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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
133/345

114お酒は駄目です

 ティロットは()れを見遣(みや)りて、むうっとして仕舞(しま)い。不本意だと言わん(ばか)りの表情を見せる。

 ハンナ様とマギーさんが引き揚げた()の物体は、どうやら6mは()りそうな巨大な貝の魔落である様だが、ティロットが狙って()たものは此奴(こやつ)で無く魚の魔落と()う事なのだろう。


「貝であれば敵意を出す直前(まで)、泥に埋もれて()た可能性も()りますわね。水中を御業(みわざ)で探索して()いたリーファ様もリーシャ様もチェロル様も、そして狙われたティロットの傍らに居たエミリア(まで)もが気付けなかったのですから」


 引き揚げられた巨大な貝を眺めつつ、アリア殿下は(もっと)もらしく所見を述べるのである。(ただ)、少し(ばか)り角が立つのも確かで、リーファ様が捕捉する形で(まと)め上げるのは流石と言うべきなのだろう。


()れを言われると立つ瀬が無いのですが、此方(こちら)の索敵に掛からないのは、矢張(やは)り厄介ですね。早めに無事対処できたと喜ぶべきなのでしょう」


「ええ、勿論(もちろん)です。此方(こちら)も少々驚いて()るのですわ。(わざ)と誘い出したもののまさか御業(みわざ)で確認済みの領域から現れたのですから……まあ、泥の下と考えれば領域外なのですが、()ういった事も()ると認識できた事が大きいかと思いますわ」


「え? 一寸(ちょっと)御待ち(いただ)けますか、アリア殿下。今誘い出したと(おっしゃ)られましたか?」


「え! ええ、エミリアも(わざ)(おとり)として動く事で、警護を確かとする大役と称して()りましたよね? 魚を誘う動きが()ると()きまして、()れを習いエミリアが実践する運びと相成(あいな)り、(これ)を提案しようとした(ところ)で、此度(こたび)の騒動と()ったのですわ」


御意(ぎょい)御座(ござ)います」


()まり提案前に行った一寸(ちょっと)した実演で、今回の強襲騒動に発展したと()う事ですね」


「まあ、()(てい)に言えば()の通りですわね」


()る程……(しか)()れでは効果が()りすぎて迂闊(うかつ)に使えませんですね。ですが準備さえ(しっか)り整って()れば、()れを使って以前より安定的に事が運べるのは確かです」


--


 巨大な貝の魔落は()の姿を水上に(さら)け出したものの、ぴくりとも動かずに(ただ)貝殻の隙間からぐたりとだらしなく乳白色の舌の様な、触手なのか口なのか(わか)らないものが垂れ下がって()る。


「――ハンナ様、()の魔落は純度の高い酒の原料を大量に吸い込んだ(ため)、動けなく()って()るそうです。酒精が抜ければ(また)動き出すかも知れませんから締めて()きましょうか?――」


「――ええ、()うですね。急所が何処(どこ)(わか)りますか?――」


「――はい、()の形であれば何度か調理した経験が()りますから、大体ですが予測できると思います――」


「――調理ですか……――」



「ティロット、浮かない顔をして如何(どう)かしたの?」


 酒精を帯びた魔落へと(かじ)()きに行かないよう、(いま)だバルパルを抱え抑えて()るリーシャなのだが、そんな片手間でも十分な状態であれば他にも気を回せるみたいである。


「あ、リーシャ様! ……頑張ってバルパルの食事を用意しようとしたのですが、()の様な腑甲斐無(ふがいな)い結果と()って仕舞(しま)って!」


否否(いやいや)、十分だと思うよ。()()ってバルパルに制止を示して()かないと、自ら止めを刺しに向かい兼ねない状態だから、餌として認識して()(はず)だよ」


「ぴゃあ!」


「そ、()うかな!」


「うん、獲物を前にした目だよね。()れ。と言うかチェロル、何で貴女(あなた)(まで)抱きついて()るの? 私は制止して()るだけだけど貴女(あなた)みたいに直接抱きついたらびしょ()れだよ」


「リーシャ様が抱えて()る様に見えたから我慢できなく()って!」


「取り()えず風邪を引くから一旦()めて乾かし()さい」


「うん!」


「バルパルもう少し水に浸からせて()けば酒精も薄まると思うから……ああ、()しかしてティロット、()の魔落に入った酒精を消せる?」


「生命活動が停止して()れば気の防壁も消えてる(はず)であるから、()って見ましょう!」


「マギー! (さっき)ちらっと()こえたのだけど、()の貝を締めるの終わったかな?」


「――はい、リーシャ様、先程剣を刺しましたから(じき)に活動を停止するでしょう――」


(わか)った。今からティロットが魔落から酒精を抜いて()れるのだけど、特に問題は無いよね?」


「――はい、御業(みわざ)で酒精が抜けるなら、完全に活動を停止した事の確認もできるので問題はありませんですよ――」


「ん、ではティロット、早速()って()て」


「いざ! [酒よ()から()ね]」


如何(どう)かな?」


「成功(いた)しました!」


「あっ……」


「――え? 何かしら――」

「――ハンナ様、如何(どう)やらバルパルが触手に噛み付いて、引っ張って()る様で御座(ござ)います。多分、神官長へ見せて食べる事に許可を(もら)いたいのだと存じます――」


「ハンナ様、マギー御免(ごめん)なさい。()ぐに軽岩を(つく)って巨大貝の下に敷くのでお待ちを!」



---

修正記録 2017-06-20 06:44


運びと()り、 → 運びと相成(あいな)り、


幾つかのルビを追加

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