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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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99地底湖では何か起こる?

「では、マリオンとエミリアは先行して地底湖の状況確認を、着水はせずに御業と視認でのみするように。アリア殿下、(しば)しお待ち願います」

「了解!」×2

「ええ、大変素晴らしい雰囲気ですわ」


 マリオンは今日、潜泳機の試乗を行うと聞いて()たので、当初から派出所へ顔を出す予定だった。まあ、来る予定が無くても護衛の人数を増やす(ため)に、呼び出されて()たのであろうが。

 ごった返した派出所周りを見て大体の事情を悟れるぐらいは、タリス皇帝陛下の好奇心で連れ回された時期に色々と学んで()る様だ。会議部屋には向かわず()ぐに降りられるようにと、色々準備して()()れたのである。


 水面下は新式懐中気灯の性能も(よろ)しく視認距離も伸びて()るのだが、(これ)()る事(なが)らエミリア様が着水せずに水中の状況を御業で確認するぐらい、造作も無いことなのである。


「水深20m程の位置に40~60cmの魚と見られる動く物体を3つ確認しました」


「ええ、(ただ)の魚でしょう。此方(こちら)も周りの気配に異常は感じられない、昨日と変わらず同じ状態と()(ところ)でしょうか」


 マリオンは()う言い(なが)ら地底湖が問題無い事を伝える合図を示す。(ただ)、マリオンもエミリアもマギーとイザベラが【念話】で常時接続を(おこな)って()(ため)、粗方様式美の(てい)……では無く、【念話】を通さずとも()ぐに伝わるようにして()るのだ。特に末端のもの程(これ)は助かるものである。


 そして、()の様子を一応だが注視して()(なが)らも新米と見習い騎士の2人は、少々緊張感に欠ける会話を続けて()る。


「――リーシャ様、殺気とか怒気とかの(たぐ)いの察知って、もうできるように()られたのですか?――」


「――うっ、遠くから近付く魔落の気配は()だマリオン先生やリーファ様が(おっしゃ)られても、正直ぴんとは来ないですね。視認できるぐらい……一般人の視認できるぐらい近付けばぴりぴりする様な感覚を覚えます。()の魔窟で意識して鍛えれば他より早く身に付くとはマリオン先生も(おっしゃ)られて()ますから、普段から意識するようにしてますよ――」


「――わあ、じゃあ私も意識するようにします。そっかそっか良いこと聞いたわ――」


「アリア殿下、(わたくし)共の教育が足らずお耳汚し(いた)して仕舞(しま)い申し訳御座(ござ)いません」


「構いませんわよ、ハンナ様。中々興味深い話でしたから私も()けて良かったと感じましたわ。()うですか、此方(こちら)で意識して鍛えれば気配を感じ取れる業が早く身に付くのですわね」


 ハンナ様はアリア殿下の近衛騎士たちに心の内で謝罪した。『ご迷惑をお掛け(いた)します』と願わくは魔落狩り云々(うんぬん)を言い出さないで()れよ、といった(ところ)だろうか。


 暗く静かで(ささ)やかに水音が()こえる闇の中に、鋭く光る新式懐中気灯の明かりが天井から次々と降りて()る。(はた)目から見れば実に近寄りたくない光景だ。

 水面に着かぬ微妙な位置に降り(とど)まったのはリーファ様たち派出所の面々が7名、ハンナ様と共に急遽招集された皇太后陛下の近衛騎士小隊が5名、そしてアリア殿下と()(もと)に控える4名の騎士と1名の侍女である。


「アリア殿下、彼方(あちら)に見える鋭角に出た壁、と言っても()の位置からでは壁しか確認できませんが、其処(そこ)へ参ります。マリオン、エミリア」

「はっ!」


「――リーシャ様、何だか先程と掛け合いが違いますよね?――」

「――はい、命令の仕方に()って返事も変えますよ。手や目に()って合図が()された場合は、頷くか目や手だけで時には気配を消して応えるそうですよ。ああ、()の合図は異常・問題無しですね。リーファ様は(つい)で開けよですね。岩の扉で塞がれて()ますから()れをマリオン先生に開けて(もら)う訳ですね――」

「――わあ、()る程()る程!――」


「ふむ、()る程、実に興味深いですわ!」


「……済みません。うちの見習い騎士が教育足らずで、恥ずかしい限りで御座(ござ)います。きっちりと(わたくし)自ら再教育を(いた)す所存です」


 勿論(もちろん)、後ろで聞いて()た騎士たちはリルミールへ唯唯(ただただ)同情の眼差(まなざ)しを送るのであった。


「ですがエミリアはやけに息が合って()る様ですわね?」


「ええ、御存知御座(ござ)いませんでしたか? エミリア様たちがアリア殿下の近衛騎士に()ると決まった折に、リーファ様とかマリオンとかの元タリス皇帝陛下の近衛騎士団が、どうせ暇だろうからとの一言で教育係としてルトアニアへお呼び()されたのですよ」


(ああ)()れでエミリアはリーファ様に頭が上がらない雰囲気が()るのですわね。納得ですわ。ところで、魔落とやらは()だ現れないのですか?」


「……()の様に都合よく求めるものが現れるのは物語の中だけです殿下」


「――(あれ)が中の安全確認が終わったので、来ても良いですね――」

「――()る程!――」


「……ああ、アリア殿下、もう(わか)って()るかと存じますが、確認が終わりましたので潜泳機の作業場へと参りましょう」


「いえ、私が勝手に動いて警備に差し支えても不味いと理解して()りますわ。ええ、参りましょう」


--


 アリア殿下は作業場へ入ると早速と(ばか)りに潜泳機の前へと進み()き、チェロルからの説明をにこにこ顔で聴き入って()る。()の様な折である。


「うん、本当はね! 一通りの機材設置が終わったから今日、試乗する予定だったんだよ!」


()うでしたか、予定を狂わせるのは忍びないですわ。ええ、今回お持ちした機材の問題が取付ける前に発見できるかも知れませんから、()の際、先に()の試乗を優先して(もら)いましょう。勿論(もちろん)僭越(せんえつ)(なが)(わたくし)もご一緒(いた)しますわ!」




---

修正記録 2017-06-06 07:42


おっしゃ → (おっしゃ)


---

修正記録 2017-06-05 07:42


以上 → 異常


「お耳汚し致して仕舞(しま)い」追加


幾つかのルビを追加(常用漢字表にない音訓)


アリア殿下の許 → アリア殿下と()(もと)


彼方(あちら)に見える → アリア殿下、彼方(あちら)に見える

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