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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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83体で覚えよう

 傍らではメイリア神官長が少々顔を引き()らせ(ながら)らも真剣に飛翔板(ひしょうばん)を形(つく)っている。()れ以上の妨害は止めて()いた方が良いだろう。


「先にバルパルの飛翔を見て上げ様と思って()たのだけど、()だ騒ぐのは不味そうだから一先(ひとま)ずチェロルの分は(つく)るよ」


「やった! リーシャ様、有難(ありがと)う!」


「済みませんがリーファ様の分は後でと()うことでお願(いた)します」


「ああ、()うだな上に戻ってから(つく)って()れ。此処(ここ)(つく)ると持って帰るのが面倒そうだ」


「はい、じゃあ、チェロルは()ず砂鉄を(つく)って宙に維持して()いて(もら)えるかな。そして、私が言霊を(とな)えたら()れを合図に砂鉄との(つな)がりを切る感じで()願い」


(わか)ったよ! 早速()って()るね! [砂鉄よ()()れ]」


「ふー、……うん。[岩よ()()れ]」


「先程も遠目で見て()たが見事なものだ。バルパルの気は直接砂鉄へと伸びて()たから予想もできただろうが、チェロルの気は数珠繋(じゅずつなぎ)()って変則に延びて()るから気の線を(しっか)りと(とら)えて()なければできぬ芸当だな」


--


「はあ、完成はしたけれども傍らで、ああも見事に鉄系岩石を(つく)られると此方(こちら)も若干鉄を含んだものに()った気がするわね」


「ふう、できた……って、チェロル此方(こっち)貴女(あなた)の飛翔板を(つく)って()るのだから、他に目移りされても困るのだけど」


「あ、あ、そんな事無いよ! 少し部屋に飾ったら良さ()な色合いと鉄分だったから、見てしまっただけで此方(こっち)の方が断然、形も色も鉄分や操作性(まで)も良いです! 感謝(いた)しますだよ! じゃあ、早速試し乗りして()るね!」


「何だか上げられて下げて下げて下げられて胸に突き刺さるものが()るわね」


「重ね重ね済みません。チェロルが失礼を(いた)しました」


「構いませんよ、くっふふ」


 構いませんよと()(なが)ら、ころころ笑うメイリア神官長に少し(ばか)り安心すると、リーシャは説明を開始する事にした。


「それでは少し(ばか)り説明を(いた)します。飛翔板は水にも浮くぐらい(とて)も軽いのですが、平らな面を下に向けて空中で落とすと()の軽さ(ゆえ)ゆっくり落下(いた)します」


 リーシャは両手で飛翔板を頭上に抱え上げ、放り上げては(つか)み取り()れを繰り返す。(ただ)落とすだけでは(わか)(にく)いが、繰り返して見せることで差は歴然として()るのが判断できる。

 勿論(もちろん)、四方に()れて仕舞(しま)わない様に多少は御業で支えて()るのだが。


()れは空中に存在する大気を乗り退()(なが)ら降りる(ため)で、大気に()()く乗らない様に立てて()れば、よっと、()の様に大気を切り退()(なが)ら落下(いた)します」


 ひゅうと風切り音を立て(なが)ら高々と舞い上げられた飛翔板が、速度を増しつつ落ちて()るのを()れ又(つか)み取って繰り返さなかった。()れは必要ないと判断したらしい。


()の事からも分かる様に飛翔板は平らな面で若干(なが)ら大気に乗ることができ、強い風に乗れば浮き上がることもできます。()の大気を平らな面に当てて乗り上がる現象を揚力(ようりょく)と言い、飛翔板は()揚力(ようりょく)を利用して上昇や下降そして進路変更することで気力の消費を節約します。

 ()れは水場でも同じ事が()えて気力の消費無しに水に浮き、推進時の進路変更には平らな面を傾け()らし水を少し(ばか)り当てて乗り上がる力の向きを進路変更方向に向けます」


「……はあ」


「ま、まあ、水場の方が()の乗り上げる力が分かり(やす)いので実際に水路の方で確認して(いただ)ければ感覚を身に付けて分かるものも()るでしょう。では()ず、あっ、バルパルも来てね。飛翔板は私が持つから、よっ、では水路で飛翔板に乗って()ましょう」


「ぴやぁ」


 若干眉がハの字に()ったメイリア神官長を連れ立って歩き行く。飛翔板を水路に浮かべる前に、バルパルは流れる様な動作で水に飛び込んで仕舞(しま)う。気持ちよさそうに泳ぐ姿を見ると、()れは()れで良いかと思わせる。


「水路に飛翔板を浮かべて乗って(いただ)けますか? ほらバルパル、()の上に乗って()て、支えて()くから」


「ぴやっ」


「最初は御業で飛翔板を動かない様に固定しますが、慣れて()れば自分の体で重心を取る様にして(いただ)きたいのです。ああ、バルパルは()れだと安定してるから重心を考える必要は無さそうだね」


 リーシャも自分の飛翔板を水路に浮かべて飛び乗ると、()(まま)進み速度を上げ作業場の半ば辺りを越えた所で、くるりと飛翔板を横に向け進路とは逆方向に重心を移動すると、進行方向に対して少し(ばか)()り上がる。

 飛翔板は水面を()(なが)ら速度を弱め止まる頃には、先程と逆方向に体を向けて()り今度はゆっくりと戻って()る。


「バルパル今のを御業を使ってでも良いから()って()て」


「ぴやっ」


 バルパルはご機嫌(よろ)しく出発し速度を上げてリーシャと同じ様に半ば過ぎで切返す。


「おー、()の調子で続けて()て」


「ぴゃっ」


 速度は先程よりも随分と早く()り、若干嫌な予感が(ひそ)めいた。バルパルが大きな飛翔板を切返し水面をぐぐぐと押し退()ける。水は()り上がって(つい)には水飛沫(みずしぶき)()ってリーシャたちに(かぶ)さって()る。

 だが、リーシャは【水】の御業持ちである。飛ばされた水粒全てを支配下に納めるくらい普段から()れて()る事なのだ。

 よしと思った瞬間後ろから声がする。


「えっ、ちょっと何? 急に波が!」

「ドッボーーン」



---

修正記録 2017-05-20 06:19


一部ルビ範囲を修正


幾つかのルビを追加


まあ、 → ま、まあ、


句点を追加


()り今度はゆっくりと」追加


潜めいた → (ひそ)めいた

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