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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
128/345

109あの

 ()れは長きに(わた)る戦いであった。

 多くの気が失われ、多くの陽動が費やされた。


 (われ)思う故に(われ)()り。(われ)望む故に(われ)()す。

 (われ)興味を示し故に其処(そこ)へ至らん。

 (なんじ)何故(なにゆえ)其処(そこ)を阻まんとす。


 バルパルとマギーは対峙(たいじ)する。

 其処(そこ)には一本の筒が()り、水面(みなも)からにょっきり顔を出して()る。


「ぴゃあぁ」


()く分かりませんが、お通しできませんよ?」


 一本の筒こと潜望鏡を後ろに隠し、マギーは()()いつつ少し(ばか)り首を(かし)げる。

 一本の筒は最初に右そして左と回転した(のち)は、前に進むだけで先程(まで)(ちっ)とも動かなかったのだが、再び動き出し今度は(まる)でバルパルたちを見遣(みや)る様に付け狙うのだ。

 軽快に頭を上下左右に振り始め一定の調子を見せた(あと)、右へと動いて()(はず)の拍子で怪しき影を砂糖の粒で(つく)り出し、影武者(よろ)しく立ち代わり、すいと左へ動き()くものの涼しい顔でついとマギーは通せん坊なのである。


「ぴゃあぁ」


()(おっしゃ)られても……」


 ならば水に潜って進めば良いでは無いかと決して思わない。何故(なぜ)ならばマギーの乗る飛翔(ひしょう)板の下側には、実に怪しき一本の根らしきものがゆらゆらと揺れて()るのだ。

 バルパルは野生の勘で触れると危険と判断したのか、潜ろうという素振りは一切見せないのである。


「マギーさん姫様が楽しく御鑑賞()されて()られる様ですよ。羨ましい限りです。本当に」


「喜んで(いただ)(ため)所為(しょい)では無いのですが、楽しんで(いただ)けていらせられるのであれば幸いです……んっ」


「……如何(どう)かされましたか? バルパルも? イザベラ! (ただ)ちに潜泳機を止めなさい」


「――貴女(あなた)たち継続して後方警戒を続けるように、私は前へ()めます――」

「――了解!――」×3


 ハンナ様は現状だと後方よりも前方の守備を固めるべきだと判断したのか、それとも(あれ)が来るのに他がのこのこと出て()る訳がないと高を(くく)ったのか、まあ両方なのだろう。


「狙い澄ましたかのように()って()ましたのね。偶然か、それとも必然か。()(かく)ミーア様、段取り通り進路から外れて()れば動かないようにして下さいまし」


「ええ、ハンナ様、心得て()ります。と言うかマギーさんとバルパルは()だ続けて()るのですか、(しか)も警戒し(なが)らとか()る意味感心させられますね」


「取り()えず、アリア殿下に(おい)ては注目して(いただ)く所は此方(こちら)ではなく彼方(あちら)である事を伝えて(いただ)ければ幸いです」


「あら、イザベラ、アリア殿下に伝えて(もら)えるかしら。()れから前方70m程先を巨大な魔落が通ります。()の後に大きな波が来ると予想されますので、(しっか)りと身近なものに(つか)まって()て下さいと」


「――リルミール、特に貴女(あなた)は今の間だけでもお(しゃべ)りは控えなさい。(よろ)しいかしら?――」

「――了解であります!――」


「――ティロットさんは流石ね。こんな折でも屹然(きつぜん)と立ち振舞う(さま)は……褒められると顔が緩む(よう)では()()だですよ――」


 ティロットの顔がしゅんとして仕舞(しま)ったのだが、()の際どうでも良いだろう。


 ()れは東南東500m程の所から見え始め……とは()うものの見る事ができるのはハンナ様とマギーぐらいなのだが、()れは扨措(さてお)き、暗闇から姿を表したのは()の巨大な魔落である。

 ()の巨体を波と共に西北西を目指し、ゆっくりと近付いて()るのだ。(いや)(あれ)だけ巨大なのだからゆっくりと感じるだけで、実際には()れなりの速さなのだろう。

 矢張(やは)りと言うか以前からと同じ様に、水面に浮かぶ騎士たちは(おろ)か潜泳機すら興味を示さず目の前を過ぎ去って()く。

 そして、今度は大きな波が潜泳機と水面に浮かぶ騎士たちを揺らし通り過ぎて()くのである。


「潜泳機から連絡が()りました。(あれ)固有の発する音を判別できそうで、音は随分前から()こえて()たとの事です」


()れは良い知らせですね。今後共、巨大魔落の行動を把握調査する上で色々と役立ちそうです」


 何事もなく無事に遠慮したい催し物を(こな)したミーア様とハンナ様は、一息()いたものの常に次のことを想定せねば()らないのだ。遠慮したい物事だけに。


--


「アリア殿下、上でも説明されて()りました例の巨大魔落が、前方70m程先を通るそうで御座(ござ)います。此方(こちら)に来る来ないは別としても大波は確実に当たるので、(しっか)りと何処(どこ)かへ(つか)まっていらせられて(いただ)きたいのです」


「あの、アリア殿下、(わたくし)(つか)まって(いただ)いても余り(しっか)りして()りませんかと存じます……」



---

修正記録 2017-06-15 07:11


 修正は一箇所とルビ追加ぐらいしか無かったのですが、折角なので追加しました。

 蛇足になってなければ良いのですが。


幸いです……」 → 幸いです……んっ」


「 バルパルも?」追加


幾つかのルビを追加


「 ティロットの顔がしゅんとして仕舞(しま)ったのだが、()の際どうでも良いだろう。」追加


()れなり速いのだろう。 → ()れなりの速さなのだろう。


「 何事もなく無事に遠慮したい催し物を(こな)したミーア様とハンナ様は、一息()いたものの常に次のことを想定せねば()らないのだ。遠慮したい物事だけに。」追加

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