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アリアは知らない  作者: taru
三章
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02戦の調べ

 ゼルク・アワーディアル中将は驚いていた。

 最初の報告では何やら光を放つ透明な女騎士風の集団50体ほどが、小さいの1体補佐しながら鬼口の涎を降りてきたと。ならば魔落の変種か何かの類が定住地を求めて降りてきたではと判断していた。

 ただ、どちらにせよ排除。そして抜かりあってはならないと戦力分析に森に住む大蜥蜴(とかげ)を追い立てる指示を出した。ところが先遣隊が行動を開始したなと認識して間もなくの大演奏である。

 理解が追いつかない。



---


 アリアは爽快な大演奏の反響を精査し分析することで広範囲にわたる骨兵たちの居場所を特定することができた。そして確かにもの凄い数がそこらかしこに配置されている。そう分散して配置されているのだ。溶岩流や河向こうですら、いや半数が本当にどうやって渡ったか知らぬが部隊単位で8箇所に配置されていた。


『本陣合わせて16箇所ですか。本来なら(ほとん)どが”旅立ちの園”へ身罷られる(はず)が、魔窟に(くさび)を打たれ此処に残っているのですね。』


 そして全体の数がわかれば相手の御業予想が立つ。ルトアニア研究所の出した統計を思い出しながら相手の警戒すべき戦力を推測する。

【空間把握】7、【遠見】500、【六感】20、【防御】50、【守護】60、【結界】60、【遠話】100、【念話】730、【念動】10、【慧眼】20、【看破】20、【強骨】1000、【強化付与】490、言魂4

、【気配察知】110、【幻惑】40、【幻眼】7、【気隠】12、【魔見】12、【生感】24

 勿論、あくまでも予想であって可能性の話だ。


『【慧眼】持ちは殆ど聖堂に招かれているはずだから、持っているとすれば貴族ぐらいよね。【言魂】は居ても声が出ないと、たぶん使えないわよ。

 結界系と【強骨】と【強化付与】が合わさった時の堅さが気になるわね。

 あと、察知・感知系の御業で探られると私が潜んでいる事が万が一でもばれる可能性ね。

 ああ、戦争だもんね希少な【瞬間転移】でも参加しているかも。これで溶岩の河を渡ったかな』


 本陣までの(あいだ)に4つ2千ほどの集団を形成した部隊がいる。真面(まとも)に対峙する意味は無い、なれば間隙(かんげき)を縫って大将を落としてくれようと奮い立ち作戦を立てる。

 流石に悠長に進めば此方(こちら)が押し潰されかねない。負けはしないまでも幾つかの情報を渡してしまうのは頂けないのだから。




 もしアリアに体があれば震えていただろう。涙を流していただろう。縦穴に入ったときからアリアは無理を自分に強いていた。必死に思考を埋めていた。時には歌や踊りを、時には光幻を大量に操った。自分の体の所に行く為に、取り戻さんが為に。

 怖かったのだ。深まる魔気や未知の場所、待ち受けているだろう万の兵たち、それが現実に突き付けられたのだから。



---


『中将閣下、2柱と4柱の偵察部隊から報告です。光点はメルバッサ隊の中央を突破し、ハイコリー、ラッデカイツ隊が布陣する間を移動中との事。狙いは本陣もしくは背後の魔窟との推測です』


『トリストン隊を遅延に、ラッデカイツ隊を挟撃、ハイコリー隊は後方支援を。メルバッサ隊は立て直して後方警戒に当たれ』


 偶然か、それとも位置を把握する(すべ)があるのか。演奏は何の為だ。報告では生命感知は出来なかった。とあれば亡者、亡霊の類いなのであろう。


『攻撃は【剣技】、【武技】を持つもの中心に当てそれを支援。【光】【火】【雷】に骨言霊の重奏支援を行い後方から包囲制圧を掛けろ』


 言霊は共通認識の言葉に力が作用すると言われていた。そしてゼルク・アワーディアル中将は骨音の間隔や部位変化による音程を言霊に合わせ体系付けをした。これを共通認識とし、全兵に意識付けをさせたのだ。後は念話による音出しを合わせれば重奏支援が可能となる。

 全人類の共通認識である言霊に比べれば微力な支援であるが、数百単位の重奏であれば十分な強化となった。


---


『兵たちが此方(こちら)の移動に合わせて動きますのね。

 【念話】【遠話】【遠見】の連携でしたらこれ以上避けても通してはもらえないのでしょう。

 そう言えば監視系の御業の気配を感じることができるのでしたら、【念話】や【遠話】の繋がりも感じられるのでしょうか?』


 アリアは演奏の反響から感じ取れる立体的世界の輪郭に様々な気の移動情報を加える。そして繋がりを伸ばす気の有様から兵に伝達され動きが調整されている様子を捉えることができた。後は逆に辿(たど)ればと考えたとき、内容も解読できないのかなと。そして監視の気も阻害すれば此方が何をしているか見られないのではと思い至る。


『阻害は最初から気づいていましたけれど、戦闘直前に遮断する方が効果的だと今まで使いませんでしたのよ』


 と、たぶん自分に言い訳しているらしき思考を挟みつつ、すべて試してみようと行動を開始する。


 アリアは先ず【大気】の掌握圏に侵入する薄く細い気の類いらしき流れを遮断した。これで【遠見】や【暗視】それ以外でも察知・感知系はすべて遮断できたはずと予想する。

 次に【念話】の流れを辿ると幾つかの分散中継地点を経て【遠話】を行う起点を見つけたが、頻繁に繋がる端点の存在に気づいた。指揮官の可能性が高い。

 この繋がりを解読できないかと意識を集中する。アリアは【念話】を持っているのだから気の流れを感じれば声が届かない距離であれ聞き取ることは可能であった。


--

『トリストン大佐!偵察部隊が光点を見失ったと報告です』

『指示そのまま、引き続き強化兵の前方へ(かず)読みに合わせ各種御業の飽和攻撃を行う。

 その後、飽和を維持し10数えてからゆっくりと前方に進行する。

 む、前方を【遠見】で見通せないぞ、偵察部隊に何か変化が無いか……』


「ガシュッ」



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修正記録 2017-02-23 1:58



幾つかの改行追加


幾つかのルビ追加


「爽快な」追加


「『本陣合わせて16箇所ですか。本来なら(ほとん)どが”旅立ちの園”へ身罷られる(はず)が、魔窟に(くさび)を打たれ此処に残っているのですね。』」追加


観測隊 → 偵察部隊

観測部隊 → 偵察部隊


語尾修正


「ゼルク・アワーディアル」追加

---



修正記録 2017-02-15 12:36

---


『中将閣下、2柱と3柱に観測隊からの報告です。

『中将閣下、2柱と4柱の観測隊から報告です。

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立体的世界の輪郭に様々な気の動きを加える。

立体的世界の輪郭に様々な気の移動情報を加える。

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