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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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97リーファ様頑張る

 何時(いつ)も全く気にして()ない素振(そぶり)りに見えたティロットだが、何かしらの()め込んだものが()ったのだろう。

 普段は芯が強く腕白(わんぱく)な印象だったから皆つい配慮を欠いて()たのだが、初めて見せた涙の姿にリーシャたち3人は(おろ)かアリア殿下も驚きの事なのである。

 ベイミィがおろおろしつつも手巾(しゅきん)を出して涙を拭って()るのだが、当の本人は既に「(かげ)の英雄」と(つぶや)きにこにこ顔である。


「ああ、だが偶然に頼って()ては駄目だぞ、騎士の威厳とは自分に(いつわ)りなき自信を(もっ)てこそ自然と身に付くものだからな」


「はい!」


「えっ? 危機って?」


「……んん、()の辺りは()だ調査も始まって無いのですが、宮殿付きの神官長が立てた仮説に対して此方(こちら)も否定し切れないものが()りまして、まあ、多分()の件に関してはルトアニアの方が研究や調査など何かと進んで()るのではないかと存じます、と()うか神官長自身がルトアニアの研究書物から着想を得たと申して()りました」


「ルトアニアの研究を元にした仮説? ()(また)引っ張るのですわね」


「ええ、()の件に関してはリーシャの方が上手く説明できるのではないかと存じまして」


 リーファ様はリーシャへとややこしそうな説明を投げた。まあ、確かに派出所の顔触れで一番理解して()るのはリーシャだろう。


「ええ! あ、はい、()うですね……。以前、アリア殿下から拝借させて(いただ)いた恩師が御書きに()られたと()う、魔気の循環に()いての著書。(あれ)の仮説が此処(ここ)地底湖の魔窟で起こって()るとメイリア神官長は申して()りました」


 (いや)()れ説明じゃないからね……。


「恩師と言うか子供の時分に一般教養やら御業やらの教育を務めて()られた教師の方ですわ。ニコライ先生は引退後、暇に飽かして色々な事に興味を示されては何やら書かれて()るのですよね。まあ、()れは扨措(さてお)き、(あれ)()う物質系に属する言霊属性の御業で(もっ)て顕現を行使する際の仕組みを()いたものですわ。実際は物質を顕現するのでは無く、()れに特化した転送の御業が行使されると。だから転送元には相応の魔気が必要と()るから、魔気が()る分だけの物質転送と()り求める物質を四方から()き集めるのが、見えない所で行われて()る事こそが御業の過程だと。そして転送して()た物質を消して気力を自分に戻す行為は、拡散した自分の気を無意識下に()いて繋ぎ止めて()り、()れを呼び戻す代わりに物質を元の場所へ返す事、()れが魔気の循環であるとして()りましたわね」


 リーファ様はじと目でリーシャを見遣(みや)るが、まあ仕方が無いので話を続ける。


「はい、宮殿付き神官長(いわ)く地底湖の古くは魔窟では無く、()れと気付いたのも今の神官長の代で巨大な魔落ちを見たのが切っ掛けだそうです。地底湖自体はスイタル湖からの浸水に()って長い年月を掛けて削られたのではないかと予想されて()りました。そして密閉(みっぺい)された空間では魔気が拡散せずに()まり(やす)く、【水】の御業をリーシャンハイスで行使すれば一番近く魔気も()まって()る地底湖から水が転送され、代わりに気が残されると()うのが()の仮説から()み取れるのではと」


()まり本来ならば水を顕現した後で(しっか)りと消して()けば、魔気が減るだけで問題は無かったが、大概は水を()み取り利用する(ため)(おこな)う御業の顕現ですから、消すことを(ほとん)どしなかったと()いたい訳ですわね。地底湖に気が残り(よど)み魔気と()って()まり魔窟と()ったと……」


「ええ、()れも一つです。()の下に()る地底湖は岩盤の層から、柔らかい所を削ってできたのだと思われます。だからこそ崩れずに今現在も維持して()られるのではないかと。ですが魔気が()まって()れば岩の御業でも転送は起きるのではないかと。ああ、ミーアとリーシャは特殊な岩を顕現して(ばか)りだから多分影響して無いよ」


 リーシャは少し責められた気分だったのだからほっこりした。ミーア様は反対に少し膨れた面持ちだ。


()まり此処(ここ)リーシャンハイスは(いず)れ崩れ()ちる可能性が()ると?」


()だ調査すら始まっていない状況ですから、(なん)とも()えません。(なに)せニコライ先生と言う方の著書も仮説に()ぎないのですから。ああ、できればルトアニアの方でも仮説の研究に助力して(いただ)ければ有難(ありがた)いのですが、あっ、()れは私の申し上げる事では無かったですね。失礼(いた)しました」


「リーファ様、私から皇太后陛下に御相談させて(いただ)いた後に、()の件は正式に要請を出させて(いただ)くような運びと(いた)します」


 ()う、ハンナ様は先程からずっと同席されていらっしゃるのです。というか結局巻き込まれて仕舞(しま)って()るのだから仕方が無い。


「感謝(いた)します。と()う訳で()の下に()る魔窟と()った地底湖は、(とて)も危険な所なのです。潜泳機も其処(そこ)で組立てて()まして、(とて)もアリア殿下を御連れできる様な場所ではありません。どうか今回の潜泳機視察の件は適宜(てきぎ)な御判断を(いただ)けないでしょうか?」


「ええ、(わか)りましたわ。今回完成した(ばか)りの特別な機材が()りまして、()れを組み込み秘密裏に試運転できる最高の環境だと(わか)りましたわ。魔窟も一度は見たかったのですよ。わくわく(いた)しますわ!」


 リーファ様もハンナ様も、そしてエミリア様もミーア様も予想通りというのに目が御疲れの様だ。リーシャたちは他人事の様に()れを眺めていた。



---

修正記録 2017-06-03 08:13


幾つかのルビを追加


んー → んん


として()ましたわね → として()りましたわね


切っ掛けだそうで、 → 切っ掛けだそうです。


()み取る(ため)に使うから、消すことは無かったと

()み取り利用する(ため)(おこな)う御業の顕現ですから、消すことを(ほとん)どしなかったと


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修正記録 2017-06-03 00:57


神官長の代であると、 → 巨大な魔落ちを見たのが切っ掛けだそうで、


「予想されて()りました」追加


()み取れた訳です」 → ()み取れるのではと」


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