133明日の予定は?
前話(四章132)の修正で400字ほど文を追加しております。
復、前話(四章132)の後書きに少しややこしい意味合いを持つ言葉の補足説明を加えております。
始まりあれば終わりある。皆は潜泳機での作業も粗終わり外に出て来て作業場の所々で打合せや雑談をして居る様子が見受けられる。
そんな今にも”そろそろ戻りましょうか?”と言い出しそうな頃合いの折である。主立った面々は今後の予定を話すべく、アリア殿下の一声で集められたのだが。
「はい、明日は確りと予定を組ませて頂いて居ります」
アリア殿下の提案はハンナ様に由ってけんもほろろに却下されたのである。悔しそうだが仕方が無いと観念したのか話を切り替える事にした様だ。
「……ではラクス、私は非常に残念なことですが明日の午前中一杯予定が詰まって居り、此方に来ることが罷り成りません」
「あ、はい」
突然、声を掛けられて少々困惑気味のラクス様である。
「ですが、今日、行った数多の重要な検証で水中音声蒐集機の有用性が証明された訳ですから、ラクスには是非とも此れ等の技術を高めて行って貰いたいのですわ」
彼の盗聴紛いの執拗なリルミール観察も全てが重要な検証の一環らしい。
そうですわよねとアリア殿下が目で訴える様にエミリア様を見遣ると、其の意を理解したのか捕捉するようにエミリア様は語りだすのである。
「はい、此の技術から得られる情報は可也有用です。目的地の状況や動向を詳細に読み取れる上に、知覚系の御業を使用した時に漏れ出る特有の気配が全く出て居りません」
「あら、そんな事が判るのですか?」
「はい、弛まぬ訓練次第で【暗見】【慧眼】といった御業出す気力の線を感知できますよ。話を戻しますが、今回の検証で地形精査も可能だが音が何処かしら発生して居る必要がある事、水中に比べると大気中での音声蒐集は有効範囲が短い事が判明したのは大変に良い収穫でしたと存じます」
「間諜の類が使って無いとは言い切れないから、其れを想定して動くには業や技術の特性を知らないと駄目だからな。そして、護衛を行う上でも其の業があれば気配を消した相手や不穏分子を逸早く見付けられるのではないかな」
エミリア様やリーファ様の言葉を受けて、アリア殿下は満足そうに頷いてから本題に入るのである。
「就きましては明日は朝から……そうですわね。水中音声蒐集機を担当するベイミィ様、潜泳機総合技術責任者のチェロル様、「ヒッ!」各種機材取付け技術主任のリーシャ様の3人と克く打合せをして、今上がって居る問題、音の発生した方向を確認できるようにする事と、音が何処からも発生して居ない状況で自ら音を出して反響音を精査できるようにする事、此の2つを考えて貰いたいのですわ」
ベイミィやチェロルは兎も角、何時から自分は技術主任に為ったのだという顔付きをして居るリーシャだが、皆其の様な担当を任じられた覚えが無いのは確かだ。
此の分だと復、何時の間にやら見に覚えのない報酬が、支払われて居そうで怖いものである。
「判りました。御期待に添えるよう努力したい所存で御座います」
正直、ラクス様としては絡繰り関係の事は専門外なのだろう。蓄音魔機から音を出せたのも当てずっぽうの節が在る。何せ音の抽出元と思われる箇所へ手当たり次第に気力の線を繋ぎ、漸く音が鳴った瞬間は喜びよりも溜め息を吐いて居たのだから。
「畏まりました」×3
リーシャたちの役職は兎も角遣る事は何時もの事であるのだから、手伝って呉れるものが増えて喜ぶ事はあれど反対する理由は無い。況してお世話に為って居る皇族の御命令なのだから、和やかに笑顔を見せて従うのみである。
チェロルだけ顔が硬いのは責任の重さに引き締まっての事だろう。突然に話題を振られて驚き強張って居るからでは無いのだ。
アリア殿下は其れに応えて唯唯笑顔を返すのである。自分も参加したいなどと噯にも出さずに。
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そして此処ではリルミールがにへらと顔を綻ばせ続けて居り、アリア殿下の話を聴いて居たのかさえ不安に為る有り様なのだ。
明日は皇太后陛下の近衛騎士として振る舞うのが主の仕事であるから、今迄の話し合いが関係無いのは確かなのだが、横に居るハンナ様には唯唯不安なだけである。
「リルミール、未だ見習いである筈の貴女は、此の処の忙しさで暫く訓練ができて居りませんでしたからと、明日は久し振りに同期の子たちと訓練をさせようと考えて居りました」
「おお、久し振りで……」
「但、貴女を見て居ると無性に不安が過るのを禁じ得ないのです」
うん、間違いなく自慢するだろう。アリア殿下に会った事自体が秘匿事項なのに、何処で何故と芋づる式に秘匿事項が更に繋がるのだから。
「ですから、貴女は明日、1人でですがリーシャさんたちを手伝って来なさい。できますね?」
「はい、お任せ下さいませ」
と自信満々にリルミールは返事をする。勿論、此れにも不安だが幾分増しだと思わせるのは仕方無かろう。
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修正記録 2017-07-09 07:59
「 彼の盗聴紛いの執拗なリルミール観察も全てが重要な検証の一環らしい。」追加
良い収穫 → 大変に良い収穫
リルミール、明日は、未だ → リルミール、未だ
、久し振りに → 、明日は久し振りに