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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
141/345

122とんと忘れて

前回の続きから少し被って始まります。

「チィバチィバ!」

「えっ? うわわ、(なに)? (なん)なの?」

「ヒャッ! リーシャ様、動かれると盾に()らないんだよ!」

「――リーシャさん、チェロルさん大丈夫でしようか?――」


 少しくぐもった(どよめ)く声が()こえて()る。

 尾鰭(おびれ)の付け根下と言うより腹から尾柄(びへい)に掛けての斜めに()り上がった部分、()の少し右側に()れなりに大きい穴が空いて()るのだ。


 リーファ様は「ぽん」と手を叩き何やら思い出した様子で語り出したのである。


()()う、先程、アリア殿下に拝見させて(いただ)いた図面は、此処(ここ)の加工取付け図が載って()りましたのですが……確か目的が加工後の鍍金(めっき)や塗膜の剥がれを、いえ僭越(せんえつ)でありました。お忘れ置き願います」


 ()うは()うものの()の前に(こぼ)した台詞は、多少は違えどアリア殿下の(げん)であるのは間違いないのだ。ばつが悪い(ところ)では()るけれど()れよりも中の状態を確かめるのが、()()るべき事だろう。


「リーシャ様、チェロル様、無事で()りますでしょうか?」


「――え、あ、はい、アリア殿下、此方(こちら)は無事で御座(ござ)います。驚きは(いた)しましたが、穴を開けた後に【水】の粒系因子で穴と外の状態を確認して()りましたので、()()り水の膜を張って(かぶ)らずに済みました。チェロルも私が盾に()る位置に()りましたから問題御座(ござ)いませんでした――」


()うでしたか。無事で何よりです。私も安心(いた)しましたわ。今回の事なのですが「――ヒッ!――」……」


 チェロルは感が良い。過去の恐ろしい記憶が呼び覚まされる糸口・仔細(しさい)に気付いたのだろう。()の意を()んでなのかリーシャが間髪(かんはつ)を容れず話し出すのである。


「――()れなのですがアリア殿下、具申させて(いただ)いても(よろ)しいでしょうか?――」


「ええ、何でしょうか?」


「――実は(わたくし)つい先程にハンナ様より、アリア殿下が()の潜泳機の外壁を塗装遊ばされていらせられると、伺った(ばか)りなので御座(ござ)います。()の事は丁度(ちょうど)周りに騎士様方がいらっしゃいましたから、間違いない事を確証(いただ)けると存じて()ります――」


 実際の(ところ)つい先程と言うのは当て()まらないのかも知れないが、()(ばか)りは本人の感覚でしか無いので、結局の(ところ)は言い様次第なのだろう。


「――そして、(わたくし)めは外で塗装中にも(かかわ)らず、()の事をとんと忘れて外へ通ずる穴を開けて仕舞(しま)ったが(ため)の間抜けな事故で御座(ござ)います。()しアリア殿下が(わたくし)めの事で御気に病まれていらせられるとあれば、とんでもない事と恐縮の至りで御座(ござ)います。どうか御気に()されぬよう(いただ)けたら恐悦に存じます――」


 リーシャは(また)例の(ごと)く、儀式めいた所作で謝られては(かな)わないと、早々に全て自分の失敗だと結論付けた訳である。


「リーシャ様の心遣い痛み入ります。予定では2基の推進機関を据え付けるのですから、確か()の隣にもう一つと腹鰭(はらびれ)の手前に一回り小さな穴を左右3つずつ穴を開けるのですわね」


「――はい、(おお)せの通りで御座(ござ)います――」


「では、()れが終わりましたら(また)連絡して(もら)えますでしょうか?」


「――(かしこ)まりました――」


--


 (さて)、厳重で丁寧な梱包(こんぽう)の中身とは水推進機関でも遠隔義腕の絡繰りでも無い様である。

 ()れは今迄(いままで)ミーア様、イザベラ様、ラクス様の3人が手分けしてえっちらおっちら潜泳機の中へと運んで()た訳なのだが、先程(ようや)く全て運び終え()の一つの梱包(こんぽう)唯今(ただいま)(ほど)いて()(ところ)なのだ。

 うん、()れは駄目な奴だね。()れは丁寧で豪華な装飾が(ほどこ)された絢爛(けんらん)な椅子であった。()れを全ての座席と交換する積もりなのだろう。

 そんな事をされたら座り(にく)いこと()の上ない無いのだが、()れ以上に嫌な予感がするのである。

 ベイミィは操舵(そうだ)席を外しに来たラクス様を捕まえて()いて()る事にした様である。


「ラクス様、()の様な豪華な座席を今の操舵(そうだ)席と取り替える事には意味が()るのですか?」


「ええ、今回も含めて()れから皇族の御方が同乗()される機会が増えるだろうと()う予想もありまして、私たちにも落ち度が無い様にと文官の方々が手配して()れましたのよ。(なん)でも以前に慌てて用意した経緯が()ったとかで、信頼の挽回(ばんかい)も含めての事らしいですわね。ああ、地底湖の事は予想外でしたから、皇族の方を乗せる機会は()れ程多くないと思いますわよ。まあ、(ただ)、タリス皇帝陛下は間違いなくいらせられて御乗り遊ばされるでしょうね」


 ベイミィもティロットも血の気が引いて()くのであった。



---

修正記録 2017-06-28 08:26


サブタイトル変更 122謝らせる訳にはいかない → 122とんと忘れて


一つを(ほど)いて()く。 → 一つの梱包(こんぽう)唯今(ただいま)(ほど)いて()(ところ)なのだ。


皇族の方が → 皇族の御方が


句読点の追加


()られる → 遊ばされる

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