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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
130/345

111詩人です?

 バルパルは顔を水中に突っ込み(なが)ら泳いで()る。()の視線の先には10m程の水深に(もぐ)った潜泳機が進み()くのだが、もう()背鰭(せびれ)らしき頂上には()の悩ましき筒は無い。

 そんな寂し()な背中を見せる(かわうそ)の数m程先行して滑走するものたち、ティロットとリルミールの2人組は、潜泳機が(もぐ)った後では四方警戒の意味も無いと(まと)められたのである。

 勿論(もちろん)、ミーア様とマギーは更に先を()き、左右に別れ単独で警戒任務に当たってる。単独でも安心て任せられる2人と、不安だから(まと)められる2人の違いなのである。

 水を切ってむくりと身を起こしたバルパルは、唯唯(ただただ)声を発するのみである。


「ぴゃあぁぁ……」


「かわうそや ほだしにみちた そばすだき」


(なに)詩人めいた事()ってるのよ。(ただ)でさえ少し(ばか)り私語が多かった所為(せい)か、ハンナ様に睨まれて()る様だし十分に留意して()いてよね。けれど(なん)か変なのよね! (ほだし)? 人と関わり自由の(かせ)()ったって事かな。それとも理不尽な束縛を受けた? それと傍らで(うめ)きを()くなのかな。苦悩から出る声や獣の声だっけ? あれ、集めるって意味だっけ……(ああ)分かんない! 何方(どっち)にしても季節を表す言葉が無くない? 3点ね」


「あぅ!」


否否(いやいや)、そんな心外なと言わん(ばか)りの顔をされても困るのだよ。点数を付けてるだけでも感謝して欲しいものだね。うん」


--


「ぶふっ」


「……ラクス様、如何(どう)(いた)しましたか?」


 中央上部の操舵(そうだ)席には再びラクス様とリーシャが並んで座って()た。アリア殿下は潜望鏡の確認という目的を果たし、(つい)でに背鰭(せびれ)の様子も(うかが)えたので満足して前方部の部屋へ戻って()かれたのである。

 何でも()だベイミィの実況解説が()るかも知れないから()れを()きに行くそうだ。


「ええ、まあ、水中音声蒐集(しゅうしゅう)機の着想を真似(まね)まして、【水晶】と【音感】2つの御業を使って音を拾えませんかと色々試して()たのですよ。結果としては窓硝子(がらす)に当たった音を私へと運ぶ気力の線を構築して()ることで、上手く()けましたのですわ。()れで試しにと丁度(ちょうど)上で会話されて()たティロットとリルミール様の話し声を()いて()ましたら、来しなの(ごと)くリルミール様は(なに)にも(はばか)れぬ素晴らしい胆力で語られるものですから、つい耐えきれなく()つて仕舞(しま)いまして」


()の、……来しなであれば私も含まれてませんか?」


「え、ええ、まあ、残念ですけどリーシャ、貴女(あなた)1人では面白くありませんわよ。だけど落ち込まないでね。人には向き不向きが()って(たまたま)リーシャには面白の才能が無かっただけで、他にも沢山リーシャに合ったものは()(はず)なのですからね」


「いえ、()の面白の才能とやらは特に要りませんですよ?」


 ラクス様は一瞬信じられないものを見たかの様な表情を見せたが、はたと気付きに至りうんうん勝手に(うなず)くのであった。

 勿論(もちろん)、リーシャは強がりを言って()るが、本当は傷付き()れを(おくび)にも出さないよう隠して()るのだと。


「いえ、本当に要りませんからね? ()れと()の様に板状のものを音の傍受として使えるのなら、飛翔板も同じ様に使えるのではないでしょうか?」


「え、ええ、……()うかも知れないですわね。飛翔(ひしょう)板程の大きさがあれば水中だけでなく空中の音情報も(つぶさ)に拾える(はず)ですわね。ええ、()の着想(いただ)きました。早速一寸(ちょっと)だけの規模で試して()ますね」


 ()う言ってラクス様は()(さま)目を(つむ)り心象を強く思い浮かべる。別に飛翔(ひしょう)板の様に六角多孔(ろっかくたこう)である必要は無いのだが、硝子(がらす)は既に試した(ばか)りだし実際に飛翔(ひしょう)板で使えなければ意味がない。

 時をゆっくり掛け十分に心象が整ったら、後は言霊を唱えるだけである。


「[炭よ()()れ]」


 ()れはルトアニアで新しく開発された炭と同じ炭素素材だが(はる)かに固く金剛石に近かい程のものだった。違いと言えば黒いことだろうか。


「では早速試して()ますわね」


「――流石はリルミール様ですわ。(つぼ)を押さえていらっしゃいます――」

「――ええ、まさかティロットに対抗して歌を詠み始めるとは、(しか)も……ぶふっ――」


「……(なん)て事でしょう。()れは仕舞(しま)ったことですわ! ()き逃して仕舞(しま)いました!」



---

修正記録 2017-06-17 06:55


ルビを追加


「、貴女(あなた)」追加


()るのですからね → ()(はず)なのですからね


---

修正記録 2017-06-17 06:28


()ってのよ。 → ()ってるのよ。


(しか)(なん)か変なの(ほだし)? → けれど(なん)か変なのよね! (ほだし)


「2つの御業」追加


私へと運ぶ線を → 私へと運ぶ気力の線を


上で丁度(ちょうど) → 丁度(ちょうど)上で


(ごと)くリルミール様の → (ごと)くリルミール様は


ルビを追加


「、然も……ぶふっ」追加

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