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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
150/345

131寸劇

()れで……リルミール様は何故(なにゆえ)メルペイクを伴って此方(こちら)にお越し(いただ)いたので御座(ござ)いましょうか?」

「チュン」


 ベイミィがやけに(かしこ)まりて話すのは、遠くに見えるラクス様が怪しき板状の黒い物体を此方(こちら)に向けて()(ため)では無いのだろう。

 縦令(たとえ)(なに)やら蓄音魔機を(いら)(もっ)て傍らではアリア殿下がうんうんと(にこ)やかに頷いて()たとしても。


「いえ、特に用が()った訳では無いのですよ」


「確か、ハンナ様に連行されて()かれた(よう)にお見受けしたのですが……」


「ええ、先程ハンナ様に連れられて潜泳機の中に入ったものの、肝心の植樹用容器をミーア様が(つく)(いただ)くのは、材質の特殊性も()って少々時間が掛かると()う話でしたのです」


「では、()の植樹容器ができ上がる(まで)メルペイクの散歩をして(くだ)さって()ると?」


()れも()りますよ。まあ、我ら小隊はミーア様の代わりに室内装飾を手伝う事と()ったのですが、元々()れ程は人手を必要としない(ため)に、ラクス様が遠隔義腕の取り付けを手伝って()(よう)なので、流石に6人で(ひし)めき合って終わり掛けの作業を手伝うのも詮無き事と判断しまして、ハンナ様がミーア様を手伝って()る隙に抜け出した訳なのですよ」


(いや)、隙を見て抜け出しては駄目でしょう。と言うかハンナ様はリルミール様が何か仕出かさないようにと、目の届く範囲に居るよう連れて()かれたのに、()れでは意味が()りませんわ!」


「まあ、何を(おっしゃ)るのですかベイミィ様! 丸で私が問題を起こす様な言い振りです事、そんな訳は()りませんわよ。(ただ)、ハンナ様は過保護なだけで(しっか)りと私に信頼を置いて(くだ)さって()(はず)ですよ」


「いえ、現に此処(ここ)へ逃げて()られて()る時点で問題行動なのでは御座(ござ)いませんか? 信頼を裏切って()りませんか?」


「実は此処(ここ)へ来たのは訳が()るのですよ。勿論(もちろん)、堂々と後部の扉から出ては皆の目が()(ため)(はばか)られますし、外に出る積もりも全く()りませんでしたわ。(ただ)一寸(ちょっと)気分転換に機内を見て回ろうと前方部へ行って()ただけなのです。()うしたら丁度(ちょうど)ラクス様が鉄の柱を使って降りたり昇ったりして()る時に、メルペイクさんが何やら物申してる様子に気付いたのですよ」


「はあ、自分の縄張りを断り無く触れたり足蹴にしたりするなとでも? それとも滑り降りる音が嫌いなので止めて欲しいと?」


「ええ、私も最初は()う思って()ました。(しか)しはたと思い至たったのですよ。メルペイクさんは外に散歩へ連れて()って欲しいと訴えて()るのでは無いかと。私は()のことに気付くと居ても立っても居られずにメルペイクさんを肩に乗せて此処迄(ここまで)来た次第なのですわ」


 ()れ最初に確認した話じゃないのという突っ込みは()(かく)、横から割り込むものが居た。


「メルペイクそうなの?」

「チィチィバ」


「あっ、リーシャ様、花壇の方は……」


 ベイミィは()う言いつつ口を一文字に結ぶ。


「ん? もう終わったよ。……ああ、ベイミィも()りたかったのね。()かすから慌てて終わらしちゃったよ。()れからメルペイクは{(あれ)で良いのか?}的な事を言ってるみたいだよ。羽が指す方向からしたら潜泳機かな?」

「チュチィ」


「身振りからして塞いでない的な感じ?」


「ラクス様に物申して()りましたのでしたら、遠隔義腕の取り付け部分を塞がないで良いのか? と()う意味かしら」


「チェロルに()かなかったの?」

「チュバチュン」


()かなかったみたいだね。あっ」


「そっかー、てっきり潜泳機の中に()もりっきりなメルペイクは外に出たかったのかと早とちりでしたね。うぐ」


 そんなリルミールの首根っ子から服を(つか)み取り、ほんの少し御冠(おかんむり)のハンナ様が声を掛けて()る。


貴女(あなた)が【残留思念】の御業(みわざ)を使えば、()のくらい感じ取れたのではありませんか?」


「い、いえ、本人が()の場に(とど)まって()る場合は()ず読み取れませんし、普段から近衛(このえ)の皆様は(ほとん)ど思念を残しませんし、()して宮殿内で()御業(みわざ)を使うなど恐れ多く日頃から使わない癖が付いて()りまして……」


()れは貴女(あなた)にしては(よろ)しい判断ですね。では戻りますよ」


「は、ハンナ様、後ろに引っ張られてはまともに歩けません」

「チュチュン」


 ベイミィが思い出したかの様にアリア殿下の方を向くと、矢張(やは)(にこ)やかに満足そうな御尊顔で頷いて()らせられて、ラクス様は既に潜泳機へそそくさと向かって()(ところ)である。

 おや、ラクス様ははたと気付いたのか引き返してメルペイクを受取ると、再び潜泳機へと向かい()く。

 息をそっと吐き花壇の方を向くとリーシャがマギーから余った花の種を(もら)い受け並べて()る様子が見える。


「リーシャ様、黄色の花もちゃんと混ぜて(くだ)さいまし」


 ベイミィは花壇の手入れを興じる事にした様である。



---

修正記録 2017-07-07 18:32


「 おや、ラクス様ははたと気付いたのか引き返してメルペイクを受取ると、再び潜泳機へと向かい()く。」追加位置を間違えていましたので移動。


---

修正記録 2017-07-07 08:21 ちょっと蛇足的だったかな?


一部アプリが正しく動作するため「々」を取り込まないようルビの設定を変更


「 ()れ最初に確認した話じゃないのという突っ込みは()(かく)、横から割り込むものが居た。」追加


平仮名推奨文字を漢字に変更


貴女(あなた)の【残留思念】御業(みわざ) → 貴女(あなた)が【残留思念】の御業(みわざ)


「チュチュン」追加


「 おや、ラクス様ははたと気付いたのか引き返してメルペイクを受取ると、再び潜泳機へと向かい()く。」追加

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