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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
121/345

102着水

 潜泳機はゆっくりと浮き上がる。

 ()の機体を御業を使って動かして()るのはチェロルである。

 床下全体は幾つかの区切られた箱状と()って居り、()の場所は敷き詰められた砂鉄で満たされて()た。本来は()れを使って【砂鉄】の御業で推進などを行う積りだったのであろう。

 だが今行われて()るのは機体全体の鉄を浮かす(ため)の御業である。元々想定して()たのは砂鉄の収納部分に力点を置く推進であって、()れを使って想定外の負荷が掛かる浮かすという行為は躊躇(ためら)われたからだ。

 リーファ様(いわ)く、無人の機体に(おい)て鉄の強度状態を確認し(なが)ら浮かすのであれば特に問題としないのだが、人が乗って()る状態で()っ付け本番の危険を伴いそうな作業を態態(わざわざ)行う必要も無いだろうとの事だ。

 ()の浮かす(ため)の御業は、潜泳機全体を織り成す全ての鉄へと行使されて()る訳なのだが、砂鉄にも上昇する(ため)の力が働いて()る。態態(わざわざ)選別する意味は無い。

 機体全体を指定する事で負荷は分散するし、何より御業の行使に()って鉄素材の強化が起きて()るのだ。


 潜泳機は水路の中央(まで)進んだ所でぴたりと()まる。


「マギーさん確認お願するんだよ!」


丁度(ちょうど)水路の中央です。潜泳機全体も真っ()ぐに()って()ります。お見事で御座(ござ)います、チェロル様』


「えへへ 了解したよ! 次は着水作業を開始だよ!」


 マギーのよいしょを受け(なが)らチェロルの制御する潜泳機は、ゆっくり水面へと降りて()き静かにぴちゃんと着水した。

 前回は今の水路より狭い幅にも(かかわ)らず、()してメルペイクに制御させての着水であったのだが、()の折は特にマギーから()くことも無かった(はず)である。決して後ろに控え(にら)みを効かせて()るエミリア様に臆したからでは無いのであろう。


「チェロル様、簡単な作業が()ったら是非とも手伝わせて欲しいのですわ」


 徐々に沈み往く潜泳機を一応(なが)らも支えて()最中(さなか)のチェロルに、堂々と話し掛けるのは勿論(もちろん)アリア殿下である。まあ今の状態で制御が外れてもさして影響もなく、沈みきった後で多少は上下に揺り戻しが()るぐらいだろう。


「え! じゃあ其処(そこ)の点灯装置を()けて(いただ)けまする!」


「ええ、任せて(もら)いますわ。えい!」

「カチャ」


 潜泳機前面の左右2箇所に増設された大型気灯が(とも)される。()れと同時ぐらいだろうか、操舵(そうだ)席の前に()る窓硝子(がらす)が水面下に沈み往き喫水線が目の前を通って、上3割程を残して()まり(わず)かに波で上下する。

 アリア殿下の目前には大気の空間とは何処(どこ)と無く(おもむき)の異なる水面下の世界を見せた。()れは唯唯(ただただ)壁が切り立った水路が伸びるだけだが、初めて見せる()の風景に興味をそそらせないものが居るだろうか。

 アリア殿下は(おもむろ)に手を伸ばし、先程の大型気灯を(とも)した点灯装置の(つま)み棒を下ろす。


「カチャ」


 (そもそも)作業場内は天井の大型気灯で()れなりの光量を(もっ)て照らされて()たのだから、潜泳機の大型気灯が消えても煌煌(こうこう)と明るく照らされて()た水路が、普通の明かりに戻るだけである。

 何だか微妙な空気が流れるが当の本人は満足そうである。普通と()った光量でも水の中から見える景色は、()れも(また)違ったものを見せて()るのだから。


「カチャ」


 再び大型気灯の明かりが(とも)される。今は一寸(ちょっと)明る過ぎるぐらいだろう。


「お騒がせ(いた)しましたわ」


「いえ、此方(こちら)のものだけで試乗を行って()たら同じ確認を(いた)しましたでしょう。つい遠慮して仕舞(しま)(ところ)でした。感謝(いた)します」


 リーファ様はそつなくアリア殿下の行為に口添えを行い正当化する。

 すると突然に作業場を照らす大型気灯の明かりが消えた。潜泳機が点灯確認をして()ると察して消して()れたのか、将又(はたまた)エミリア様が指示したのかは(わか)らないが、作業場を(とも)す明かりは潜泳機のものだけと()り、光量は依然としてきつめでは()るものの()の意義を十分に伝えて()れる。


「カチャ」


 そして再びアリア殿下は大型気灯の性能を確認するのであった。


--


「あら、浮きましたわね。何だか荷物に()った気分ですよね」

「……()うですね」


 リーシャとラクス様は2人ちんまりと並んで座り、窓硝子(まどがらす)から外の景色を覗いていた。まあ、()の場所では見ることが仕事である。


()の潜泳機は飛翔機(ひしょうき)と違って窓が小さいから、余り景色が見れないのが欠点ですわね」

「……()うですね」


「あら、停まりましたわね。周りの方々が(なに)やら真剣な面持ちで、位置確認をしては合図を送って()ますわ」

「はい」


「降り始めましたわ。中々慎重で良いことだと思いますよ」

「はい」


「着水しましたわね。少しドキドキ(いた)しますわ。……って此処(ここ)は水面下に行かないのですか?」

「はい、水路を出て地底湖に入ってから潜航を開始します」


一寸(ちょっと)期待して()たので残念ですわね。あら何時(いつ)の間にか前方部で煌煌(こうこう)と明かりが(とも)ってましたのね。あら消えた? ()いた、操舵(そうだ)室で光量の具合でも確かめていらっしゃるのかしら? わっ! 今度は作業所の明かりが消えましたわ!」


「ラクスの状況報告とエミリア様からの伝達を(かんが)みて作業場の大型気灯を一時的に消して(もら)ったのですよ。どうやらアリア殿下が大型気灯の性能を御確認していらせられた様ですね」


「そ、()うでしたの? 窓の外に集中して()りましたから少しドキドキ(いた)しましたわ。お役に立てたのなら幸いです」


 慌てるラクス様にイザベラ様は貴女(あなた)もちゃんと役に立って()るんですよと、言葉にして伝えて上げる。

 ラクス様は近衛騎士といっても()だ2年目でちょっとした事でも不安に()る。()れは言葉数が増えるとか気心知れた知人を見付けて寄り添うとか、そんな機微をイザベラ様は()み取り配慮する。

 何故(なぜ)か傍らのリーシャが悔しそうな顔をして()た。自分も役に立ちたかったのだろうか。



---

修正記録 2017-06-08 08:23


箱状の場所に敷き詰め → 箱状と()って居り、()の場所は敷き詰め


()り、本来 → ()た。本来


だったのだろう。 → だったのであろう。


確認して()た様ですね → 御確認していらせられた様ですね


---

修正記録 2017-06-08 07:55


御業であり、(これ)は元々浮かすという負荷を砂鉄の収納部分だけに掛ける事を想定して()なかったからだ。

御業である。元々想定して()たのは砂鉄の収納部分に力点を置く推進であって、()れを使って想定外の負荷が掛かる浮かすという行為は躊躇(ためら)われたからだ。


()いて → (おい)


御業は潜泳機全体を織り成す鉄へと行使されて()る訳である。

 勿論(もちろん)、砂鉄にも上昇する(ため)の力が働いて()る。態態(わざわざ)選別する意味は無い。

御業は、潜泳機全体を織り成す全ての鉄へと行使されて()る訳なのだが、砂鉄にも上昇する(ため)の力が働いて()る。態態(わざわざ)選別する意味は無い。


ルビを追加


よししょ → よいしょ


「リーファ様はそつなくアリア殿下の行為に口添えを行い正当化する。」追加


作業場の大型気灯 → 作業場を照らす大型気灯


伝えて()る。 → 伝えて()れる。


平仮名を漢字に変更


「 慌てるラクス様にイザベラ様は貴女(あなた)もちゃんと役に立って()るんですよと、言葉にして伝えて上げる。

 ラクス様は近衛騎士といっても()だ2年目でちょっとした事でも不安に()る。()れは言葉数が増えるとか気心知れた知人を見付けて寄り添うとか、そんな機微をイザベラ様は()み取り配慮する。」追加


何故(なぜ)か → 何故(なぜ)か傍らの

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