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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
146/345

127ひげ

「ハンナ様、(あれ)(ひげ)ですよね。()れにしては大き過ぎませんか?」


「リルミール、態態(わざわざ)(ひげ)を取り付ける訳が()りませんでしょう。貴女(あなた)が変な事を言うものだから(ひげ)にしか見えなく()って仕舞(しま)いましたでは()りませんか。()れと(ひげ)の大きさに関しては泥を巻き上げ地を確かめ(なが)ら進む魚も居ますから、目の代わりとしてもっと長く発達して()る場合も()りますよ」


「あっ、ハンナ様、アリア殿下は彼処(あそこ)にいらせられますよ。あら、御機嫌が余り優れぬ御様子ですよね」


「口を慎みなさい。リルミール」


 潜泳機からにょきにょきと出て()た2つの影は、チェロルとティロット(つい)でにラクス様が加わり取り付け始めた遠隔義腕の絡繰りを見て、包み隠さず思った通りを物申した(のち)にアリア殿下の(もと)へ参上(つかまつ)ったのである。


「……アリア殿下、(うけたまわ)りました潜泳機の室内に植樹する件なのですが、ご意見を賜りたく御伺(おうかが)いした次第に御座(ござ)います」


 アリア殿下が若干ご機嫌斜めな様子では()るものの避ける訳にも()かぬ訳にも行かないので、ハンナ様は意を決して目的を果たすべく突撃して()た訳である。


「今、チェロル様たちが取り付けて()られるものは遠隔義腕と言いまして、水底で発見したものを調査や採取し(やす)いようにと造らせ持って()たのですわよ。ええ、構いませんわ。どういう要件でしょうか?」


 ハンナ様は取り()えず潜泳機に取り付けて()最中(さなか)(あれ)を、(ひげ)では無く遠隔義腕と呼ぶ事にした方が、アリア殿下の前では無難であると理解した様である。()れくらい察せずに如何(どう)して近衛(このえ)隊長たり得る。


「はい、植物を置く場所は決まりましたのですが、()れを植える容器を如何(どう)するかで判断に()まりまして……」


「ああ、鉄の容器だと環境に()っては錆が出(やす)いですし、普通の陶磁器の(たぐ)いですと潜泳機が衝撃を受けた時に砕けて乗員を危険に(さら)しますわね。それでしたら【岩】持ちが飛翔(ひしょう)板の作成に使って()られる技術の精密磁器型六角多孔(ろっかくたこう)を……六角多孔(ろっかくたこう)は無くても(よろ)しいですわ。()うですね。リーシャ様は……忙しそうですから潜泳機の中にミーアが()りましたでしょ? 飛翔(ひしょう)板に使って()る砕け(にく)い特性を持つ精密磁器の材質で、植樹容器を(つく)るように指示()さって(もら)えば(よろ)しいですわ」


「はい、有用たる叡旨(えいし)を賜り感謝(いた)します。ミーア様は唯今(ただいま)潜泳機の中で室内の装飾作業をして()りましたから、()(まま)植樹作業も手伝って(いただ)きましょう。ああ、装飾の方は植物への水()りに配慮して(いただ)くよう既に声を掛けて()ります」


 アリア殿下はゆっくりと頷き、()の御尊顔は御機嫌麗しくハンナ様も胸を(なで)で下ろすのだが、遠くから(なに)やら不穏な会話が()こえて()るのである。


「――チェロルさん、()(ひげ)ですが今の大きさでは取り付け口に入らないみたいですわよ――」


「――うん! ()れはね! (ひげ)の付け根の所に()る固定金具が、出た(まま)()ってるからだよ! そろそろ、ティロットが潜泳機の中に着いて待機してる(はず)だから、固定金具を引っ込めて()(ひげ)を差し込んで()れたら、中に居るティロットが固定金具を戻して()れる手筈(てはず)()ってるんだよ!――」


「――ええ、分かりましたわ。(ひげ)の付け根に……ええ、()りましたわ。()れを引っ込めて……はい、(ひげ)を右にゆっくりずらして()(くだ)さい……其処(そこ)! ()(まま)真っ()ぐ押して(くだ)さいませ――」


 すると(また)もやアリア殿下が御冠(おかんむり)へと()って()くのだ。ハンナ様は()(まで)の経緯を鑑みて、チェロルがティロットに指示を出して()処迄(ところまで)は大丈夫だが、身内と言うか近衛(このえ)騎士のラクス様が(ひげ)と発言するのは駄目らしいと判断したのか、リルミールに指示を出す。


「リルミール、(ただ)ちにラクス様の許迄(もとまで)行って、()れは遠隔義腕と言うのですと教えて差し上げなさい。()れだけで()ぐ理解()されるでしょう」


「は、はい、直ちに参ります」


 流石のリルミールも事態を察した様で深刻に受止め急ぎ足でラクス様の(もと)へ向かうのであった。ええ、アリア殿下とハンナ様の雰囲気がやばいので逃げる(ため)に、慌てて()の場を立ち去った訳では無い(はず)である。多分……。



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修正記録 2017-07-03 08:36


ハンナ様は取り()えずアリア殿下の前では潜泳機に取り付けて()最中(さなか)(あれ)は、(ひげ)では無く遠隔義腕と呼ぶ事にした様である。

ハンナ様は取り()えず潜泳機に取り付けて()最中(さなか)(あれ)を、(ひげ)では無く遠隔義腕と呼ぶ事にした方が、アリア殿下の前では無難であると理解した様である。


リーシャは……忙しそう → リーシャ様は……忙しそう


砕け(にく)い精密磁器 → 砕け(にく)い特性を持つ精密磁器

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