03地鳴りと揺れ
突然の揺れだった。「ゴゴゴゴ」と地の底から壁面から、ありとあらゆる方向から地鳴りが聞こえる。次第に周りの壁が崩れて降ってくる。また奴らの御業かとフェンバーン男爵を睨むが、彼奴もあたふたしている。
いくら平気と言っても落下石に直撃するのは気分が悪い。と言うことでアリアは光幻たちを引き連れて、「すすすー」と縦穴の中央付近へ移動した。
暫くして地鳴りが収まり揺れも止まったようである。まだ小石がカラカラ転がりはするが大丈夫であろう。
先程の場所を確認してみるとフェンバーン男爵が首だけ残して岩に埋もれていた。他は全滅したのだろうか、確か【岩】の御業持ちが居たのよね。と見渡すが音も反応ない。
フェンバーン男爵の元まで「すすすー」とアリア(模)を移動する。
『お尋ねします。下には何が在るのですか?』
『貴様のそ……。いや隠していても意味はないのであるか、致し方在るまいのう。この地底には大魔窟が広がっているのである』
『それは……』
『実際にその目で見なければ理解できないのである。そして現状の危うさ……いや、そうだな、あれは遥か昔に出来て力を蓄え続けたのであろう。
我々の知っていた魔窟ではないのである。地下の奥深くに在るというのに地上にあった我らが死体を掻き集め食らうたのである』
『【瞬間転送】の御業……』
『非生物の括りから考えると、そうであるな。魔窟にすら御業を与えるか……』
『食べられたのですか?』
『我らを取り込んだ後、此のような躯体を残し支配の楔を打って番兵としたのである』
何それ! 魔窟って思考するの? 魔落の親玉なのー?
『あ、あと、先程の大きな揺れは一体?』
『うむ……、知らんのである。我も初めての経験なのである。
だがしかし今の揺れの後、魔窟の支配は極端に緩くなっているのである。
そして数日前からこの支配の緩みは始まっていたのである。この事が無ければ我は死すまで戦い続けたのである』
魔窟の親玉に何らかの変化が起きているのでしょうか。後……、そう!
『炭を上空に撒いたのは何故でしょうか?』
粉塵爆発を理解しているなら同じ保持者数が揃いそうな【砂糖】の方が隠匿性があり適している筈。【酒】の御業も訓練次第で微細化して散布出来るのではないだろうか。
『あの化物が我らがバグルス王国軍の上空で放った業を試したのである』
化物……嫌な予感がしますわね。
『化物とは一体何者なのでしょうか?』
『判らんのである。我らは半ば形骸化した威嚇、誇示の為、軍を持って展開しようと進軍途中であった。
その軍の只中、上空に【瞬間転移】の御業で現れて単身にて全ての空間を支配したのである』
ハイ、お母様に十中八九間違いなく確定ですわね。
『あの化物は黒い炭らしき粉を一面に撒き空を覆った瞬間に爆発を起こしたのである。
しかし兵たちは多少吹き飛ばされはしたが防御をある程度は展開できた為、死者こそ出さなかった。
だが、突然に兵たちがバタバタと倒れ始めたのである。我もその時に意識を失って気づけば骨である』
あーそれはお気の毒に、って言うか何か聞いたことあるわねぇ。
確かお母様に粉塵爆発の特性を教えてもらっている時でしたか、砂糖は爆発だけだけど炭は毒を出すって、だから無闇に使っちゃイケナイって、その説明の序に語って頂いた失敗談。
《お父様に頼まれちゃってね。西方に展開しつつある奴らをちょっぴり脅かしてくれって。
変な介入してバレたら、せっかく長年問題なく均衡保ってるのに、崩れかねないから嫌よって断ってたんだけど、交渉が楽になるからどうしてもって。
仕方なくちょっとふっ飛ばしてすぐ帰るつもりで、上空に炭の粉を散布して爆発させたのよー。
そしたら急にバタバタ人が倒れ始めて皆逃げ出しちゃって、私もあれはやばいと慌てて逃げ出したわよー》
うん、一部の言葉をバグルス王国軍に置き換えてルトアニア王国を付け足したらフェンバーン男爵の話に当てはまりますわね。
「ずっずんー」
『あ!』
フェンバーン男爵の胸が岩の重みに負けて潰れてしまった。
『岩を先に退かすべきだったかしら、しかし暴れられてもなー』
私の身体は食べられちゃったのかな……。と言うか私も骨になってるのちょっと見たくないですわね。
骨に成ったとして何故そこに心は残らなかったのか。アリアが聖光を放ち皆に【治癒】の御業を行使した時に意識を失った。
そして幽体となり気がついた時は既に聖光を無駄に垂れ流していた。
『もしかしたら私の体は未だに聖光を放ち続けているのかもしれませんわね。てか凄く気力の燃費良くない? 【魔練】の御業も授かっている可能性があるわね。
御業ってこんなに簡単に次から次へと授かるものなのかしら。確か死に瀕した状態にあれば御業が授かりやすくなると云われてましたわね。逆に言えば死にかけているけど死んでないかも?』
何故、心と体が分離したのか、今自分の体はどうなっているのか、疑問は尽きないが分かった事がある。
この魔窟を形成している主のような者が居て、今アリアの体はそこにある可能性が高いという事であった。
そして『ここの魔落は変じたのではなくて魔窟がホイホイ作っていたのね』と、アリアは変な所に感心していた。
御業の種類が多くなってくるとモブキャラに設定するのが大変デスよね。
他の作者さんはスキルとかどの様に決めているか気になる所ですが、私はスクリプトというwebプログラムを用いて選んでいます。バグがありそうですが。
まぁサイコロを振っていると想像して下さい。
アリアや重要な他キャラのメインの御業は最初の段階で都合に合わせて決定しましたが、それ以外は殆どランダムに任せています。
面白いのがエミリア・ラズベラン親衛隊長の水、氷、水晶。兄カルロス・ルトアニアの強肩、強歯、強頭、強骨。そして兄弟の【強骨】繋がり全て偶然です。
あと御業の欠片のドロップ。これも運任せですね。【音感】からのエピソードはこれ(運任せの偶然)を元に作成しています。
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修正記録 2017-02-22 12:02
ルビ追加
幾つかの改行追加
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今回は修正少なくて逆に不安になる。 寝ぼけてる?