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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
144/345

125私の領分

 中に入ると空気が変わる。(いや)、確かに周りは豪華(ごうか)絢爛(けんらん)な調度品に(あふ)れ、壁には価値の不明な複雑な絵が織り込まれた緞帳(どんちょう)(まで)飾って()るし、遅れて入ったリーシャたちに室内のもの全員が注目するしで()る意味空気が変わるが、()ういう意味ではないのだ。


「リーシャ様、はっきりと気づけましたでしょ? ()の部屋の大気が変わったことが」


「はい、少し呼吸も楽に()った気が(いた)します」


 アリア殿下はゆっくりと頷き(なが)ら、席へ着くように(うなが)して()る。


「リーシャ様もマギーさんも其方(そちら)の席へお掛けなさいませ。(さて)、既にお気付き方も()られるかも()れませんわね」


「ええ、面目御座(ござ)いません。普段、ハンナ様やマギーが【植物】の御業(みわざ)を使って(くれ)()御蔭(おかげ)かも()れませんが、今迄(いままで)問題と()らなかったのが(さいわ)いの限りです」


 リーファ様の具申を受け、アリア殿下はゆっくり首を振る。


「いいえ、本来でしたら()の様な大人数が此処(ここ)へ集うことも無かった思いますから、普段の人数体制に(おい)()れだけ大きな空間でしたら問題には()らなかったでしょう。今回は(たまたま)(わたくし)が来て()御業(みわざ)(もっ)()些細(ささい)な機微を知り得ただけなのですから。まあ、()れと()ういった構築物は専門の職人が行うものですし、野外で穴を掘って陣を(きず)く訓練は第二騎士団……いえ、近衛騎士団では()ず行いませんわ」


 第二騎士団では訓練が行われることも()るのかも()れない。(ただ)、微妙では()るものの一応は第二騎士団に所属して()るリーシャたちの前で、言及するのは(はばか)られた様である。

 部屋の中には沢山の植物が彼方此方(あちらこちら)に飾られて()り少し過剰なぐらいである。(いや)()の値段が張りそうな(つぼ)を植木鉢にして良いのか?

 (ほぼ)、背景と化して()ると言って良いぐらいに気配を消したメアリーさんが、静静とお茶を置いて()く。


「それにしても、潜泳機では(しっか)りと密室の中で空気が(よど)まないように、対策を立てて()られるのを見て関心して()りましたのですが、作業場は考慮する程で無いにしろ奥の部屋に全く対策が無かったのは不思議で()りませんですわ」


(ああ)、チェロルは関心の()るもの以外は興味が全く無いですから、設置や操作に携わった私が気付くべきでした」


「――リーシャ様! しい!――」


 チェロルは自分の名が出た事で、はらはらとし(なが)ら気をもみ慌てて()るが、周りは其方(そちら)に関心が無い様だ。


「いえ、責めている訳では無いのですよ。(そもそも)密室に長時間居ると空気が(よど)み人の害と()る現象は建築に携わるものや坑道で働くものの常識で()って学園で教えられるものでも無いのですわ。皆様、どうぞ休憩を始めて(よろ)しいのですよ」


 アリア殿下に進められ皆一様にお茶を飲み始め、少し緊張した雰囲気が全体的に和らいだ様に見える。


「あっ、空気って植物で浄化できるのですか?」


「ああ、リーシャ、()の辺りの話は私が教える領分だな。【植物】と【聖】の御業(みわざ)持ちが植物の近くに居ることで、空気を活発に浄化する作用は()るものの秘匿事項に()って()るのだよ。まあ、()しかしたら公然の秘密かも知れないが、戦争や武力鎮圧などが絡むと()ういった立て籠もりに有益な情報とかは、大抵規制されるものなのだよ。他にも規制された情報が()るが其処(そこ)ら辺は追い追い教えて()く積もりだ」


 と、リーファ様の言である。


「えっ! じゃあ植物とリーシャ様かマギーさんを潜泳機に乗せて()けば、空気圧縮貯蔵関連の設備は要らなかったの!」


「いいえ、チェロル様、「ヒッ!」……必ずしも植物に適性が()るものが、潜泳機に搭乗する訳ではありませんわ。ですから()の設備は十分必要なものなのですよ」


「――ところで、()の植物を植えている大量の土は何処(どこ)から持って()たの?――」


 リーシャはマギーが隣に居ることで、つい素朴な疑問を気軽に()いて仕舞(しま)うのである。

 だが、応えた人物はマギーでは無い様だ。


「――リーシャ様、()れは私が用意したのですわよ。私とティロットでできることが粗方終わって仕舞(しま)いまして、リーシャ様もチェロルも手が離せそうに無い感じでしたので、()(まま)休憩室の方へにゲホッオホン……行きましたのですわ。()うしたら丁度(ちょうど)良い(ところ)に来て(いただ)きましたとマギーさんに()われて、植物の植え付け作業を手伝うことに()った訳ですのよ。あら、安心して下さいませ。リーシャ様の分はちゃんと残って()りますわよ。此処(ここ)以外にも全ての場所に花や植物らを植えて行かねば()りませんのよ。()れは昔からリーシャ様と私の領分でしたものね――」


「――いえ、別に不服が()った訳では……――」


 ベイミィに()()われて反論したものの顔は綻び若気(にやけ)仕舞(しま)うリーシャなのである。



---

修正記録 2017-07-01 07:19


句読点を追加


()の機微を知り得たのです → ()些細(ささい)な機微を知り得ただけなのです


「 チェロルは自分の名が出た事で、はらはらとし(なが)ら気をもみ慌てて()るが、周りは其方(そちら)に関心が無い様だ。」


「 アリア殿下に進められ皆一様にお茶を飲み始め、少し緊張した雰囲気が全体的に和らいだ様に見える。」


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