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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
145/345

126土いじり

 ()れは(たまたま)作業場に()ったからと、最新技術を盛り込んだと()う特別な塗料を使って(つか)の部分に塗装を行い、一見した(ところ)刃物と思わせる()の先には何やら透明できらきらと光を反射するものが埋め込まれて()るのだ。


 ()れは元々、リーシャがチェロルに【砂鉄】の御業(みわざ)で造形をして(もら)い、メルペイクに【鉄】の御業(みわざ)で具現化して(もら)った鉄製の移植(ごて)で、(つか)の部分は軽くする(ため)に強度を維持しつつも中を空洞とした自信一品だったそうである。

 そんな移植(ごて)を持ちマギーとベイミィを伴って意気揚々と花壇づくりを始めようとした(ところ)、アリア殿下に待ったを掛けられた挙句に移植(ごて)を取り上げられて仕舞(しま)い、先程述べた通りの姿に成り果てて戻って()た訳である。


「どうぞリーシャ様、イザベラにも協力して(もら)いまして、岩ですら簡単には負けないものに仕上がったと自負して()りますのよ」


勿体(もったい)無き御心配りを賜り、恐悦至極に存じます」


 とは()うものの戻って()た移植(ごて)は、何故(なぜ)か所々にきらびやかな装飾まで(ほどこ)され、実に土(いじ)りに興じ(にく)いものである。

 リーシャがすっかり変わった移植(ごて)を持ち(なが)ら、ぽかんと()れを眺めて()るとベイミィが物申して()る。


(そもそも)、リーシャ様は移植(ごて)を使わなくても、【土】の御業(みわざ)(もっ)て土いじりは自由自在ではありませんか。()してマギーが()りましたら態態(わざわざ)掘って種を植えなくても土に置いて水さえ()れば見る見るうちに根を張り立派に成長(いた)しますでしょ」


「ベイミィ様、()れはリーシャ様が()御業(みわざ)が不慣れな幼き頃から、サリア様と一緒に移植(ごて)を持って花壇を整えて()りましたのです。()の時からの癖で庭(いじ)りの際は、使わなくても必ず移植(ごて)を手に握り締めて()ないと落ち着かない様なので御座(ござ)います」


 リーシャは、えっ! 違うよ。ちゃんと使ってるよ。と訴える目をマギーに向けるが、すっと目を()らされるのである。

 何しろ植樹帯? まあ、花壇は廊下や作業場と()()だ設置する場所は沢山()るのだから、リーシャの楽しみに付き合っていたら()ぐに日が暮れて仕舞(しま)うと()うものだ。


 リーシャは壁の端っこで床岩を掘り下げてから、削った岩を()(まま)周りに盛り上げ囲いとして()く。

 すると透かさずベイミィは介入の余地すら与えず空いた場所へ土を盛り、其処(そこ)へマギーが種を()いて()くのである。


「[土よ()()れ]」


 ()の余りにも早い行動は、リーシャが岩を成形して納得の行く形へ整ったと思った矢先に、土が出現して仕舞(しま)う訳である。

 長年リーシャと共に行動して過ごし、()の機微を(つぶさ)に感じ取れるベイミィだからこその芸当だろう。

 リーシャが目をぱちくりさせて()るとマギーが声を掛けて()る。


「リーシャ様、種を()いた所の土に水を注いで(いただ)けますでしょうか?」


「え、はい、[水よ()()れ]」


 マギは水が注ぎ終わるのを見計らって次々と花や観葉の植物らを育てて行く。リーシャの手元に()るきらびやかな移植(ごて)矢張(やは)り握り締められるだけであった。


「さあ、リーシャ様、次は廊下の中央ですわよ。()だ遠隔気力通話器を設置して()る部屋や作業場も残って()りますから、急がないと今日中に終われませんわ」


「う、うん、()うね(わか)った。此処(ここ)一寸(ちょっと)範囲が広いかな。()う言えばマギー植物の種って、そんなに持って()()たの?」


「ハンナ様から少し譲って(いただ)いて()りますし、……ええ、丁度(ちょうど)折よくメアリーさんが此方(こちら)に来られた様です」


「マギー様、ご注文()されて()りました植物の種が色々と通い箱に届きましたので持って参りました」


態態(わざわざ)有難(ありがと)御座(ござ)います。はい、確かに間違い()りません」


 (ちな)みに通い箱とはメアリーがもう一人の侍女ラエルやルトアニアの宮城へ、定期的に【瞬間転送】を使い送っては回収する事を繰り返して()る小箱であって、手紙や小荷物などを入れて()り取りをして()るものだ。


「――(あれ)(よろ)しかったのですか。リーファ様?――」


「――ええ、アリア殿下、何でもベイミィ(いわ)くリーシャは適性御業(みわざ)も関係しているのか、昔から庭いじりが大好きらしく下手に余裕を与えると顔を綻ばし葉っぱすら()で始めるとか。()ういう事は一度植えさえすれば何時(いつ)でもできるのだから()ることを()ってからにして(いただ)きますとの話ですから問題無いと存じます――」



---

修正記録 2017-07-02 08:57


句読点を追加


()う塗料 → ()う特別な塗料


元々は → ()れは元々、


自信作だ → 自信一品だった


前述の → 先程述べた通りの


宮城 → ルトアニアの宮城


箱 → 小箱


小荷物などの()り取り → 小荷物などを入れて()り取り


のだ。 → ものだ。


庭いじり大好き → 庭いじりが大好き

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