85自由気ままに
目下の処、リーファ様は思い思いに散らばって居た近衛騎士たちや派出所の皆を集めて、新たに発覚した魔落魚たちの習性らしき行動に就いて注意勧告を行って居る。
チェロル? 勿論、リーシャがマギーとティロットを伴い捜索に出掛けた結果、【遠見】で北東の方角を見遣れば地底湖を自由気儘に飛び回る光源を見付け出し保護者として確り一緒に居たマリオン先生と共に連れて戻ったのだ。
「然し、早い内に知れて助かりました事です。下手に皇族の御方々に此処のことが知れて仕舞いますと、中には此の地底湖を見学したいと宣う御方も居るやも知れません。襲われでもして其の後に此の話が発覚したら色々ややこしい事に為って居ました」
「……ハンナ様、其の様な有り得そうな話しを為さると本当に起きて仕舞われますのが、世の常と謂いますか何と言うか兎に角、其の様な事が有れば責任持って御任せします」
「……ええ、リーファ様、確かに然ういった事は多々有りますね。然う、タリス皇帝陛下であれば聴き付けると間違いなく翔んで来ますね。本当の意味で。ああ! ですがタリス皇帝陛下ですと間違いなくリーファ様が担当と為るでしょう。其の時は御任せします」
小粋な大人の冗句を和気藹々と交わし乍ら話しは進む。中々奥が深いというものだ。
「……其れは流石に謹んで頂きたいが、其れは扨措き、今後の巡回方針何だが一応今迄通り着水にて水面を滑走し音や波紋に反応して襲って来る魔落魚を減らして置こうと考えて居る処だ」
「一寸不敬でしたね。ええ、其の方針で宜しいかと存じます。当面は此の作業場周りや聖堂へ通じる順路を中心として居ても、バルパルや彼の巨大な魔落魚が巡回し減らして居るので問題無いでしょう」
「では其の様に、ああ、リーシャ、メイリア神官長殿への教示は此の後、何の様な予定に為って居るのだ?」
「はい、私が出掛けて居る間や今も水路で進路変更や制動、波の熟し方を練習頂いて居る様ですので、休憩を挟んだ後に地底湖に出て広い場での水上滑走訓練と派出所の敷地上空で飛翔訓練を行う予定にして居ります」
「判った。では其の予定で私とマギーさんが付いて行こう。チェロルは潜泳機の整備、機材取付けだったね。ではマリオン、ベイミィ、ティロットが補助と支援をして遣って呉」
「了解」×6
「然すれば、我々は此れで御暇しましょう」
「ああ、手伝い感謝する。だが新型の懐中気灯は施設に返して置いて呉れな。どうせ此方でしか使わないのだろ」
「いえ、皇太后陛下の御座す所を守りたるのに必要と、此れを持ちて訴えたる所存です。ええ」
「ああ、文官に申請するのに使いたいのは分かるが、其れは一応アリア殿下からチェロルへ下賜されたものなのだがな」
「……ええ、其れも然うですね」
「ってそんな悲しそうな顔をされても困るのだが、チェロル、申請が下りてルトアニアから入荷する迄の間、ハンナ様に貸して頂いても宜しいかな? 御業と凄く相性が良いらしくてな」
「うん! 良いよ! 役立つ事が何よりだよ! ヒッ! ふぎゅっ」
勿論、ハンナ様にに抱き締められて窒息しそうな悲しい悲鳴である。
「チェロル、心から感謝を致します!」
「大げさな……と言うか胸で圧迫されて苦しそうだぞ」
--
「はい、水上滑走は十分な習熟を確認できたので此の位にして、少し大きな波も体験して置きましょう」
「ぴゃぁあ」
「うん、楽しいよね。私も久し振りに燥いで居る気がするのよ」
「リーファ様、マギー、波を強く出すから気を付けて下さいねー!」
「――ああ、自由に遣って呉――」
「では、此方から彼方へ向かって行く大波を創りますので、先ずは波に対して飛翔板を垂直に向けて頂けますか。先っぽが切れて居る方が後ろですからバルパルは反対ですね」
「びゃあ」
「波が来たら後ろが持ち上がりますが少し沈める様な重心配分で押され乍ら波に乗り滑らして、越えず落ちずの間で板を操作致します。波の勢いが付いて行けば安定致しますので、横を向いたり切り替えして見たりして波での移動を試みて頂けますか」
「はい、何時でもどうぞ」
「では早速、よっ」
波が3m程上がると其の儘高さを維持してぐぐぐと向かって来る。中々の迫力である。
波に乗り下に落ちる手前で維持して居ると速度が増して行き飛翔板は確かに安定する。多少の失敗ぐらいなら御業で補正して立ち直れるから、初めて乍らに無茶をしても平気である。
左右に切返したり波先で飛び跳ねたりとリーシャも好き勝手して居る様だ。
「此れ凄く楽しいね。もう一度お願い!」
「ぴゃあぴゃあ」
「はい、次は戻る波を創り致しますね」
其処は石祠の階段から300m程北東に来ていた。前回、潜泳機で来た位置ぐらいだろうか。再び波を創り帰る為に南西方角へと波を押し流す。
先程と同じように波に乗りメイリア神官長もバルパルもご機嫌さんだ。リーシャも楽しくて回転業を披露する。
だから、其の存在に気付かなかった。
何時の間にか波は5m近くなり天井擦れ擦れに達し下は3m程抉れ8m近く為って居た。
流石に此処迄近付けば皆気付く。
其れは波の中央付近から顔を出す。
彼の巨大な魚の魔落である。
---
修正記録 2017-05-22 06:45
唯 → 今目下の処、
個々 → 思い思い
伴って → 伴い
出て → 出掛けた結果
来 → 戻っ
事ですよ。 → 事です。
御方々 → 御旁
幾つかの平仮名を漢字に変更
幾つかのルビ追加
後ろを → 後ろが持ち上がりますが
儘の → 儘
安定する → 確かに安定する
初めてで無茶を → 、初めて乍らに無茶を
創りますね → 創り致しますね
進める → 流す
「メイリア神官長も」追加
其の → だから、其の