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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
136/345

117緩んだ?引き攣る?

 巨大貝の成れの果て包み込んだ氷(ごと)、ご機嫌さんでバルパルがぺろぺろと舐め(ふけ)る頃、所変わって作業場では誰ぞに褒められたのかティロットが、にへらとだらしなく顔を緩めてる。


「ええ、ティロット様が行使()される【酒】の御業(みわざ)は多様性の観点からも、重要な位置を占めて()ると証明した事に()りますわ」


「アリア殿下、閑談の(いとま)を遮って申し訳()りません。(ただ)今、上の来賓室にて食事の準備を整えさせて()りますので、()れから施設に向かえば丁度(ちょうど)(よろ)しい頃合いかと存じます」


 アリア殿下の快談を中断したのはリーファ様である。まあ、()の様な事をできるのは()の方とハンナ様ぐらであろう。


「ええ、()れは構わないのですが、リーシャ様やマギーさんを待たなくて(よろ)しいのですか?」


「はい、問題()りません。此方(こちら)に立ち寄ったのは()の子たちを待つ(ため)では無く、遠隔気力通話器にて上の施設が安全で()るかを確かめる(ため)御座(ござ)います。()れに()れから上へ通じる石祠(せきし)の階段(まで)向かえば、()えるかも知れませんし一応は階段下にマリオンとチェロルを残して()きますから御安心召されよ」


()うなのですか、()れでしたら組んで(もら)いました段取り通りに励行(いた)しましょう。腹ぺこさんも居る事ですしね」


()れではアリア殿下、私は小隊の指揮に戻らさせて(いただ)きます」


「ええ、有意義な一時でしたわ。ハンナ様」


此方(こちら)こそ、勿体無(もったいな)き御言葉、恐悦に存じます」


 勿論(もちろん)、アリア殿下の蘊蓄(うんちく)()いて喜ぶのはハンナ様ぐらいである。そして、(また)()の内容を自分なりの考えに昇華して何処(どこ)かで(もっと)もらしく伝え話すのだろう。


「――ティロット様、褒められて顔が緩む様では騎士なんて()()だですわよ!――」

「――あうっ――」


「……貴女(あなた)()れ以前の問題ですよ。リルミール」


「い、何時(いつ)の間に来られたのですか? ハンナ様」


「食事の(ため)、上へ一旦戻りますから護衛の配置に()くようにと、声を掛けに来たのですよ。()れ以前に叱って()(はず)なのですが、何故(なぜ)貴女(あなた)の顔はでれっと緩むのですか?」


--


 暗闇の地底湖を西と東に(とも)された懐中気灯の明かりが、ぱっぱとちらついて()る。どうやらリーシャとマギーが戻って()た様だ。


「あら、マギー、石祠(せきし)の階段が()る下辺りに懐中気灯の明かりが見えるよ」


()うですね。昼餉(ひるげ)の刻を過ぎて()りましたから、アリア殿下は先に食事に向かわれたのかも知れません。丁度(ちょうど)、懐中気灯の点滅で簡易連絡を知らせて()()りますね。本営、先行、ですか予想で大体合ってそうですね」


「私たちは上がったら()ず区画街の巡回をしに行きませんとね。今朝も中途半端にしか回れて()ませんから、余計にきっちり回りたく()りますよ」


「確かに()うですがアリア殿下が(また)此処(ここ)、地底湖へ来ることを望まれるでしょから、ゆっくりとは回れないかも知れません」


「はい、私も()の意見に賛成です。()(かく)マリオン先生に相談して大急ぎで巡回しないとですね。あっ、丁度(ちょうど)待って()()れたのがマリオン先生だよ!」


--


 地上に辿(たど)り着いて早々にリーシャはリーファ様に了承を得て、小隊の(みな)とマリオン先生付き添いの(もと)、街へと巡回に繰り出したのである。


「リーシャ様、彼処(あそこ)に見えるのは……」


「はい、マギー私も確認できて()ます。何故、()の方たちは此処(ここ)()るのでしょうね」


 貴族街で徒党を組んで練り歩いて良いのは、基本的に第二騎士団の担当小隊だけである。関係ない騎士隊が日頃から練り歩いて()たら、不審なものたちとの判別が付け(づら)()して徒党を組んで屋敷を襲われでもしたら一大事である。

 (ただ)、今、彼処(あそこ)に居るものたちは一応は此処(ここ)の担当騎士でもあるのだ。(なに)()の1人は()の区画街を含めて担当する中隊長クラウト・デンバンサーなのである。


()れはクラウト中隊長殿、何故(なぜ)此方(こちら)の区画街に来られたのですか?」


「ああ、リーシャ小隊長、其方(そちら)が目下の(ところ)、非常事態で対応に追われ(なが)らも時間を割いて警戒任務中だと理解して()る。一応情報として伝えて()くと、宮殿より()の区画で近衛騎士団に()る演習が行われて()ると連絡が入って()る。()の事から私の担当して()る他4区画には、不審なものたちが偵察に入り込まないよう、巡回を強化する(むね)通達して()るのだ。それで、肝心の此処(ここ)で警戒が(おろそ)かに()らないようにと私が直接巡回をしに来て()た訳だが。勿論(もちろん)、貴官の派出所には近寄りはして()ないぞ。()の様な物騒極まりない場所に近寄る事など()(はず)が無い」




---

修正記録 2017-06-23 07:42


句読点を追加


ルビを追加


区画街を担当する → 区画街を含めて担当する


()らないようと私が直接巡回を → ()らないようにと私が直接巡回を


「対応に追われ(なが)らも時間を割いて」追加

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