表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
125/345

106監視だけじゃないんだよ!

此方(こちら)中央上部の操舵(そうだ)席です。リーシャが戻って参りましたわ」


「よっと」


 リーシャは態態(わざわざ)操舵(そうだ)席の右側、()まり梯子(はしご)の無い側から器用に手を掛けてするりと椅子に座り込む。

 ()の年齢特有の(はしっこ)さだろうか、体が軽い分自由に動ける事が多く、つい大胆な行動に出て仕舞(しま)う。と()う訳では無く単にラクス様が空けた座席の隙間が右側であり、リーシャが最初、ラクス様の座り(やす)い様に空けた座席位置が、梯子(はしご)近くの左側だっただけなのである。うん、実にどうでも良い話だ。


「御帰り遊ばせ。あら、動き出した様ですわよ」


 リーシャが中央上部の操舵(そうだ)席に戻ると潜泳機は旋回を開始しており、どうやら何時(いつ)もと同じ様に北東に向けて推進するらしい。

 ()の前、()った飛翔(ひしょう)板訓練では()の巨大な魚の魔落に追われたり、大波を作業場へと流し込んでベイミィの機嫌を損ねて御冠(おかんむり)を曲げて仕舞(しま)ったりと、リーシャに取って(ろく)な事が無い航路ではあるが、近場で多少ではあるが土地勘も()って()れなりの直線距離も稼げる試乗に最適な場所なのだ。

 アリア殿下を乗せての潜航だから尚更(なおさら)慎重を期す必要がある。新しい場所の探求なんてとんでもない事なのだ。


(さて)、潜航の際には新しく取付けた外水注入装置の動作確認が行われますし、此処(ここ)と前方部の操舵(そうだ)室にある水深計や水圧計の動作確認もありますね。ああ、後、気圧計に空気循環機の調整は此処(ここ)で行いますよ」


「随分と自慢げにすらすら専門用語が出て()るのですわね。()の分だと貴女(あなた)たちは(また)騎士訓練を其方(そっち)退()けで、組立作業に没頭して()たのでしょうね」


「うっ、朝と夕方の訓練は欠かさずに……」


「まあ、(よろ)しいですわ。気圧計と空気循環機は飛翔(ひしょう)機の訓練で習いましたわ。確か高高度飛翔(ひしょう)の時に空気が薄くなるから、完全密閉した機内に循環比率……空気の入出比率を変えて空気濃度を地上と同じぐらいに保つ(ため)の装置と計測器よね。だけど潜泳機だと水中に潜るのよね? 何で空気循環機とか気圧計が出て()るの?」


「はい、空気の薄い高高度で飛翔(ひしょう)機の機内を密閉して()ると空気が足らなく()る様に潜泳機も(また)密閉空間ですから空気が足らなく()り、()(どころ)か供給する事すらできません。其処(そこ)でどうせ重りが必要なのだからと空気も空気循環機で容器に圧縮して詰め込み重りとして仕舞(しま)い、()れを機内で循環する事で長時間の潜航が可能と()った訳です。だから気圧計は室内と容器内を測るものが別々に()るんですよ」


「うん、(わか)らないわ」


「=()れより外水注入装置の動作確認を行う。各計器の確認と記録をするように=」


「あら、始まる様ですわね。()の作業には、どんな意味が()りますの?」


「……()の潜泳機は飛翔板の様に表面が硬く重い鉄で覆われ()ますが、内部が幾つもの区画に分かれた空間と()って()(ため)、水に浮きます。本来なら()の浮いた状態でも良いのですが、潜泳機は水に潜って水上からでは到達できない場所へ()(ため)に造られたものですから沈める必要があります。其処(そこ)で水を内部へ注水する事で沈む(まで)に達して()ない重量を水で確保する訳です」


「うん、(わか)らないわ。取り()えず船を(わざ)と浸水させて沈める様なものね」


「……はい、そんな感じです」


「あ、沈み始めましたわ!」


「換気口を閉じます」


「そんなものが開いて()たのですか、まあ空気は必要ですわね。ああ、此処(ここ)で空気循環機が稼働するのですね」


「はい、もう少し後に()りますが」


「じわじわと水が迫ってきますわ。何だか胸がどきどきして()ましたわ」


「中央上部の監視窓近く(まで)沈みました」


「=外水注入装置の停止をお願いだよ! 潜舵(せんだ)俯角(ふかく)5°=」


「あら、浸水が止まった(はず)なのに急に沈んじゃいましたわよ。水中は水面(みなも)から見える景色と全然違いますのね。すっきりとして()て陸上とは違いますが透明感が()りますわ」


「はい、潜舵(せんだ)と言う胸鰭(むなびれ)の位置に()った短い翼を下に向けて水の力で沈んで()ます。水面は波とかで歪んで見えるのかな? よく知りません」


()の翼の役目、揚力とは(また)違うのかしら?」


「空気と水の違いだけですから同じ揚力で考えて良いかと思いますよ。水の方が揚力から受ける力が大きいですね」


「=潜舵(せんだ)を0°、横舵(おうだ)の調整にて水平を維持するよ!=」


「=現在、前方部の水深計3mです=」


「アリア殿下も参加していらせられるのですわね」


「中央上部の水深計、1mです」


「あら、前方部と此方(こちら)で水深計の位置が違うのですね。って何ですか()の上から下ろしてきた器物は? 一寸(ちょっと)驚きましたわよ!」


「潜望鏡?」



---

修正記録 2017-06-12 07:19


此方(こちら)中央上部の操舵(そうだ)席です。リーシャが戻って参りましたわ」追加


幾つかのルビを追加


時間潜航 → 時間の潜航


別々に()りますよ → 別々に()るんですよ


各計器確認 → 各計器の確認


中央上部監視窓近く → 中央上部の監視窓近く


外水注入装置を停止を → 外水注入装置の停止を


止まったのに → 止まった(はず)なのに


水面(みなも) → 水中は水面(みなも)


横舵(おうだ)調整にて → 横舵(おうだ)の調整にて

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ