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アリアは知らない  作者: taru
三章
15/345

03やーめーてー

『バシュってね』


 アリアは【砂】言霊強化×7の攻撃を使い大佐と目される骨兵と【念話】あるいは【遠話】の起点となっている骨兵二体を射貫いた。

 本来はこのような遠距離からの攻撃など察知され防御を張られるのが常である。

 だが【大気】の掌握圏からは気の兆候は漏れず、速度が数倍となれば想定外の攻撃となる。

 (ただ)、観測するものには見られた可能性があるのが痛い。


『ああ【暗見】でも見られなくなると暗黒の塊が動いて見えるかも、なのかな。

 このまま進んではだめなのね。

 掌握圏と吹奏音だけ前に移動して此方はちょっと横に廻っておきましょう』


 トリストン大佐が【遠見】で覗いたあと初めて気づいたことから【暗見】はまた別の機構なのであろう。


 【大気】の掌握圏内。先行の光兵たちが本来進むはずだった場所へ気が侵入し集まる。そして骨の音が同時に重なって打ち鳴らされる。


『骨の打撃音で合奏ですか、私に対抗している……わけではなさそうですね。

 とりあえず相手の御業を行使することを妨害するのは良いのですが、本陣を叩く前に少しでも情報を与える行為は避けるべきでしょうね』


「ゴゴゴゴ、ガガガーン、ゴッゴゴゴゴー」

 炸裂音と衝撃が響き渡る。


 アリアは【火】【光】【雷】の御業が一定の範囲に充満するが如く隅々まで満たした事を知覚する。これは言霊の支援を受けていると理解できる規模だった。つまり、あの骨楽器隊はアリアへの合奏対抗戦を仕掛けてきた訳では無いのだ。

 そんなこともできるのかと感心しつつ迂回してきたアリアは【大気】の御業を行使して、骨兵たちのすべてを支配下の大気で一気に覆う。

 別に現状の掌握圏が限界では無い。(ただ)、無駄に広げて消費することを避けているだけである。


『先ずは【念話】伝達系から潰すことにしましょう。

 折角ですから技巧を凝らしてみましょうかしら。

 骨兵の核の予想位置を確定してと、砂を細く回転させる感じでしょうか』


「[砂よ在れ、そを射抜け]」×2×41回


 41体の【念話】持ちと推定される骨兵が次々と糸が切れた人形のように崩れていく。それと同時期に先行する30体の光兵たちが骨兵の隊列に浸透していく。


『ちゃんと音楽に合わせた剣舞を披露してきなさいね。

 さて次は128体かな、観測できた【火】【光】【雷】の御業持ちですわね』


「[砂よ在れ、そを射抜け]」×2×128回



 アリアは次々と狙いを定め輪唱の如く言霊を詠唱する。人の体であれば一句()つしか詠唱できないが既に何箇所も吹奏音を鳴らしているのだ。複数人で行う輪唱(りんしょう)も許容範囲であれば可能なのである。


 光兵の剣舞と言霊強化の遠隔攻撃からの蹂躙(じゅうりん)。指揮官と連絡網を先に潰されたとはいえ圧倒的だった。

 速度系や強化系の身体御業と【剣技】があっても、人の枠の(かせ)を外した光兵の剣舞には及ばない。

 途中に硬い骨な奴が60体ほどいたが、鎧を通して音が響くため、核の位置と肋骨の位置がまるわかりとなり、三番目の隙間に合わせて一突きすれば崩れ去った。すべて40を数える間もなく終えた。

 あの記憶に残る【強骨】持ちの骨兵との長い戦いは無駄では無かったのだ。いtげぇふん、いや何でもない。


『後ろから迫る集団はまだまだ遠いわよね。

 邪魔は入ったけど(ようや)く本陣ですわ。と言いたいところですが、ここを観測しているものたちがどう動くか。兵の移動を進言する? いや本陣指揮官を襲われた時点で指揮権を再編する。

 ……観測している指揮官たちは……裏側ですか。用心深いですわね。正解ですけど』


 アリアは本陣と同時に観測隊士官を潰そうと考えた。たとえ長距離に居ようと攻撃を届かす方法を持っていた。だが流石に裏側までは難しい。


『予定通り本陣の指揮官を先に倒しましょうか。【遠話】の御業らしき気の繋がりが集中している骨兵の次かな? そうね、また念話を聞き取りましょう』


 アリアは本陣に向かいつつ情報を蓄積していた。観測地はすべて岩の柱で5箇所。最初の監視は溶岩流の向こう側だけだったが、途中から増え始めた。1つはでっかい珊瑚柱のさらに奥。残り3つは縦穴出口を囲む形で河向こうにある。

 そして部隊編成は旅団規模で溶岩流の向こうが4、河向こうも4、中央が6と布陣している。


--

『中将閣下、2柱の偵察部隊から報告です。トリストン大佐、遠距離射撃と思われる攻撃により身罷(みまか)る。一切の予備動作、兆候を確認できず。同時にトリストン隊の【遠話】兵と連絡が途絶えております』

『空中に【砂鉄】【砂】【砂糖】【塩】を散布固定。狙撃有効位置に居るものは遮蔽物、盾を構えよ。

 【遠見】【看破】【魔見】【生感】の通らない地帯を目標に遠距離飽和攻撃の準備。

 念話が途絶えても(かず)読み継続にて放て』

--


『あちゃー、何だが色々と対策が取られている感じですわね。

 指揮官への直接攻撃は無理そうですわ。

 さて、空中散布防壁ですか。以前の私でしたら攻撃に躊躇(ちゅうちょ)したかもしれませんが、すべての粒を操る気の糸が見えていますのよ』


 【大気】の掌握圏が本陣へと近づくと急速に膨張し、一気に骨兵たちを包み始めた。

 相手側も観測阻害地帯に御業を行使するため、その気が侵入しようとしていた。だがアリアは今回それをすべて遮断した。


『では【念話】連絡網から削らせて頂きますね』


 そこで相手側の念話が聞こえる。

--

『確か、バンエリオン少佐が【音】を持っていたな。あの鳴り響く演奏音を消せるか試させよ』

--


『やーめーてー』



---

修正記録 2017-02-24 18:22

言霊の詠唱を[]で括る


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修正記録 2017-02-23 10:59



言霊強化×10 → 言霊強化×7


幾つかの改行追加


「「ゴゴゴゴ、ガガガーン、ゴッゴゴゴゴー」

 炸裂音と衝撃が響き渡る。」追加


「アリアは次々と狙いを定め輪唱の如く言霊を詠唱する。人の体であれば一句()つしか詠唱できないが既に何箇所も吹奏音を鳴らしているのだ。複数人で行う輪唱(りんしょう)も許容範囲であれば可能なのである。」追加


幾つかのルビ追加


観測隊 → 偵察部隊


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