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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
112/345

93烏合じゃない

 長かった。(いや)、今(まで)が早く組立てられ過ぎたのかも知れないが、(とどこお)ったと感じた一番の原因はメルペイクしか鉄の加工ができない事だろう。

 勿論(もちろん)、穴や部品ができたら交代してリーシャたちは取付け作業を手伝うのだが、結局最後の微調整や場合に()っての埋め戻し加工はチェロルとメルペイクに頼らざるを得ないという。無駄では無いが1人と1羽に作業負担が集中し、時には()れを待つ状態が続いたのだ。

 ()れでも全長12m程の大きな機体に幾つかの外水注入装置を取付け、各種計測器や遠隔気力通話器を設置したのだから、職人集団の名も返上せずに済むというものだ。まあ、本人たちは()の様な別称は(そもそも)要らないのだろうが。


 (なん)()んだと時間は掛かったものの延べ2日余りで(ようやく)く作業は完了した。感慨一入(ひとしお)というものだろう。

 何故(なぜ)なら朝稽古や朝昼晩の巡回任務を(こな)す以外、全て地底湖の作業場に(こも)っていたのだ。

 時には(すず)の御業使いの所(まで)リーシャが飛翔板(ひしょうばん)で駆け付け鍍金(めっき)処理をした事もあったが、ベイミィが口を一文字に結び()る意味羨望の眼差しを受けて居た(たま)れなくて気が引けたものである。


「明日は早速試乗するんだよ!」


「おかしいですわ。わくわくする気持ちと裏腹に結局狭い密室での作業なのは変わらないじゃない、と()陰鬱(いんうつ)な叫びが聞こえる様ですわ」


「ベイミィ早く上がって巡回に行くよ!」


「はぁい」


--


 今日も変わらぬ朝が来ると思って()た。

 夜も明けきらぬ朝まだき、勤務交代を滞りなく(おこな)って巡回の任に()く。

 変わらぬ町並み変わらぬ人々に礼を受け礼を返す、()の区画は穏やかな気質(きしつ)の人が多いと感じるのは()(まま)なのだろう。

 だからこそ()の異変に変容に街のざわめきに気が付いた。


 ()れは遠く西の空に見えて()た。

 ()し街が西や北の貴族街であったなら何時(いつ)もの風景だと切って捨てただろう。

 西の空高く()()()は礼儀正しく宮殿区画を()けて()ぶ事で、迷惑を掛けぬ(はず)だった。

 だが、()()が宮殿区画へ向かうのが当り前と思って()た西の貴族街住人たちは違和感を覚え首を傾げるだけである。

 そして、南や東の貴族街住人たちは()()見遣(みや)りて唯唯(ただただ)怯え(おのの)くだけなのである。


 ()れは飛翔機と飛翔板が空に立体的に整列して編隊飛行を(おこな)って()た訳であるが、規模も大きさも今(まで)とは違かった。

 飛翔機は10mは越える機体が9機、2人乗りの通常のものが48機、そして100人弱の飛翔板を(かけ)る騎士部隊。

 東の貴族街住人たちは()()が遠くで見えて()たなら、()だ少しは余裕が()っただろう。

 だが住人たちが気付きし時は既に降下が始まって()り、(しか)もどうやら()()が目指す目的地は此処(ここ)東側の貴族街らしい。

 10m余りの飛翔機が1、2、3、2、1、と(ひし)形に配置して並び前後左右50mを越えて広がって()る。更には上下と通常の飛翔機6機づつ中央を守る様に陣取って()る。

 ()れだけではなく()の集団の前後左右の端にも通常の飛翔機が9機づつと此方(こちら)は三角形に配置して3段積みで並ぶ。

 ああっ、面倒だ! 空は四方100m近くに達する規模で積層を()して整列し埋め尽くした飛来集団に覆われたのである。


「リーシャ小隊長殿、()の中央に()る飛翔機の機体に……」


「はい、アリア殿下の御璽(みしるし)が機体に見えますね。此方(こちら)に向かって()りますから、十中八九間違いなく派出所を目指されて()られるのでしょう。皆さん急ぎ戻ります」


「了解」×4


「と言っても上の皆様は()んで()られるのですから、此方(こちら)が走って()ても一瞬で抜き去られますわね」


「ベイミィ、走ってる最中(さなか)にお(しゃべ)りしてると舌()んじゃうよ!」


「チェロルさん、私のお(しゃべ)りに持つ矜持(きょうじ)()う簡単に崩れないのですわ。ああ、皆様【強化付与】の御業を使いますね。力配分に十分留意して下さいませ」


「おー! 何だか軽くなったよ!」


「ベイミィ! 今度岩を斬る時に()れを私に使ってね!」


「……ええ、危ないから石塊(いしころ)からにして下さいませ」


(ああ)()()り派出所だよね。だけど……まさか全部の飛翔機を降ろす積りじゃないでしょうね。って普通に躊躇(ちゅうちょ)なく降り始めたか」


()れだけの規模でも整然と陣形を作って並んでますから()()しですわね。一歩間違えれば鳥の大群ですわ」


「ベイミィ……不敬です」


「はぁい」



---

修正記録 2017-05-30 07:25


組立て過ぎた → 組立てられ過ぎた


(とどこお)ったと感じた」追加


駆る → (かけ)


気付いた時には既に → 気付きし時は既に


1, → 1、


集団の前後左右にも → 集団の前後左右の端にも


積層に整列埋め尽くして並んだ飛来集団

積層を()して整列し埋め尽くした飛来集団

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