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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
123/345

104聞かれてますよ

「――くっ――」


「――隧道(ずいどう)の近くに居ると外の声が()く通って()こえるものですね。リルミールの教育は私が直接行います。(よろ)しいですね――」

「――はい!――」×2

「――はい! 私も配慮するべきでした。今後は私も目を掛ける所存です――」



「リーファ様、既に連絡が届いて()るかと思いますが、南西400mから神官長の従魔が近付く件は如何(いかが)(いた)しましょうか?」


 潜泳機前方部の部屋、操舵(そうだ)席の横でアリア殿下の警護を努めるエミリア様はそう尋ねた。


「地底湖に出たら進路を南西に向けて進行。200m程進んでバルパルと会する前に停止。食べ物を(もら)えるかと期待して()るのか、単純に興味を示して()るだけか、(いず)れにせよ付いて()るなら合流して()るべきだな。()しかしたら護衛を手伝って()れるかも知れんな」


「神官長の従魔ですか、確か魔落狩りをして回游(かいゆう)して()るのでしたわね。バルパルに逢うのも目的の一つですわ」


 ()の傍らで別のことに集中して()るもの、ベイミィが思わず(つぶや)いた。


「はあ、()れは凄い性能ですわ」


「何か()こえましたのでしょうか?」


「え、ええ、アリア殿下、水面上の()ぐ前に()るハンナ様たちの会話と少し離れた水路の外、地底湖に出て()るティロットとリルミール様の会話が、()()(ほとん)ど差が無く(つぶさ)()こえて参りました」


「内容はどういったものだったのですか?」


「正直、友人を売る様で心苦しいのですが有り体に要領を(まと)めて申し上げれば、警戒任務で探査報告中のティロットに自分の報告其方退(そっちの)けで、リルミール様は飛躍した御業の起因を尋ねて()たのですが、()の一部始終が隧道(ずいどう)を通してハンナ様に伝わって()り、多分ハンナ様直々のきつい御説教と御指導が決定した様子で御座(ござ)います」


「大丈夫ですよ。ハンナ様が自ら指導を()されるのは、もう少し前に決まって()りましたから、何ら気に()される事はありませんわ。ですが流石はリルミール様、是非とも()の話題に事欠かない個性を伸ばして欲しいものですわ」


「それでしたら、お気の毒ですが致し方御座(ござ)いませんですわね。確かに()の様な方は貴重ですから、めげずに()れからも頑張って(いただ)きたいものですわ。――御任(おまかせ)を、彼女の残念小話は(つぶさ)に御報告させて(いただ)きますわね――」


 心苦しいと()いつつすらすらと(よど)みなく応え、一方、何が大丈夫なのか分からないが、アリア殿下とベイミィの2人は笑顔で微笑み合う。()の姿にリーファ様もチェロルもどん引きである。(いや)、エミリア様も若干顔を(しか)めて()る気がする。


()うですか其処(そこ)(まで)状況を理解できる程に()き取れるものなのですわね。ところで、ベイミィ様は()れを……水中音声蒐集(しゅうしゅう)機を()の様に使うべきとお考えでしょうか?」


()うですわね……。(わたくし)の【器用繊細】に依存するのですが、今も後ろから水上を滑走するハンナ様や騎士の方々、そして()の潜泳機が水音を立てて()るのが()こえて()ります」


 ()()いつつベイミィは紙に何やら書き(つづ)り、納得したのかうんと(うなず)き回答を出す。


「音の強弱で大凡(おおよそ)の距離が(わか)りますし、(わず)かな反響を()き取り慣れて()れば周囲の地形も把握できるかも知れませんわ。(ただ)、音を単純に拾って()るだけなので、音源の方向を(つか)み兼ねますわねぇ。此方(こちら)()しくは対象の移動から計算して推定できなくも無いですが、判定するのに観測数と時間を要し結果も曖昧かと存じます」


「方向ですか、それでしたらいっその事此方(こちら)から指向性の音を出して仕舞(しま)って、方向を変えて()くことで反響の強弱を判定すれば(よろ)しいのではありませんか?」


「指向性の音? ああ、蓄音魔器、()の花の様な金属の広がりが向いた方は()(やす)いのに後ろ側は余り()こえないのでしたわね」


「ええ、チェロル様「ひゃっい!」……いえ、操舵(そうだ)に集中()さって、あら、随分遠く(まで)見通せるのですわね。……()の新式気灯の発想に通ずるものがありますわ。光を集め指向性を持たせた様に、音も向ける方向に()って伝わる量が変われば、反響音の()こえ方が移り変わり、()の様子を吟味すれば方向の判断材料にできるのではなくて?」


「はい、()の通りだと存じ上げます。実現すれば雨の日の濁った水中でも潜航可能と()るやも知れませんわ」


「進路を南西に向け進行しますです!」


--


「神官長の従魔が南西方向に居るらしいよ。一先(ひとま)其処(そこ)へ向かってから次の行動を考える様ですね」


「バルパルですか(かわうそ)の従魔で太太(ふてぶて)しくて可愛いですよ。イザベラ様」


「リーシャ、何で太太(ふてぶて)しいが可愛いに()るのよ」


「ラクス様、リーシャ様の従魔を思い出して(いただ)ければ(おの)ずと答えが導かれると存じます」


「え、()の太った(すずめ)? (いや)、何で貴女(あなた)(まで)膨れるの? えい、えい、あら、綺麗ですわ」


 リーシャの膨れた頬を突いて()たラクスの目前には、潜泳機の前方に付けられた大型気灯の光で煌煌(こうこう)と輝き水面(みなも)がきらきらと揺れて()る。

 ミーアとマギーの水上滑走に()ってできた波紋なのだが、()れは別にどうでも良いだろう。



---

修正記録 2017-06-10 07:37


飛躍した → リルミール様は飛躍した


――彼女 → ――御任(おまかせ)を、彼女


「。実現すれば雨の日の濁った水中でも潜航可能と()るやも知れませんわ」追加


がキきらきら → がきらきら

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