101裏での事
執筆用で雑多に参考描きした資料の一部を抜粋し潜泳機関係と合わせて、少し清書してから載せました。
雑ですが参考までに。
http://ncode.syosetu.com/n9385dv/5/
潜泳機の室内は新式中型気灯に由って昼間の様に明るく照らされて居る。先程まで行われて居た打合せが漸く終わったのか、前方部の部屋から次々とアリア殿下の近衛騎士様方が出て来る。
其れなりに空間が有ったとは言え、此の人数を収容して居たと思うと溜息が出そうに為るが、無駄に装備を着用した状態でも彼の部屋に9人が入って、誰一人として途中退出しなかったのだから、苦言を呈する人も居なかったのだろう。
ミーア様は其の儘、リーシャの居る中央の部屋を通り過ぎて、後方部に在る外へと繋がる扉に向かう様である。前方部の部屋にも天井扉が付いて居た筈だが、アリア殿下の上を執る事を極力避けて居るのか、それとも外へ出る序でに後方部まで見回りを兼ねて通ったのか、まあ両方なのだろう。
侍女のメアリーが何時の間にかお茶台一式を何処ぞから持ち出して来て、否、まあ、【瞬間転送】の御業なのだろうが、リーシャはものを送る以外は見た事が無かった為に些か驚きを隠さない様子である。
「リーシャ様、お茶をどうぞ」
「あ、畏れ入ります。あっ、先にアリア殿下の方に御出し為されないのですか?」
「彼方の部屋は言わば司令室や制御室に当たりますから、おいそれと中に入るのは憚れます。其れに今から出発と相成る矢先に、お茶を濁すというのも無粋ぶすいかと」
「ああ、確かに……」
「此方で待機する騎士はリーファ様曰く木偶と変わらぬだそうだよ。まあ確かに余程の奇想天外が起こらない限り、ああ、感謝致します。限り先ず出番は無いでしょうね。此処で食い止めるより彼方が直接襲われるか若しくは問題が発生する方が先だと思いますよ」
メアリーからお茶を貰いつつ、其の様な話をするのはイザベラ様である。扉の警護役を仰せ付かったのか、扉の前から一歩も動こうとはしない。否、敢えて此の役を任されたのは意味が有ると、存外にも語って居るのかも知れない。
イザベラ様は【念話】の御業を持ち其れを以て隊を潤滑に動かす事を得意とする。【念話】で外から警護するミーア様や扉越しに居る操舵室のエミリア様との連携を図る事に専念して呉れと、然う、木偶と言いつつ実は重要な役を仰せ付かって居るという処だろうか。
では、何故に其の様な微妙な表現をする必要が有ったのだろうか。
「よっ、お邪魔しますわよ」
「はい、意外と此の座席は大きいですから半分座ります?」
「あら、悪いわね。って、貴女が未だ小さいだけじゃなくて? まあ、有難う御座います。あ、お茶は此方で頂きますわ」
操舵席の後ろに在る鉄棒でできた梯子を攀じ登って来たのは、暇を飽かして居ますと謂わん許りのラクス様である。自分のことを棚に上げては居るがリーシャと1歳しか変わらぬ筈であり、行動が物語って居る気もするが本人はもう立派な淑女の積りなのだろうか。
本来、彼女程の適性であればベイミィの代わりに水中音声蒐集機の席を言い渡されて居ただろうが、基本部外者であるから其れは無い。但、アリア殿下は乗せるだけでも意味が有ると判断為されたのであろう。
「うわあ、此方も面白そうな絡繰りが沢山付いて居るのですわね。然も確りとお茶置き専用と思しき凹みが有るのですわ。一寸感動しましたよ」
「はい、此処では監視や見張り番をする為に単独で全てが操作できるよう、操舵や計器類を集めて居ますのです。場合に依っては此の上の一角だけを水面上に残して、潜泳や停止する事も在りますので、長い間動かずに周囲の監視を続ける必要を強いられる場所と謂う話です。ですからリーファ様が、其れなりの環境を整えて遣らないと辛いと仰られて色々付けて居るんですよ」
「成る程ね! 此処は少し閉鎖された環境ですから視界だけでも見渡せる此の場所は、私としては好きですよ」
「地底湖で無ければという前提が付くと思いますけど……」
「=前方部操舵室より連絡。此れより潜泳機の試乗を開始する。注意するように=」
「わっ! リーファ様の声が聴こえたわよ!」
「はい、此処の管を伝って声を通して居るのです。反対に声を伝える方は此方の蓋を回して開けてから喋り掛ける感じですね。若し壁などに穴が空いて浸水した時に、其の区画部屋を放棄して別の部屋へ移動しても蓋をして居れば、其処を通って浸水する事は無いという仕掛けですね」
「あら! 流石はチェロルですわ。 用心深いと言いますか抜け目ないと言いますか、兎に角隅々まで洗練して考えられて居りますのね」
「=えへへ=」
「=此の微妙な表現も純粋に褒め言葉として昇華できる貴女には敬服致しますわ!=」
「……」
「あっ! 蓋は閉めて置きますね」
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修正記録 2017-06-07 06:43
前書きが余りにも自分語だったので文字を追加・修正
ルビを追加
「自分のことを棚に上げては居るがリーシャと1歳しか変わらぬ筈であり、行動が物語って居る気もするが本人はもう立派な淑女の積りなのだろうか。」追加