表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
109/345

90間髪を容れず

 ハンナ様は思考の中で自分が()れ程関わらずに済むと折り合いを付けれたのだろう。だからこそ一番最初に行動を開始したのは彼女であった。


「リルミール、ミリザを呼んで()なさい。()の1台はミリザに管理して(もら)うことに()るでしょうから」


「了解(いた)しました!」


「……矢張(やは)り後からタリス皇帝陛下へ御報告と()るのが一番不味い。アリア殿下が()此方(こちら)に参られるのであれば、()れは潜泳機(せんえいき)の御視察と見て間違いなかろうから、状況次第で地底湖の事を御話するしか選択肢は無さそうだ。かと言って河川やスイタル湖の近くに慌てて作業場を(つく)るのは、本末転倒だからな」


「では、地底湖へアリア殿下を御案内する運びで対策を検討(いた)しますか?」


勿論(もちろん)、視察を御望み(いた)された場合には危険性を具申(いた)して、思い留めて(いただ)くように努める積もりだ。(なに)()の下の地底湖を明かせるのは皇族の極側近(まで)で、できれば側近の方々にも内密として(いただ)きたいぐらいのものだが、地底湖へ向かうと()ると警備上()うも行かぬからな。まあ、マリオンの言う通り準備は怠らぬ方が(よろ)しかろう」


「ええ、では地底湖へ向かった際の決め事を幾つか作って()いた方が(よろ)しいのではないでしょうか? 地底湖で行動する際は何名以上とか向かう際は必ず上官()しくミリザに伝えて()き遠隔気力通話器で定時連絡を入れて(もら)うとか。ああ、ミリザ来ましたね」


 先程から非常に難しい話し合いが続いて()る。リーシャの様に意見を挟めるぐらいの度胸と関心が()れば()だ良かったのだが、残念(なが)らチェロルには何方(どちら)も無い様である。ついうつらうつらとして仕舞(しま)うのは仕方が無い。


「はい」


 ミリザは短く答えて綺麗な礼を()り、()(まま)指示が下されるのを待つ。自分から御用件はなどと無粋(ぶすい)な言葉は発しない、要件が()るから此処(ここ)に呼ばれて()るのだから。


「アリア殿下からチェロル宛に」

「――ヒッ!――」

「……最新鋭の遠隔気力通話器が届きましたのですが、()れの一つをミリザに管理して(もら)いたいのです」


「軍事規制が付いて()て第一騎士団ですら、(いま)だに旧型しか配備して(もら)えて無いくらい特別なものですね。()れ程事態は動いて()ると()う事でしょうか?」


「……有り体に言えば()の通りですね。()だ決定事項では無いのですが、我々や派出所の小隊が地下へ()く場合は前以(まえもっ)()れを伝えて()きますので、目的地が作業場で長い間居座る予定の時に限り、ミリザは()れを使って任意の時刻に連絡を入れて(もら)いたいのです。ええと、設置場所は何処(どこ)(よろ)しいでしょうか?」


「それでしたら……」


「はいな! 設置を手伝うのでゆっくり決めても(よろ)しいですますよ! 慣れて()るので任せて欲しいのですだよ!」


 ()の時、チェロルは間髪を容れず提案を挟んだ。呂律(ろれつ)は怪しいが()る時は()れる子なのである。


「チ、チェロル! 私も是非とも手伝わせて。1人じゃ大変だよ!」

「あっ、()れなら私も手伝うよ。力仕事ならお任せあれ」


 透かさずティロットとリルミールが便乗した。2人もどうやら同じく()の場が居辛(いづら)かった様である。


「……では、ミリザ、チェロルさんたちと一緒に行って遠隔気力通話器の設置場所を指示して上げて(もら)えますか?」


(かしこ)まりました」


 チェロルたちは急に元気になり意気揚々と荷物を抱え、ミリザを先頭に石祠(せきし)の部屋から退出して()く。

 ん? おや、ベイミィが悔しそうに見詰めて()る。どうやら同じく抜け出したかった様である。悔しさをぐっと(こら)える(ため)か、口を結び真一文字と成り果てて()る。


「チェロルさんには他の機材の説明を()きたかったのですが、仕方()りませんね」


「まあ、()ぐ済むだろうし遠隔気力通話器の扱いはチェロルが一番慣れて()るから、任せて()くのが手っ取り早く片付いて良い。(さて)()の子以外の近衛騎士小隊は皆知らせて()るのだったな?」


「はい、流石に見習いの子に知らせる内容では無いので伏せてあります」


 ベイミィは(いよいよ)(もっ)て逃げ遅れたことを後悔した。血の気が引き少し涙目だ。


「マリオン、此処(ここ)一連の話し合いが行われて()る件だが、魔落から御業の欠片が出て()仕舞(しま)ったのだよ」


御伽噺(おとぎばなし)や伝説の(たぐ)いですか、……確か魔窟自体が人里と近くに存在しないと言うか、簡単に辿(たど)り着けない場所に()ると()う資料しか残って()ない(はず)ですよね?」


「ああ、元々確認されて()る魔窟が少ないのと、総じて人と友好的な主が存在して()る魔窟しか残って()ないから、最近では人と対立する事も無く今に至るという感じだな。()所為(せい)()って古い資料や話でしか確認できないものだったのだが、場所が場所だけに知られる訳にも荒らされる訳に行かないから困ったものだよ」


 困ったものだと言いたいのはベイミィの方かも知れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ