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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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107潜望鏡

 リーシャはふと思い出し頭上に取り付けられた潜望鏡へと手を伸ばし、安全金具を解除し(なが)らぐいっと引っ張り降ろしたのである。

 窓硝子(まどがらす)から見える情景を楽しみ見て()たラスク様には、突然、迫り来る「カシュー」と()こえる異質な音に慌てふためくのは無理もない。

 そんな様子のラクス様へは御座(おざ)なりではあるものの、一応は謝りつつもかちゃかちゃと何やら準備を始めるリーシャには何を言っても無駄だろう。


「中央上部の操舵(そうだ)席より問合せ(いた)します。潜望鏡の使用確認をして(よろ)しいでしょうか?」


「=()の確認、私も気になって()りましたものですから、()れに立ち会いますわ。=」


 突然、(のたま)(たも)うたアリア殿下のいらせられるという表明にラクス様もリーシャも大童(おおわらわ)()るのである。


「お待ちして()ります!」


「――任務に()きますわね――」


 ラクス様はひらりと座席から飛び降りて、後方部へ通ずる扉の横に移動し(もっ)てぴしっと姿勢を正し直立する。

 リーシャは伝声管の蓋を閉じ大急ぎにて、操舵(そうだ)席を降ろし始めるのであった。


「カチャ」


 エミリア様が前方部の部屋から扉を開けて出て()ると、素早く周りを確認してから通路を()けて礼を()る。勿論(もちろん)、扉は押さえた(まま)である。

 リーシャは何とか間に合い座席を降ろし切ると、素早く立って後ろに下がり礼を()る。


「カチャ」


 アリア殿下は中央の部屋に入ると()(まま)真っ()ぐ、リーシャの(もと)(まで)歩み寄る。


「リーシャ様、()の椅子は2人で座るぐらいの余裕は()りますか?」


「はい、私ぐらいの体格であれば十分に余裕が()りますが、大人の体格では少し窮屈(きゅうくつ)かも知れません」


 ラクス様は少し(ばか)り顔を強張(こわば)らせて()るが、リーシャは発言に気を使えるぐらいの大人なのである。


「では、()の椅子へ御座り()さいませ。私も一緒に座りますわ」


「はい! では、お先に失礼(いた)します!」


 リーシャが左の壁側へ寄って座ると、()の横にアリア殿下も座る。同性と言っても()れだけ綺麗で可愛くて、さらさらの髪を持つ御方である。()して殿下であるのだから、胸がどきどきと高鳴るのは仕方が無いし恋ではない。

 緊張しつつもリーシャは把手(とって)をくるくる回して操舵(そうだ)席を上へ上へと揚げて()く。


「まあ! 構想図を見ましたけれど上手に(つく)ったものですのね。(ただ)、困ったものですわ。()れを実際に職人たちへ見せたい(ところ)ですが、飛翔(ひしょう)機と違っておいそれと見せる訳にも行きませんし、如何(どう)(いた)しましょうかしら」


「姫様、(よろ)しければ潜泳機の試乗が終わった後で、イザベラ様に石灰で固めて(いただ)()れを()(まま)転送(いた)します」


「ええ、()うね。()うして(もら)えるかしら」


(かしこ)まりました」


 操舵(そうだ)席は最上部(まで)揚がり切る。勿論(もちろん)、足元に位置するイザベラ様は前方部の部屋と隔てる壁に立ち向かい【念話】に専念して()る様子だし、エミリア様は席下の右横で真っ()ぐと前を向かいて立って()る。

 見上げて()るのは後ろで控えるラクス様ぐらいだろう。

 アリア殿下の熱い視線を受け(なが)ら、リーシャは先程の潜望鏡を再び操作し始める。


「中央上部の操舵(そうだ)席より連絡。唯今(ただいま)水深計は先程と変わらず1mです。潜望鏡の浮上準備が整いました」


「=前方部より連絡、潜望鏡の浮上を許可する=」


「了解!」


 リーシャは再び(なに)やらかちゃかちゃと潜望鏡の横に付けらた小窓を確認し(なが)ら動かして()く。


「中央上部の操舵(そうだ)席より連絡。潜望鏡、35cmを越えた所で水面上へ浮上しました」


「=前方部より連絡、此方(こちら)にて記録完了した=」


「了解、それではアリア殿下、御確認を」


「ええ、感謝しますわ。リーシャ様」


 リーシャに譲られた潜望鏡の小窓をアリア殿下は覗き込む。


()れは……何かの背中? あ、バルパルさんですわね」


「? 少し向きが変わった様ですね。回転させると視点が移動できますよ」


「ええ、ミーアが見えましたわ。ん、礼を()ってますからイザベラが何か伝えましたか?」


「はい、礼を()らず周囲の警戒に集中する(さま)を見せて欲しかったのですが……、まあ、アリア殿下に挨拶するのが基本ですから仕方無いですね」


此方(こちら)はマギーさんですわね。ん? バルパルさんを抑えて()れて()りますのでしょうか、通せん坊してますわね」


「ミーア様からの話ですと潜望鏡を見付けて興味を示した様です」


()る程、偵察任務でひっそりと潜望鏡を揚げて()ると近辺の動物たちに悪戯される可能性も()る訳ですね」


「手引書の作成時には()れも含めるように(いた)します。姫様」


「エミリアは真面目ですわね。でも助かりますわ。()れで()って(もら)いますわね」


「アリア殿下、()れ以上回ると落っこちます」


 潜望鏡と一緒に回って()きつつあるアリア殿下を、必死に支えるリーシャの奮闘度合いが声に(にじ)み出る。

 慌ててラクス様は梯子(はしご)()じ昇り、エミリアは落ちても良いようにと足元へ移動する。


「あらあら、勿論(もちろん)大丈夫ですよ?」


 リーシャに支えられ(なが)ら、説得力の無い言葉が掛けられた。



---

修正記録 2017-06-13 15:02


後書きの修正記録を変更。


---

修正記録 2017-06-13 07:09


「突然、(のたま)(たも)うたアリア殿下のいらせられるという表明にラクス様もリーシャも大童(おおわらわ)()るのである。」追加


移動してぴしっと → 移動し(もっ)てぴしっと


ルビを追加


浮上準備整い → 浮上準備が整い

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