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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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113昼餉は後です

 潜泳機の試乗が終わるや否や、アリア殿下は皆さん御疲れでしょうと昼餉(ひるげ)を勧めるのだが、私はバルパルさんのお食事を用意せねば()りませんとにこにこ顔で(のたまい)いけるに、(みな)は口々に否否(いやいや)そんな事はできませぬと四の五の()って御止め申し上げ、結局の(ところ)昼餉(ひるげ)はバルパルの狩りが終わった後と()ったのである。


「リルミール様、ご気分が優れぬ様ですが大丈夫ですか?」


「――ぶふっ――」


()れはイザベラ様、ええ、大丈夫です。ご心配をお掛け(いた)して仕舞(しま)った様で痛み入ります」


「――ベイミィ様、失礼ですわよ。(しか)()の様な事もあろうかと折角色々な画策を企てたのに()れ一つとして実りませんでしたわ――」


「――アリア殿下、()れは詰めの段階に至って御身(おんみ)の御希望を優先して仕舞(しま)ったからではないかと存じますわよ――」


「イゼベラ様、ご心配は無用です。リルミールは単にお腹を空かせて()るだけですよ」


「――くっ――」

「――我慢の時ですわ!――」


「ハンナ様、()れを()わないで下さいませ!」

「知りません」


 現在、バルパルを先頭に南へと向かいつつある一行は、全員が飛翔(ひしょう)板へと乗り地底湖を滑走して()る訳だが、基本、アリア殿下の護衛として周りを固めることが任務である。

 バルパルの後ろにはリーファ様とマギー続いてチェロルとリーシャが並んでおり、一行の最後尾はハンナ様率いる小隊が担って()るのだ。

 そして中央にアリア殿下と()の近衛たち(つい)でにベイミィとティロットの2人が右の傍らに護衛として()る訳である。()まり貴女(あなた)は危ないからと中央寄りの配置を担当して()たリルミールと殿下の後ろを護衛して()たイザベラ様は自然と会話できる距離に位置して()たのだ。

 ああ、勿論(もちろん)、マリオンは引続き遠隔気力通話器の前で留守番を()って(もら)って()るから、此処(ここ)には居ないのである。

 (ちな)みにベイミィとティロットは例の(ごと)く2人一組でと()う意味合いも()るが、()の2人は余り粒系因子を活用して()ない(ため)()れが阻害され(やす)いアリア殿下の周りに居ても影響が少ないだろうとの配置なのだ。所謂(いわゆる)(ただ)弾除(たまよ)けである。



()う言えばティロット、先程から一体何を()されて()るのですか?」


 ベイミィは先程から不審な動きをするティロットに、此方(こちら)は我慢の限界を越えて()ると()う訳で()いて()た様である。


「以前にマリオン先生に釣りを教えて(いただ)いたでしょ! ()の時に使った疑似餌(ぎじえ)の金属板が何となく飛翔(ひしょう)板に似て()ると思って!」


 ()()うと小波を作って(わざ)と水面を小刻みに跳ねるのである。


一寸(ちょっと)待ちなさい! ティロット!」


「ベイミィ様、(よろ)しいのですよ」


 其処(そこ)には満面の笑みを(たた)えたアリア殿下がいらせられたのである。


「え、でも護衛の任に()いて()るものが危険を呼び寄せるとは騎士として()るまじき行いでは?」


「いえ、何処(どこ)へ目指すのか何時(いつ)来るのか(わか)らない魔落(まらく)を警戒するよりも、ああ()って自らを(おとり)(おび)き寄せて(もら)った方が(はる)かに護衛し(やす)いのですわよ。エミリア()うですわね?」


「はい、()の通りです。できれば()の大役を私めに譲って(いただ)けないでしょうか? ()れは騎士の誉れでありますから」


「騎士の誉!」


 誉と()いた途端にティロットは目がきらきらと憧憬(しょうけい)の眼差しと()ったのである。


(いた)し方御座(ござ)いません! 騎士たるもの主の誉を求めるのは道理、()れがお役に立てると()うのであれば喜んでお譲り(いた)しましょう!」


 エミリア様は伊達にアリア殿下の傍らに居た訳で無いのである。ちゃんと()の周囲に居たものたちの扱い方も熟知して()るのだ。

 ティロットが誘引行動を止めエミリア様へと交代しようとした正に()の時である。真下からの敵意が発せられたのだ。


「姫様、直ちに飛翔(ひしょう)を!」


 ティロットは落ち着いて言霊を唱えるだけである。


「[酒よ()()れ]」


 エミリア様もミーア様もイザベラ様もメアリーさんもベイミィすらも、懐に仕舞ってあった()()れ専用の飛礫(つぶて)を手に持ち構え待つのである。

 ハンナ様、率いる小隊やリーファ様たち、そしてバルパルも慌てて()って()るが、様子がおかしい。本来、水中の敵は扱い(づら)いもので、水深の深い所に(ひそ)まれては攻撃の()り様が難しいものである。

 だからこそ皆は飛礫(つぶて)を持って構えても近付いて()(まで)動けなかったのである。


()()う、此処(ここ)は学園では無いので、ティロット様は(わたくし)の課した制約に関係無く、()の危険な【酒】の御業(みわざ)を行使する事ができますのよね」


「バルパル今潜ったら駄目だよ。絶対!」


「ぴゃあ」


 リーシャが慌ててバルパルを抱える様に後ろから抑え込んだので、犠牲者は()れ以上増えないだろう。

 そして、エミリア様は硝子(がらす)板を(つく)り出して、下の様子を探り始めたのである。


一寸(ちょっと)深くて(わか)(づら)いのですが、何か石の様なものから白色の(くだ)? が此方(こちら)に向かって伸びて()()()たいです。今は力が抜けて漂って()る感じでしょうか。()れは……貝ですか?」


「危険ですが放って()くのも不味いですし引き揚げましょうか?」


「ええ、マギーさん、()(いた)しましょう。私も手伝います」


 そんな会話の(のち)にハンナ様とマギーさんは麻らしきもので()った紐を垂らして()くのであった。



---

修正記録 2017-06-19 08:28


ベイミィとティロットが右の傍らに居る訳である。

ベイミィとティロットの2人が右の傍らに護衛として()る訳である。


幾つかのルビを追加


周囲に居るものたち → 周囲に居たものたち


抑え込んだのである。 → 抑え込んだので、犠牲者は()れ以上増えないだろう。


放って()くも不味い → 放って()くのも不味い

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