表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最凶魔王は転生しても止まらない  作者: 桜乃蛍
長いぞプロローグ
1/8

プロローグ1 転生した魔王

我は嘗て魔王であった。

魔導の深奥を垣間見た我は、歴代魔王が束になっても太刀打ち出来ぬほどの力を持ち、魔神に至るまであと一歩と言ったところであったか。


最強魔王である我は好き放題やっていた。

魔導の深奥を極めるため、魔物、魔族、人族など種族を問わず生体実験を繰り返し、あらゆる種族の怒りを買った。


有象無象に何も出来ぬと侮ったのが運の尽き。

飼い猫のユキちゃんを人質にとられ、成すすべなく魔術のすべてを封印され、我は勇者どもに討たれた。



強力な魂を持っていれば、転生時に記憶や能力を引き継ぐ秘術が使用可能である。

我は魔王。死んだ所でなんら支障はない……ハズだった。







我……僕は魔王だった。

勇者共に討たれ、この魔力の無い世界(・・・・・・)に転生した。

世界自体に魔力がない。魔力を封印され、体外に魔力を放出できない僕は、魔法の使えないただの人間だ。

なお悪いことに、この世界でこの真実を語れば、厨二と罵られる。僕はただのオタクだというのに。

…話がそれたが、一人称を変えたのもこのためだ。


この世界では魔法が使えないと知っての絶望感は半端なかった。

魔導は総てを凌駕する。実際他の力と魔導との間には越えられない壁があった。転生前は魔導以外の弱い力を磨く者の考えは理解できなかったが、魔力を封じられた時に他の力があったならと今は反省している。


僕は魔神に成りたかった。それは今でも変わらない。

魔法のないこの世界では魔神にはなれない。

しかし僕は知っていた。

この世界は勇者の世界(・・・・・)であると。

ならば元の世界にも戻れる。

この世界では魔力の封印の術式の解析すらままならない。

今は元の世界でもやっていけるように、力を付ける時だ。








さて、僕はこの世界では充分過ぎる力を得た。

決して厨二ではない。

ステータスの魔法すら開けないため、スキルとして定着出来ているかは微妙だ。

最終確認として、僕はあるヤクザの事務所を訪れた。


「なんじゃわりゃぁ!!」

「すっぞおらぁ!」

「てめぇ何処の組の者じゃぁ!!」


………あれ?チンピラ?

気を取り直して戦闘実験を開始する。

僕はこの世界では“気”と呼ばれる力を発動する。

身体活性と強化を同時に行う秘術…と言われていたが、これも魔術の一つだ。魂から供給される魔力を通常より多く肉体に馴染ませ、身体能力を向上する。体外に魔力を放出しないため、封印状態の僕でも発動できる。最初はこんな小規模魔術なんて…と思ったものだが、これが意外と使える。

魔導は奥が深い。


気の発動が終わったところで、チンピラ共がこちらに向かって来ようとしていた。しかしその動きは止まって見える。

軽く拳を振り抜くと、チンピラの頭はトマトのように赤をぶちまける。近くにいた数人をトマトソースに変えてやると、後ろに控えていた数名は顔を真っ青にしつつ銃を構える。


「ひっヒィィィ」

ガン!ガン!


僕に向けて発砲された弾丸は二発。一発目は気を手に集め、手刀で受け流してみる。手には傷一つなく、痛みもなかった。

二発目は手のひらで受けて掴んでみた。やはり痛みはなく、手のひらには弾丸が残る。ドラゴン○ールの御飯を思い出す。グレートタイヤマンだ。

折角なので脚に気を集め、思い切り踏み込んで見た。


地響きと共に崩れ落ちるコンクリのビル。

下敷きになるのは面倒なので壁をぶち破って外にでた。



「順調そうですね!ごしゅじんさま♪」

外にでると、倒壊するビルの轟音にまぎれ、一人の少女が声をかけてくる。

「ああ、やっとお前に追いつきそうだ。あと、僕のことはおにいちゃんと呼べ」

「はぁい、おにいちゃん☆」

こいつは前世で飼っていたセイントジャガー(ねこ)のコユキだ。

僕が討たれたあと勇者どもにテイムされかけ、慌てて自害したそうだ。コユキは転生後の引き継ぎの秘術を使えない。

しかし運良く転生の折り、神が二君に仕えぬ服従心に心打たれて、コユキが望むままに転生させたという。

コユキは僕の近くで、対話可能な形で転生することを望んだらしい。コユキは双子の妹として転生した。

確かに可愛がってはいたが、そんなに懐いていたのかと、その話を聞いて嬉しくなった。


しかし妹に「ごしゅじんさま♪」なんて呼ばせて喜んでいると思われては辛い。改めさせようとしているが、直らない。

こいつわざとやってるんじゃなかろうか…


「そろそろ元の世界に戻ってもいい頃合だろう。転移魔法陣の検知を頼む」

「あいあいさー☆ごしゅj…おにいちゃん♪」


ちなみにコユキの独特のイントネーションは僕がやらせている。

可愛いは正義だ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ