ンディアナガル殲記を例とする、推敲作業の大切さ。
なんてタイトルを出してますが、別に偉そうに語りたい訳じゃありません。
単純に、毎回毎回アップ作業の度に一時間くらいかかるので、ちょっと苦労を知ってもらいたくなっただけでございます。
と言うか、私の技量が如何に稚拙で、人様が読めるだろう作品を書くのには、これくらいやらないとダメなんです、という例示ですね。
……別に、アップが遅れる言い訳にするつもりでは……ないです、多分。。。
という訳で、さっきアップした肆・第六章 第七話を例にして、苦労話を語ってみます。
そんなの要らないって人は、別に読まなくても問題ない……そんな、どうでも良い短編です。。。
───── 原文 ────
「て、てめぇえええええええええっ!」
『雷帝』の指先から走った光が、凶行に走った兵二人ばかりではなく、人質である餓鬼二人までもを貫いたのを見て、俺は怒りのあまり叫びをあげる。
そのまま、何一つ躊躇うことなく『爪』を使い、眼前の馬鹿女を抉り殺そうとした俺の腕を止めたのは……城壁の上から聞こえてきた声だった。
「い、今の光は……子供たちはっ?」
「動かないが……いや、無事だっ!
コイツらも、死んでねぇぞっ!」
「慈副官っ!
しっかりして下さいっ!」
俺の最悪の予想は外れ……どうやら、彼女は周囲一帯を麻痺させただけ、らしい。
──── 推敲後 ────
「て、てめぇえええええええええっ!」
『雷帝』の指先から走った光が、凶行に走った兵二人ばかりではなく……人質である餓鬼二人までもを貫いたのを目の当たりにした俺は、怒りのあまり叫びをあげる。
そのまま何一つ躊躇うことなく全力全開の『爪』を使い……眼前に立つこの馬鹿女を、跡形もないほどに、抉り殺す。
そう決意して振りかぶった俺の右腕を止めたのは……城壁の上から聞こえてきた声だった。
「お、俺は、生きて……いや、子供たちはっ?」
「アレ喰らったんだ、確実に死んで……いや、無事だっ!
動いてるっ!
コイツらも、死んでねぇぞっ!」
「慈副官っ!
しっかりして下さいっ!」
俺の最悪の予想は外れ……どうやら、彼女は周囲一帯を麻痺させただけ、らしい。
……260文字が、330文字になってます。
最初の端のは、動きをもうちょっと意識したくて、決意→動作停止にしました。
どっちが良いかは、まぁ、読み手の感性次第でしょうが……自分的には、こっちのが良いかなぁと。
──── 推敲前 ────
「消し飛ぶが良いっ!」
「やらせる、かぁあああっ?」
殺さなければ良いのだから、腕の一本くらい叩き切ってやろうと俺が『爪』を発動させるのと……
彼女が発動させた雷撃が俺の身体を貫くのには、若干ながらタイムラグがあった。
当然のことながら、俺の方が一拍遅く……だからこそ、『雷帝』が放つ雷撃が、殺気の欠片も込められていない、腑抜け切った代物だと気付くことが出来た。
──ちぃっ!
まるで自殺を望んでいるかのような、チャチな雷撃を見た俺は、慌てて発動しかけていた『爪』を取り消そうとして……ソレが無理だと気付く。
当然のことながら、権能ってヤツは一度出した拳と同じで……一度放とうとしたものを、そう簡単に引っ込められる訳もないのだ。
それでも……俺の命を狙っている訳でもないのに女を殺すってのは、俺の矜持が許さない。
そりゃ勿論、生きているだけで害悪のようなクズ女を殺すのを躊躇ったりはしないのだが……眼前のこの女は、ちと年増ながらも部下にする価値があると認めたばかりなのだ。
「がぁああああああああああっ!」
だからこそ、俺はただ必死に……むしろただの意地で、出した『爪』を引っ込めようと気合を入れる。
……だけど。
──無理、だっ!
幾ら俺が抵抗したところで、一度発動した『爪』を止めることなど出来る訳もなく……俺に出来ることは、無理やり体勢を崩すことで、その軌道を強引に変えることだけだったのだが。
俺の放った『爪』は、女帝の肩を掠め……大地を抉りとり、背後にいた敵軍の千人ほどを消し飛ばし、そのまだ先にあった穀物地帯を塩と変え、更には小高い丘一つをざっくりと削り取っていたのだ。
──また、威力が上がってないか、これ?
──── 推敲後 ────
「消し飛ぶが良いっ!」
「やらせる、かぁあああっ?」
殺さなければ良いのだから、腕の一本くらい叩き切ってやろうと俺が『爪』を発動させるのと……
彼女が発動させた雷撃が俺の身体を貫くのには、若干ながらタイムラグがあった。
──あ?
当然のことながら、雷の速度で繰り出される女帝の速度に俺が追いつける訳もなく……だからこそ、『雷帝』が放つ雷撃が、殺気の欠片も込められていない、腑抜け切った代物だと、『爪』を放つ前に気付くことが出来た。
いや、気付いてしまった、と言うべきか。
──ちぃぃぃいいっ!
まるで自殺を望んでいるかのような、チャチな雷撃を身体で受け止めた俺は、慌てて発動しかけていた『爪』を取り消そうとして……
すぐさま、ソレが無理だと気付く。
当然のことながら、権能ってヤツは一度出した拳と同じで……一度放とうとしたものを、そう簡単に引っ込められる訳もないのだ。
それでも……俺の命を狙っている訳でもないのに女を殺すってのは、俺の矜持が許さない。
そりゃ勿論、生きているだけで害悪のようなクズ女を殺すのを躊躇ったりはしないのだが……眼前のこの女は、ちと年増ながらも部下にする価値があると認めたばかりなのだ。
「がぁああああああああああっ!」
だからこそ、俺はただ必死に……むしろただの意地で、出した『爪』を引っ込めようと気合を入れる。
……だけど。
──無理、だっ!
幾ら俺が抵抗したところで、一度発動した『爪』を止めることなど出来る訳もなく……俺に出来ることは、無理やり体勢を崩すことで、その軌道を強引に変えることだけだった。
俺の放った『爪』は、女帝の肩を掠め……大地を抉りとり、背後にいた敵軍の千人ほどを消し飛ばし、そのまだ先にあった穀物地帯を塩と変え、更には小高い丘一つをざっくりと削り取っていたのだ。
「何、が起こった……」
「俺の、脚が、腕がぁあああああああっ!
塩になっちまったぁあああああああああああっ!」
「兄者がぁああああああっ!
兄者が、消えちまったぁあああああああああっ!」
「化け物だっ!
アイツっ!
『四帝』以上の化け物だっ!」
俺の一撃を目の当たりにした周囲は、まさに阿鼻叫喚という言葉が正しい有様だった。
『爪』の余波を受けて身体の一部が塩へと化した者や、純粋に直撃を喰らって消滅した者、俺の「力」を理解して脅える者など。
前後左右四方八方……どの方向からも聞こえてくる、怒号とも聞こえる悲鳴を敢えて意識から外しつつ、俺は自分の拳を見つめながら、軽く首を傾げていた。
──また、威力が上がってないか、これ?
……700文字が1000文字に化けてますねぇ。
幾つか足りなかった場所を追加しました。
『爪』の威力描写はまぁ、幾らなんでもへたくそ過ぎる表現だったので、もうちょっと分かりやすくしたのと……
こういう二人のやり取りのシーンって、周囲のギャラリーの存在を忘れがちなので、こうして後で追加することが多々……。
背景描写忘れたり、酷い時には地の分が一切なくて会話だけになったりします。。。
それは幾らなんでもアレなので、こうして推敲時に追加している訳なのです。
──── 推敲前 ────
「まだ農奴の餓鬼であった妾は、『神果』を口にし……あれから二十年ほど。
戦いを挑まれては殺し、挑まれては追い払いの連続じゃ。
そして……その中では、何度か命を賭けるような場面もあったものよ」
二十代後半……いや、どうやら三十に足を踏み入れているらしき『雷帝』は、明後日の方角を見つめながら、そう告げる。
──ああ。
──俺と、同じなのか。
彼女の語る言葉を聞いて、俺は静かに頷いていた。
実際、俺の時も同じで……静かに餓鬼どもと農村で暮らそうと思っていた筈の俺は、獣に襲われ、それを殺したら商人に襲われ……
商人に雇われて戦奴になったかと思えば、戦奴を殺し続ける内に商人になり、取引を反故にしようとしたアホを殺して将となり……
その意図はないのに、戦って戦って戦って……気付けば征左将などという地位になっていたのだ。
この世界は戦いに憑りつかれているようにイカレていて、偶然に力を手に入れた彼女も、俺と同じ……巻き込まれただけで、望まぬ地位に就いているのだろう。
「髪を全て使い果たした妾は、周囲から化け物扱いされ……それ以降、髪を全て使うのは、辞めたのじゃ。
おかげで生まれ出でてより二十年、未だに夫すら出来ぬ」
──それは、単に強すぎた所為なんじゃないか。
俺は咽喉から出かかっていたその言葉を必死に飲み込んでいた。
事実、俺も化け物呼ばわりされているし……恋人が出来ないところまでもが、俺とコイツは似通っているらしい。
尤も俺は、恋人が出来ない代わりに、幼女の妻や正妻なんて訳の分からないものがくっついて来ている訳だが。
「じゃが、まぁ、これも運命、だろうな。
これほど強き殿方が、万の兵にも臆さず、妾を超える異能を誇り……
堂々と妾を奪うと言い放ってくれたのじゃ」
「……ん?」
何となく……何となくだが、女帝の告げる言葉に不穏当な響きを察した俺は眉を顰める。
とは言え、俺が口を挟む間もなく、彼女の言葉は続くのだが。
「そんな御方に、髪を失い醜くなった、妾を、その……捧げる訳には、いかぬであろう?
じゃから……つい、の?」
──待て。
──待て待て待て。
確かに俺は「彼女の全てを奪う」と言った。
電撃喰らった激痛への意趣返しと、彼女の部下を頂いてやろうという物欲を兼ねてそう言ってやったのであって……別にこの三十も近いおばさんを口説こうと思って言ったのではなく。
「で、では。
妾の……『雷帝』の敗北じゃ。
これからよろしく頼むの……我が愛人」
──── 推敲後 ────
「まだ農奴の餓鬼であった妾は、神より与えられた『神果』を口にし、この力を得て……あれから二十年ほど。
戦いを挑まれては殺し、挑まれては追い払いの連続じゃ。
そして……その中では、何度か命を賭けるような場面もあったものよ」
二十代後半……いや、どうやら三十に足を踏み入れているらしき『雷帝』は、明後日の方角を見つめながら、そう告げる。
──ああ。
──俺と、同じなのか。
彼女の語る言葉を聞いて、俺は静かに頷いていた。
実際、俺の時も同じで……静かに餓鬼どもと農村で暮らそうと思っていた筈の俺は、獣に襲われ、それを殺したら商人に襲われ……
商人に雇われて戦奴になったかと思えば、戦奴を殺し続ける内に商人になり、取引を反故にしようとしたアホを殺して将となり……
出世したいなんて意図はないのに、戦って戦って戦って……気付けば征左将などという地位になっていたのだ。
この世界は戦いに憑りつかれているようにイカレていて、偶然に力を手に入れた彼女も、俺と同じ……巻き込まれた戦いを勝ち続けただけで、いつしか望まぬ地位に就いていたのだろう。
「髪を全て使い果たした妾は、周囲から化け物扱いされ……それ以降、髪を全て使うのは、辞めたのじゃ。
おかげで生まれ出でてより二十年、未だに夫すら出来ぬ」
──それは、単に強すぎた所為なんじゃないか。
俺は咽喉から出かかっていたその言葉を必死に飲み込んでいた。
事実、俺も化け物呼ばわりされているし……恋人が出来ないところまでもが、俺とコイツは似通っているらしい。
尤も俺は、恋人が出来ない代わりに、幼女の妻や正妻なんて訳の分からないものがくっついて来ている訳だが。
ちなみに『雷帝』は髪全てを雷撃の代償としても、毛根までは捧げていなかったらしい。
流石に毛の一つも生えてない丸禿だったら……幾ら女性とは言え、さっきあれほど頑張って『爪』を逸らそうとはしなかっただろう。
まぁ、女性の価値は容姿だけではないのだが……多少年増とは言え美女の範疇に入る女性と、丸禿の生き物とを比べれば、やはり救おうとするモチベーションにかなりの差が出来るものだ。
「じゃが、まぁ、これも運命、だろうな。
これほど強き殿方が、万の兵にも臆さず、妾を超える異能を誇り……
堂々と妾を奪うと言い放ってくれたのじゃ」
「……ん?」
何となく……何となくだが、女帝の告げる言葉に不穏当な響きを察した俺は眉を顰める。
とは言え、俺が口を挟む間などなく、彼女は言葉を続けていた。
「そんな御方に、髪を失い醜くなった、妾を、その……捧げる訳には、いかぬであろう?
じゃから……つい、の?」
──待て。
──待て待て待て。
確かに俺は「彼女の全てを奪う」と言った。
電撃喰らった激痛への意趣返しと、彼女の部下を頂いてやろうという物欲を兼ねてそう言ってやったのであって……別にこの三十前後と思われるおばさんを口説こうと思って言ったのではなく。
「で、では。
妾の……『雷帝』の敗北じゃ。
これからよろしく頼むの……我愛人」
1040文字が1270文字に。
神に貰ったという文字追加と、毛根の件を描写しました。
テンポは悪くなりますが、毛髪の話題は某所で騒ぎになっていますので、しっかり書かないと。。。
と思った訳じゃありませんが、まぁ、代償として使った部分でも、普通に生えれば戻るんだよ、という説明のための一文です。
あと、我が愛人を、我愛人……中国読みで「夫」や「妻」を意味する表現へと変えてみました。
と、まぁ、こうしてアップ作業時に大幅に描写を変更するため、アップ作業が遅れていく訳です。
大体、1割~3割の増量となるのが普通です。
と言うよりも、推敲前の文章はちょっとばかり描写やテンポに難がありまして、目で追っていくのに妙に疲れるんですよねぇ。
だからこそ、こうして……自分なりのテンポで刻みなおすことで、なるべく読みやすいようにと考えてはいます。
効果があるかどうかは不明ですが。
という訳で。
自分なりの意見ですが、文章力のあるなしってのは……ああ、勿論天性の技量的なものもあるでしょうけれど、自分みたいな凡人としては、「如何に原文壊すのを恐れずに推敲の手を加えるか」「今のままでもいいやという怠惰に負けず、目についたところを推敲するか」が文章力のあるなしを左右していると思っています。
だからこそ、書き手の皆様も、推敲を抜かず、頑張って自作の質を高めるために頑張って下さいませ。
読み手の方々は、こうしてアップ作業一つでも苦労しているので、あまり催促して追い詰めないでくださいね。。。
……自分のアップ遅れは、どちらかというと飲み会か怠惰かという場合が多いんですけどね。。。