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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
105/345

86機嫌良く

 リーシャは(とて)(とて)も驚いた。

 だから普段は絶対に使わない御業を使った。

 ()れは幻覚系や【言魂】の御業が効きにくいと()われて()るが、人の感情を押し殺す(ため)に人相手や子供のうちは余り使わないようにと注意を受けて()るものだった。


「えっ! 何っ? 如何(どう)()ってるの?」


「びゃっあびゃっあ」


「メイリア神官長殿、バルパル、()(さま)飛翔板(ひしょうばん)を使って飛翔(ひしょう)して(いただ)きたいのです。今【水】の御業を使って()りますので、()の周囲は私の支配下に()ります。安心して(いただ)きたい」


 落着き払い淡々とリーシャは言葉を紡ぐ必要なことを、()すべき事を。


(あれ)は例の巨大魔落の魚でしょう。どうやら遊んで()る様で、伝わって()る感覚はバルパルの先程(まで)の感じと似て()る気が(いた)します。(ただ)()(まま)だと波に()み込まれて不測の事態に(おちい)り兼ねないので、至急此処(ここ)から離脱したいと考えて()ります」


「わ、(わか)ったわ! 取り()えず飛べば良いのね!」


「はい、バルパルもほら、こんな感じに飛翔板を()ばして()て」


「ぴゃっ!」


「うん、じゃあ……」


『リーシャ様! 左に、北西方向に退避して()(いただ)けますか! リーファ様も此方(こちら)に居ます!』


 何時(いつ)もは冷静なマギーも突然の事態に、若干焦りの色を隠せない様である。


「うん、分かった左に向かいます。メイリア神官長殿、バルパル、左に回避(いた)しましょう。彼方(あちら)です。リーファ様たちが居るそうですよ」


「は、はい! バルパル行くわよ!」


「ぴゃっぴゃっぴゃっ」


 波は最早(もはや)天井(まで)達して()たが、飛翔板は波よりも早く移動できる様で既に10m以上離れて()た。進路変更しなくても十分回避できるだろう。

 だが、()し闇雲に進んで壁に突き当りでもしたら、逃げ道は残って()ないのだ。


 リーシャはリーファ様の姿を確認すると、もう大丈夫だろうと確信できて【強精神】の御業を解除した。(これ)は人と接する時には礼を欠く、戦場の御業とされるものである。


「来た様だな。御前(おまえ)たち向こうの岩壁ヘ回り込むぞ」


 リーシャたちが合流した場所は丁度、作業場入口の裏側に当たり、リーファ様も()く地形を理解できている。

 チェロルの作業場、秘密基地の()る壁地帯というか巨大な柱だろうか、()れの西面は100mに渡って(へこ)んだ形を取って()る。現状では波を回避するのに持って来いの場所だろう。


「メイリア神官長殿、私もリーシャも【水】を使いますし、いざと()ればリーシャに【岩】で穴を(つく)って(もら)其処(そこ)へ逃げ込む事もできますので、御安心(いただ)きたい。(ただ)、面目無い。害意を感じ取れなかった(ため)に動き出す直前(まで)()の存在を気付けなかった。」


「いえいえ、びっくりしましたけれど此方(こちら)はリーシャさんが落ち着いて【水】を制御して、的確な指示を(もら)ったので、(あれ)だけの状況にも(かかわ)らず濡れもしないで余裕を持って回避できたと思いますよ。それから私も岩へ逃げ込むのは可能です。()う言えばリーシャさんが()の時に魔落の魚が(はしゃ)いで()る様な意味合いのこと(おっしゃ)って()ませんでしたか?」


「あっ、はい、()うですね……。何と言うか……バルパルが機嫌良く夢中に()って()る時の雰囲気に共通したものを感じたので、()しかしたら波乗りに参加しに来たのではないかと……」


「ぴゃぁあ」


「あー、確かに此方(こちら)で見守って()た限りでは、御前(おまえ)たちをとことん無視して()たな。()の場であっても一切の害意を感じ無かったからな。ああ、戻って()たか、マギーさん如何(どう)でしたか?」


「はい、此方(こちら)の安全地帯は()の位置からも【念話】は届きませんでした。恐らく作業場の位置は5、60m以上は離れて()ると予想できます」


「まあ、作業場は()の壁伝いの一角といっても南の先端部分だからな。波が其方(そちら)()くと伝えたかったのだが(いた)し方あるまいな」


「あ! ……波ですよね。最初の私が(つく)った波で既に閘門(こうもん)を越えて()る可能性が()りますよね」


「ああ、()うだったな……。(しか)し、それなら最初の波が警告と()って()るからマリオンなら完全に水路を封鎖して()るやも知れぬな。()の方が(かえ)って被害は少なく()るのだが」


「それでしたら良いのですが……」


--


 波が収まるのを待ってリーファ様一行は作業場へと戻って()た。


「一応、用心の(ため)に表の入口は岩板で封鎖して()きます」


 リーシャは横に()けてあった大きな岩板を御業で移動する。()れだけ大きければ消費も()れなりに()るのが辛い(ところ)である。


「ああ、もう少し誰でも簡単に開け閉めできる様、考えた方が良さそうだな」


 水路に入っても奥からの明かりが見えない真っ暗闇だ。懐中気灯を使って照らすと水路の先が封鎖されて()ることが(わか)る。


矢張(やは)り波の浸水対策で完全に岩で封鎖されて()ますね。

[岩よ()から()ね]

 接合部はもう残って無いですよね。よっと、(ただ)今戻りました」


 水路の横ではずぶ()れに()ったベイミィが仁王立ちをして()り、傍らではチェロルが水を消して()って()る様子である。チェロルが全く()れて()ないのは自分の御業で防いだのだろう。

 マリオン先生もどうやら濡れて仕舞(しま)った様だが、足元だけで此方(こちら)はティロットが乾かすのを手伝って()る。


「リーシャ様、外で一体何をしていらっしゃったのでしょうか? ()しかして(また)何時(いつ)ぞやと同じ様に我を忘れて、御機嫌宜(ごきげんよろ)しく波で遊ばれていらっしゃいませんでしたか? ゆっくりとお話をお()かせ願えないでしょうか?」



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修正記録 2017-05-24 06:13


お話し → お話


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修正記録 2017-05-23 10:21


「て不測の事態に(おちい)り」追加


「 リーシャはリーファ様の姿を確認すると、もう大丈夫だろうと確信できて【強精神】の御業を解除した。(これ)は人と接する時には礼を欠く、戦場の御業とされるものである。」追加

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