×5

「チュバ」


「ん? 若干だけど何時(いつ)もと違った気がする様な……」


「はい、リーシャ小隊長殿、(わたくし)此度(こたび)ハンナ様にリーシャ小隊長殿の小隊を補助するよう仰せ付かって()りまして、()の機会に街の巡回にも参加したい所存で御座(ござ)います」


「リルミール様、……随分と朝早いとか()れ以前に何故(なにゆえ)メルペイク護衛官を連れて()られたのですか?」


()れは私が此処(ここ)へ……」

「ああ、(なん)となく察したので答えなくて良いです。(いや)、そんな悲しそうな顔に急変しないで下さいよ。何だか私が悪い事をした様で居た(たま)れなく()りますから、()(かく)巡回に出発しますよ」


「……了解!」


 まあ、大方メルペイクが街の巡回を(ほっ)したとか1羽(たたず)んでて(さみ)しそうだったとか、改めて()くに値しないと()る程度は判断できるのだろう。

 リーシャは何となくではあるがハンナ様が自分の目が届かない間、リルミールの管理(お守り)を押し付けたのでは無いかと予想できたのであろうか。そっと息を()き特に害が()る訳ではないと諦めて、連れて行く事にした様である。



---

修正記録 2017-07-10 15:02


して()て → して()れて


見習いも含めて → 騎士見習いも含めて


ルビを追加


朝っ(ぱら)からアリア殿下に → 朝っ(ぱら)から張り切ってアリア殿下に


---

修正記録 2017-07-10 10:18


目尻を下げ照れ(なが)ら体を → 目尻を下げ(なが)ら照れる余りに体を


違って → 異なって


積りは無い → 積りははたと無い


厚い信頼を → 厚い信頼を寄せて


つい今し方勤務交替で → つい今し方夜間勤務の方々と勤務交替で


()の間、派出所が留守に為るそうですわ

()の間は派出所が留守に()るからと、(よろ)しくお願いされたそうですわ


(ため)にと来て()る → (ため)にと張り切って()()


終わるのを待っては → 終わるのなんて待っては


「--」追加


少し緊張した → 少しぴりぴりと緊張した


「 アリア殿下の警護を想定して実践(さなが)らの演習である上に、宮殿の近衛(このえ)騎士団や第一・第二騎士団には、()()を今後の参考にするようにと申し伝えられて()るとの噂(まで)あるとか。

 そして誰かが朝っ(ぱら)からアリア殿下に(ほま)れを(いただ)いたと、自慢話を吹聴(ふいちょう)して回ったのだから(みな)の気迫が増すというものだろう。」追加


「 ベイミィは意外と()ういった機微には(うと)いようである。」追加


()の機会に」追加


巡回欲したとか1人寂しそうだったとか → 巡回を(ほっ)したとか1羽(たたず)んでて(さみ)しそうだったとか


リルミールの管理を押し付け → リルミールの管理(お守り)を押し付け


予想できるので諦めて連れて行くことに → 予想できたのであろうか。そっと息を()き特に害が()る訳ではないと諦めて、連れて行く事に

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