表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
107/345

88ぽっこり

「バルパル、速度出し過ぎだよ!」


「ぴゃあぴゃあ」


 御昼を終え一寸(ちょっと)ぽっこり気味のお腹をしたバルパルは、空の飛翔(ひしょう)矢張(やは)り楽しい様で、高らかにご機嫌な声を振り()(なが)ら風に乗って軽快な旋回を繰り返す。


 ()の事に問題は無いのだが、飛翔板(ひしょうばん)(そもそも)気力を節約して()(ため)の道具である。そんな暴走めいた飛翔を繰り返して()ては時期に、体内で蓄えて()る気力は底を突くだろう。


「メイリア神官長殿はバルパルに影響され無いよう速度の出し過ぎに注意をお願い(いた)します」


「分かりましたよー! バルパル本当に()ちたら知らないんだからね!」


 (さて)、本来なら此処(ここ)でリーファ様も見守って()(はず)だったのだが、重要な案件ができて仕舞(しま)唯今(ただいま)急ぎ皇太后陛下の(もと)へ向かって()(ところ)だろう。

 ああ、マギーも此処(ここ)に居るよ。リーシャたちは派出所の上空にて飛翔訓練を行って()る訳だが、マギーはせっせと草原で網の様なものを(こしら)えて()る。

 否否(いやいや)、確かにバルパルが()ちて来たら網で(すく)うって、一見(いっけん)良い案に見えるのだけど。バルパルは尻尾を合わせて3mは()るぐらい大きいのだから、重量も一入(ひとしお)ってなものなんだ。

 ()の様なものを飛翔板で追っ掛けて網で(すく)おうにも、1人じゃ体勢を崩して一緒に()ち兼ねない。網を(しっか)りと固定し据え置いても其処(そこ)()ちるとは限らないと、そんな風に思い違いをして何が悪い。


『リーシャ様、此方(こちら)の準備はできました。何時(いつ)失速状態に()っても大丈夫です』


有難(ありがと)うマギー。メイリア神官長殿、バルパルはマギーが受止めて()れると連絡を(もら)いました。あっ……」


「ぴゃあぴゃあ、びゃっ! ぴゃやぁあぁぁ……」


「バ、バルパル!」


 マギーの持つ御業の1つは【植物】である。()れは【木】に比べと植物と範囲が広くて生()るものに強く力を行使できるが、反対に枯れた状態では作用し(づら)い面が()る。

 そして、生物系の御業は()れを顕現できない代わりに、成長に関わる操作が可能と()われて()る。


 マギーは(つた)に繋がった生の草で(こしら)えられた網を持って空を見上げる。

 というか(つた)は一本も生えて()い草原だったのだが、何時(いつ)の間にかマギーが種を植えて成長させたようである。


「[植物の御業よ(あれ)を育め]」


 (つた)は網を携え(またた)く間にぐんぐんと伸びて()き、悲しい声を高らかと振り()(なが)ら風を切り裂き()ちて()く、バルパルへと向かって網を広げ包み込んだ。

 か細い(つた)に力は無さそうでも網は力強く無難に受け止める。他人の気が発散されていれば本来分解されてもおかしくは無いのだが、バルパルの気が弱まって()るのも()る事(なが)ら、マギーは地面から生えた(つた)を直接握り締めて気を伝えて()る。

 ()れは剣を御業の気で(まと)うが(ごと)く状態で、減衰も干渉に()って消える事も無い。言わば(おの)が手足が伸びた状態である。

 (つた)に繋がった網は(みずか)ら宙を浮きバルパルを(たら)えゆっくりと派出所裏の草原に降りて()く。


「――ぴぃゃぁぁ――」


「……では、飛翔訓練は此処(ここ)(まで)にして終了と(いた)します」


「はい……」


 リーシャもメイリア神官長も眉尻を下げて少し残念な子を見る眼差(まなざ)しで、唯唯(ただただ)()の網に(とら)われた珍獣を見詰めるだけであった。


---


 (さて)、遅れ()(なが)らリーファ様の案件に()いてだが、(あれ)()う、バルパルの御昼を済ませようと聖堂の地下通路へと4名と1匹が向かった時まで(さかのぼ)らなくては()らない。


此方(こちら)の都合に付き合って(いただ)いて仕舞(しま)い御足労掛けます」


(いや)、構いません。どうせ此処(ここ)ら辺りも本来は巡回をせねば()らないのだから、()の様な折があれば巡回(つい)でに何時(いつ)でも寄せて(いただ)きます」


()(おっしゃ)って(いただ)くと助かります。あ、此方(こちら)の部屋に保管して()るのですよ。バルパル1/4だけですからね! ()れ以上は(また)食べ過ぎて御昼の後の飛翔訓練に連れて()けなく()りますよ!」


「ぴゃゃぁあ」


 矢張(やは)り氷漬けの魔落魚なのだがリーファ様に無用の長物(ちょうぶつ)と言わしめた()の無駄に長い図体(ずうたい)は見る影も無く短く切り落とされて()る。

 まあ、バルパルには関係ないことで現在ぺろぺろと氷を堪能(たんのう)するのに夢中である。


「では上で食事の用意をさせます。付いて来て下さいね」


「手伝う事は有りますでしょうか?」


「いえ、マギーさん、お気持ちは有難(ありがた)いのですが、余り聖堂関係者にも顔を見せない方が(よろ)しいかと思うので、準備ができる(まで)別室で待機して(もら)うことに()りますよ」


「分かりました」


--


「何だか食事の内容が戴冠式(たいかんしき)に出して(いただ)いた料理に似て()りました」


「はい、()れは()ういった儀式の料理は大体聖堂関係の料理人が担当するからですよ。手が混んで()て時間が掛かる割に派手な料理では無いですから、聖堂関係者ぐらいしか普段は好んで食べないのですよ。まあ()()ると練習場所が(おの)ずと此処(ここ)()る訳です」


「はあ、確かに手が混んで()て美味しいですけど偶には濃い目の料理とか食べたく()ります。あっ、バルパルもう(ほとん)ど食べちゃってる。お腹もぽっこりだね」


「ガッ、ゴッ、ゴッ、ペッ。びゃぁ」


「バルパルか噛み切れないで吐き出すなんて見た事無いのだけれど……」


(なん)だ? 以前見た事も()る様な……御業の欠片」




---

修正記録 2017-05-25 07:00


句点の追加


幾つかのルビを追加


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ