表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
151/345

132たじたじ

 瑠璃(るり)色金色(あかね)色、()の威風堂々たる(たたず)まい。誰が見て()れるのかは知らないが恰好(かっこう)だけは一人前で、(ひげ)まで生やした()の貫禄はさしたるものと言わしめようぞ。

 て()うか(なん)でアリア殿下を示す御璽(みしるし)が機体に金色で描かれて()るのだろう。()の周りには荘厳(そうごん)な古式ゆかしい模様で飾られて()る。

 (ただ)()れは大分早い段階で描かれて()り、周りの絵は後でゆっくり付け足さたものなのだから、()の事に今迄(いままで)()えて言及するものは一人として居なかった訳だ。

 秘密の場所で秘密の潜泳機を誰が見るというのだろうか。まあ、()れが描かれて()たが故に彼程(あれほど)(まで)に過剰な装飾を、潜泳機内部へと(ほどこ)したのかも知れない。


「ハンナ様、()の様な高級且つ荘厳な装飾を内部の隅々(まで)施して()ると()れば、以前に(おっしゃ)って()ました宝の探索などして万が一にも()の潜泳機を沈めでもしたら、所謂(いわゆる)本末転倒ってものの体現ですよね」


 其処(そこ)は潜泳機の中であり、今や所狭しと装飾の施された緞帳(どんちょう)絨毯(じゅうたん)が飾られ敷かれして()るのである。

 ()れでは()しもの時にと床下に置いて()る砂鉄とかを、(めく)って取り出すのも一苦労かも知れない。


「リルミール、滅多なことを言うものでは()りません。()の潜泳機制作に携わった方や装飾を施した方たちが、()いて愉快なものでは()りませんでしょう。()れに今や()の潜泳機が地底湖の移動手段として一番安全で護衛し(やす)いのですから、形は違えど装飾は(いず)()されたでしょう。[植物の御業(みわざ)彼等(あれら)を育め]はい此方(こちら)は終わりましたから次に行きましょう」


「私は()る事が無いのですが……」


貴女(あなた)は私の話を()く事が今は大事な仕事なのですよ。話を戻しますが私が()って()たのは宝探しなどでは()りません。皇族の口伝が絶えた現状ですと隠したものや(まつ)られて()たものが、存在するかどうかすら不明なのです。()し過去の遺物が発見されれば()のものの価値よりも、()れから導き出される過去の情報が重要と()うことです。だから宝探しでは無く周辺水域の調査なのですよ」


「はい……」


--


 リルミールを執拗(しつよう)に狙い追い(すが)る黒い影が()る。

 ()れは黒い炭素材質の板であり、音を(とら)(やす)いように何度も改良した一品なのだ。

 ラクス様は潜泳機に()れを向け、リルミールの声が捉え(やす)いよう移動する度に調整を繰り返し、一言一句聞き逃さない(ため)、慎重且つ真剣に狙い定めるのである。


「流石に面白の才能を遺憾無く発揮するリルミールさんでも、ハンナ様に掛かればたじたじの様で御座(ござ)いますわね」


()れは()れで(おもむき)があって(よろ)しいですわよ。特にリルミール様は(わか)らないことは(はばか)り無く()かれますから、戦闘技術でも世間の一般常識でも私の得られるものは大きいのですわ。ところで、遠隔義腕の件は如何(いかが)だったのですか?」


(あれ)はどうやら私たち自ら気付くのを待って()られた節があるので御座(ござ)います。(なに)せチェロルさんは鉄の接続部分を正確に精密に把握()されて()られますから、気付いて()られない(はず)御座(ござ)いませんと存じ上げます」


「……チェロル様の事ですからメルペイクさんが()の場に()られない事を気付いた時点で、単純に()(まま)後回しとしたのだと思いますわよ。それから潜泳機の中に居たメルペイクさんも遠隔義腕の取り付け時に、一番近くで作業を見守り指示して()たと見受けられるラクスに声を掛けたのではなくて?」


「あ、()うかも知れません……」


「――では、調査で発見したものが泥だらけだとしても、矢張(やは)()の高級そうな絨毯(じゅうたん)に置いて持ち帰るのでしょうか? 後、例えばリーシャ様が泥だらけで戻られたら座席に座れない事態に陥るのではありませんか?――」


 会心の返しを放ったと満足げな顔付きでハンナ様を見遣(みや)るリルミールだが、ハンナ様は取るに足らない事の様に淡々と答えて()くのだ。


「――ああ、()の事ですか。先程、マギーさんとメアリーさんが寸法を測りに来て()たでしょう。何でも椅子を包む(ため)の袋や普段から床に敷く(ため)の絨毯を取り寄せるのだとか。矢張(やは)り普段から高級な家具に気を使って手入れして()るものはちゃんと心配(こころくば)りができて()ますね。貴女(あなた)(しっか)りと配慮できる子だったら、私も心配(しんぱい)要らないのですけれどね――」


「――はい……――」


 ()しリーシャが傍らで()いていたら(たと)え話でも、勝手に私を泥だらけにしないで欲しいのだけどと苦言を呈して()ただろう。


「二方共に大変貴重な意見ですわね。簡易的な着替えや収納用の袋を常備しても良いかも知れませんわね」


「後で2人にはアリア殿下がお褒めして()たと伝えて()きます」


「リーファ様、()れでは(また)、リルミールさんが助長して仕舞(しま)いハンナ様に負担を()いる事に()りませんか?」


「エミリア、褒められて立派に成長するかも知れないのに、最初から変な方向にずれて仕舞わないかと心配するのは野暮と言うものですよ。ハンナ様を信じましょう。特に気合が入って()られる様子ですし」


「御意に御座(ござ)います」


 ()の場に居るものたちはハンナ様を哀れんだのは()うまでもない。

 アリア殿下は多分ずれて仕舞うことも期待して()るのだろうと。

--

補足説明


さしたる = 「大した」の後に「事でもない」と続けて書く文字が(まと)められた意味として使われることが多い? (然程(さほど)の)

 漢字では「()したる」、「指したる」と書く。

「たいしたものと言わしめる」

然程(さほど)でもないと言わしめる」


哀れむ

1不憫に思う。同情する。

2賞美する。めでる。


---

修正記録 2017-07-08 10:23


指示して()たラクスに → 指示して()たと見受けられるラクスに


それからメルペイクさんも → それから潜泳機の中に居たメルペイクさんも


子だったら心配(しんぱい)要らない → 子だったら、私も心配(しんぱい)要らない


「――はい……――」以降に400字ほど加筆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ