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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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108其れを見る為に

 潜望鏡の左右に伸びた握り棒、()れを握り持ってアリア殿下はぶら下がる。(いや)、辛うじてではあるものの右足は足置き場へ(しっか)り残して()るし、リーシャも必死に支えて()るのだから、本人の()う通り大丈夫ではあるのかも知れない。

 (そもそも)、潜望鏡は後付なのであるから足置き場や操舵(そうだ)席は()れを(もっ)て想定してはいないのだ。色々と改善すべき点は多いようである。


「皆さん本当(ほんと)大げさね。ラクス(まで)昇って()仕舞(しま)ってますのね」


「取り()えず潜望鏡を回転させて元の位置に戻しますので、アリア殿下は(しっか)りと(つか)まって()(いただ)けますでしょうか?」


「ええ、私は問題ありませんわよ」


 リーシャはラクス様に服をむんずと(つか)まえられ(なが)ら潜望鏡をくるりと回し(もっ)て、アリア殿下の体を操舵(そうだ)席側へと持って()る。


「リーシャ様、助かりましたわ。()の潜望鏡は後ろも見れるように()って()りますのですが、矢張(やは)り後付の所為(せい)()ってか、座席も足場も()の作りには()って()りません様でしたわね」


「恐縮に存じます」


「いえ、責めて()る訳では無いのですわよ。私が送ったものなのですから、本来、()の特性を知って()りまして当然でありますし、(むし)ろリーシャ様が先に試されて仕舞(しま)い、()の様な事に()らないで良かったと思って()りますわ」


「恐悦に存じます。成人男性の大きさでも邪魔に()らないようにと、ゆとりを(もっ)て空けて取付けて()りましたが、足元が(おろそ)かでは意味が()りませんでした。()れを踏まえ今後に()かしたい所存です」


「経験を(もっ)て糧と()す。(わざ)とらしい罠を張って経験させる風習は好ましくありませんが、偶発に起きた経験を()かす心得は好感が持てますわ。慎んで励みなさいませ」


(かしこ)まりました」


()れは扨措(さてお)き、後ろは如何(どう)()って見遣(みや)りましょうか? 今直(います)ぐにと改造する訳にも行きませんわよね」


「はい、()れなら()の座席は横の安全金具を引くと、前後に動かして位置を変える事ができますので、一寸(ちょっと)狭く()りますが足置き場に立って後ろを見れば(よろ)しいかと存じます」


()の様な事が可能なら、最初から位置を変更して()いても(よろ)しかったのではなくて?」


「うっ」


「ラクス、事が起きないと気付けない事、(わか)らない事が多々あります。確かに前以(まえもっ)て対策できて()りましたら()れに越した事は無いのですが、潜泳機の様に(ほとん)どが未経験・未知のものでは中々難しい事でもありますし、()()を確認する(ため)の場が()の試乗なのですのよ。()して後から()うして()けば良かったと、責めるのは詮無き事ですわ。次からはと提案する事が望ましいと思いますよ」


「配慮至らなき事、(おそ)れ入ります」


「取り()えずですね! 座席を移動するには一度下(まで)降ろすか……」


「降ろすか?」×2


「いえ、(また)、危ない行為なので提案を控えようと存じまして」


「許します。()って()なさい」


「……はい、座席の安全金具を引いた状態で、ラクス様に押して(いただ)ければ上に()る状態でも位置を変える事ができます」


(よろ)しいですわよ。許可(いた)しますから()ってみなさいませ」


「……」×4


(いた)し方御座(ござ)いませんわね。リーシャ様、アリア殿下を(しっか)りと抑えて()いて下さいよ」


 再びエミリア様が下で構えている。何時(いつ)いらせられても問題ないですよと()わん(ばか)りである。


「……善処に努めます」


「行くわよ! えいっ! えいっ!」


 ラクス様は鉄の梯子(はしご)(つか)まり(なが)ら、操舵(そうだ)席をゆっくり前へと押すと「ガー」と音を立てて前へ前へとずれて()く。


「あっ! ()の位で止めて(いただ)けますか」


 潜望鏡はアリア殿下にしがみ付いて()るリーシャの真横擦れ擦れ(まで)来て()た。確かに()れだと普通に使おうとすれば支障が()るかも知れない。


「一応、()の位置であれば足置き場に立って、潜望鏡を回し見れると存じます」


「はい、では早速見てみましょう」


「リーシャ、()(まま)アリア殿下を抑えて()きなさい」


「はい、エミリア様」


「あらあら、()だマギーさんとバルパルさんの攻防は続いて()たのですね。まあ、()れが見たかったのですが。陽動を巧みに織り交ぜて()りますが、矢張(やは)りマギーさんを出し抜くには至りませんわね。……ん、マギーさんもバルパルも何かに反応(いた)しましたわ。()の合図は知って()りますわ。止まれですわね」




---

修正記録 2017-06-14 07:50


責めて()るのでは → 責めて()る訳では


知って()て → 知って()りまして


対策できていれば → 対策できて()りましたら


あります。()して

ありますし、()()を確認する(ため)の場が()の試乗なのですのよ。()して


許可します → 許可(いた)します


「陽動を巧みに織り交ぜて()りますが、矢張(やは)りマギーさんを出し抜くには至りませんわね。……」追加

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