第三話 名も無き神の挑戦
わたしたちは森の中の小さな村に着き、まず何を思ったかというと、
「この切り株、バームクーヘンみたい」
「ああ、バームクーヘン食べたいですね」
「確かに腹は減っている。減っているけど! 村入ってすぐにそんなこと言ってるんじゃない!」
ツァプフェンクロイツだったときは「こんなもの、庶民の食べ物だ」と言ってほとんど食べていなかったが、今思えばとんだ高級菓子だったな。家出してから色んなものの大切さを知った。ちょっと知りたくなかったけど。
「アイゼンディーテさん、お腹がすきました。どこかで食事でもしましょうよ」
「唐揚げでも食べたい気分っす」
「そんな金がどこにあるというのだ! お前らは雑草でも食ってろ!」
「金がないなら村長からたかってくればいいじゃないですか」
「早速村を追い出される気か!」
「まあまあそんなこと言わないで、こっち来てくださいよ」
「ちょっと待て! 本当にたかりに行くんじゃないだろうな!」
「その通りです」
「おい!」
ラーナは村の中で一際目立つ大きい建物の方へ歩いていった。他の建物はみんな木造だが、それだけはレンガ造りだ。なんか不自然。
「……あいつ、放って置くと何しでかすか解らないぞ」
「本当っすね」
呆れてものも言えぬ。言ってるけど。
「とにかく、追いかけるぞ!」
ラーナがそのまま村長さんの家らしき建物に入っていったのでわたしたちもそれに倣って入っていく。玄関には燭台が二つあって、どちらにも火が灯っている。あちっ。
ラーナのヤツはわたしたちが来たのを察したようで、村長に話しかける。
「お久しぶりです。村長さん。こちらは私のお供のアイゼンディーテさんとテールドルトさんです」
村長がこちらに目を向けてきたので、わたしたちは軽く会釈をした。って、ちょっと待て。わたしはこのチビのお供になったつもりなどないぞ。勝手に立場を下げるな。
「ということで、お供のあなたたちは一旦下がってください」
いやだから、わたしがいつお前のお供になったというのだ。仕方ないから出て行くけど。
五分ほどでラーナも出てきた。結構早かったな。
「おい、どういう話だったんだ?」
「この村の奥にある森の、さらに奥にある大樹が枯れかかっていて、それは魔物の仕業だというんです。その大樹の奥にいる魔物を退治してからまた村長宅の奥の部屋に来いって言ってました」
「奥ばっかりだな。じゃなくて、また魔物と戦うのか。まさかさっきの虫より危険なヤツじゃないだろうな」
「170センチの蜂がうじゃうじゃいるという話でした」
「生きて帰れるわけないだろ!」
肥料になれとか言うなよ。そりゃ十歳で死にたくはないからな。
「今のままで挑んでも勝てるわけないですし」
「まあそりゃそうだな」
「とりあえず食事しましょう」
「だから金がないんだってば!」
「だから金がないなら村長から」
「そのために魔物退治を引き受けたのだろう! 何なんだお前は!」
「仕方ないですねぇ。そこら辺に飛んでいる鳥でも狩って焼いて食べますか」
「火はどうするのだ」
「こんなこともあろうかと、実は燭台の火を盗んできました」
矢の羽に火がついているのをラーナが見せてくれた。なんというか、お疲れさま。
「……用意周到だな。ってか、よく見つからなかったな」
「見つかりましたよ。見つかったというか、許可を取ってから戴きましたから」
「それって盗むって言わないんじゃ……」
本当に不思議な子だ。
ラーナが丁度近くを飛んでいた鳥を射止め、拾って持ってきた。それ食べられるのか? 食べる物が他にないから仕方がなかったが、好んで食べるわけではないのだからな。
味は微妙だった。というか不味い。二度と食べたくない品だ。
「さて、大樹へ行きましょうか」
デザートに雑草を食すと、わたしたちは立ち上がり、村長さんの家の裏側から続いている道を辿って歩いていくのであった。
そして道が長い! 大樹に着くまでに軽く二時間はかかったぞ。暗くなってきた。昼間でも薄暗かったから今は夕方なのではないのかな。
「で、ここで何をしろと?」
「中に入って蜂退治ですね」
「中に入れるのか」
中に入って探検できるほどの大穴が開いてたら枯れてなくとも倒れると思うのだが。
「中は暗くてじめじめしておるな。全く見えないぞ」
真っ暗だ。
「大丈夫です。こんなこともあろうかと、火をもう三本戴いてきました」
「……本当に抜かりないな」
アホだけど。
火を持っていても全然見えない。お互いの顔くらいは認識できるけど。
「みなさん、ここらへんの地面に天然の降り階段があるので気をつけてくださいね」
全く見えないのによく解るな。こいつは一体何を知っているんだ?
階段らしき大きな段差でわたしはこけてしまったが、下に落ちてみると光が見えてきた。これでこけることもない。
「下で明かりが灯っているようですね。降りてみましょう」
「早速戦闘か? わたしの槍の刃が欠けたままなのだが」
「魔蜂族の体は軟らかいですから、大丈夫ですよ」
「お前が言うと心配になってくるのだが」
下に降りると広い場所だった。が、中央に一本の大きな柱、といっても木の根っこだが、が立っていて、そこに巨大な六角形の集合体がくっついている。しかし驚くべきはそこだけではない。その蜂の巣の真下に、黒いマントを羽織った人間が立っているのだ。巣からは蜂が絶え間なく出入りしている。
「貴様、何者だ」
するとその男は振り返る。
「おやおや、あなたたちこそ何者ですか」
そいつは40くらいの顔をしていて、マントだけでなく髪も靴も、何もかもが真っ黒だった。見ているだけでも嫌悪感のする笑みをたたえ、こちらをじっと見つめている。
「まず貴様の用件を聞いてやろう」
「その前に、あなたからですよ。アイゼンディーテ・ベルゾルド・ツァプフェンクロイツさん」
「わたしの名を知っているとは、なかなか世情に詳しい風ではないか。いいだろう。目的を話してやる」
わたしは一息置いて、また喋り出す。
「お前も、ここに来る途中に村を通っただろう? そこの村長に頼まれてな。魔蜂族の群れを駆逐するようにと」
「無理な依頼を引き受けたものですね、あなたも」
「なんだと? 無理だというのなら試してやろうではないか。その魔蜂をこちらへ寄越せ!」
「仕方ありませんねぇ。それでは、ここで死んでください。肥料にでもなってこの木を育てたらいいでしょうかね。ハッハッハッハ!」
「おい待て! 逃げるな! まだお前の話を聞いていないぞ!」
男は光の粒子となって消えていった。そして後ろで音がする。
「……岩の壁で出口がふさがれています。何かしらの仕掛けが作動したのでしょう」
「逃げられないというわけか」
やば。ちょっと調子に乗りすぎたかな。魔蜂たちがこちらを見つめている。
「一体ずつ片付けるしかないか」
「そうなると厳しいですよ。時間もかかりますし」
「そうだな。ではどうすれば……って、うわっ! なんだいきなり!」
四匹の蜂が一斉に突撃してきた。てか羽音がうるさい。
魔蜂族の針は毒こそ持たないものの、太いので当然殺傷能力は高い。
「おいお前ら! こいつらの針には充分気をつけて戦え!」
「大丈夫ですよ。まともに食らっても体に風穴が開く程度ですから」
「だから何が大丈夫なのだ!」
お前は腹に大穴を開けられても生きていられるのか?
また蜂が突進してくる。動きは速いが直進ばかりなので避けるのは容易だ。だが逃げてばかりでは勝てるわけがない。そろそろ反撃するか。
わたしは槍を構えたが、いつの間にか囲まれたようで、周りを見渡せば蜂だらけだ。これはまずい。動ける範囲が限られているため、十匹でも同時に来られたら回避ができない。だが、逆に反撃のチャンスでもある。背水の陣といったところか。
わたしの目の前にいる蜂がやや下向きになった。これは前進の準備だ。素早く突きを繰り出すために槍を少し上に上げたつもりだったが、重いのでうまくバランスがとれず、振り上げる形になってしまった。丁度そこに蜂が体当たりをしようと前進してきたため、振り上げた槍で叩きつけるしかなかった。刃が欠けていたのでその方が良かったかも知れぬが。
一度叩きつけても起き上がってくる。腹部に突きをかまし、続いて横から柄で殴る。地面に倒れたので槍を振り上げて叩きつける。これでやっと一匹だ。
「うわっ! 何だお前ら!」
幾匹かの魔蜂がわたしの周囲の空間を占領していた。逃げ場はゼロだ。というかその前に他の二人も狙えよ! わたしだけ狙うな! おいそこのチビと盗賊! ぼけっと見てんな!
攻めるしか手が無いので槍を滅茶苦茶に振り回し、逃げ道の確保を図るが、この黄と黒の縞々模様は一歩も譲ってくれない。しまいには後方から刺されるという微妙な戦況に。右の袖に穴が開き、その付近は赤く染まっている。痛い。そのまましゃがみこんでしまう。
これでもうお終いか、と思ったが、突然蜂たちが別の方向を向き始める。バランスを崩して地に伏しているものもいる。同じほうを見てみれば、ラーナが弓を構えて佇んでいる。
わたしを取り囲んでいた虫がそちらへ移動し、ようやく動けるようになる。が、右腕の痛みのせいで槍を振り回すことはできない。赤い液体がどくどくと流れ出していて、広い範囲をレッドカラーに染めていく。わたしは衣服の糸を一メートルほど抜き取って切り取り、傷口の上のほうできつく結んだ。
あちらではラーナが奮闘している。迫り来る蜂を一匹ずつ撃ち落とし、追いつかれそうになったら逃げる。そんな戦法だ(チキン戦法……いやなんでもない)。
「アイゼンディーテさん、そろそろ矢も切れてきました。戦えなくなってしまいますよ」
「早いな。そんなに持ってきてなかったんだな」
「ええ。倒しても倒しても湧いて出ますし、巣ごと焼き払ってしまいますかね」
「ダメだろ! この木も燃えるぞ! それと火はどうするんだ? 先ほどの火は消えてしまっただろう」
「実は火種ごともらって来ました」
「今までの全部火種から移した火だろ!」
「まあそれはいいとして、私はここらへんから火矢を放つんで、火がついたら巣を木から落としてください」
「腕をやられてまともに動かせぬのだが」
こういうときのアホ盗賊だ。……わたしの周りアホばっかりだな。
「おい! そこの山賊もどき! 端っこで休んでないでこっちへ来い!」
「もどきじゃないっすよ。れっきとした山賊っす」
「いいからさっさと来い!」
蜂は来るな!
「何すか?」
「巣が燃え始めたらこいつで落としてやれ」
「えー、自分でやってよ」
「この右腕を見て解らんのか!」
「あー、絵の具こぼしたんだね。お疲れ」
「どんな頭をしてたらそのようなふざけた解釈が出来るというのだ! いいから早く巣の下でスタンバイしてろ!」
「ういーっす」
馬鹿にしてるのかこいつは。
さて、肝心のラーナの方はというと、蜂から逃げ回りながら火のついた矢を飛ばしている。狙いは完璧なのだが、軌道上に魔蜂が飛び込んでくるためになかなか当てられない。
「むかつくやつらですね」
「お前が言うな!」
わたしは端の方に退避し、木の根っこの裏に隠れる。
そして山賊のほうは、虫どもが邪魔で巣に近づけずにいる。怯えているのか?(わたしが言うな)
「ついに当たりましたよ!」
視線を向けると、縞々の虫どもの住処が燃え上がっている。きっと矢を何本も撃っただろう。そこへテールドルトが槍を構えて突撃。道を塞ぐ蜂を蹴散らし(ほとんどタックルだったけど)、あっという間に巣の真下まで到達。槍を高く振り上げ、太い根と巣が繋がっている部分に叩きつけ、へし折った。そして素早い動きで後退し、怒った様子の魔蜂族を次々と迎撃する。その時のやつの動きは疾風の如く。薙ぎ払いと振り上げだけで二十の個体を殲滅。
……あいつ、大人の男でもできないようなことを平然とやってのけたぞ。
そこで入り口を塞いでいた岩の壁が引っ込んだ。テールドルトは帰り際に数多くの蜂を斬りつけ、誰よりも早く部屋を出て行った。そして残った数匹の蜂をラーナが処理。駆逐が済み、わたしたちは階段を上り、木の外に出て行った。
「巣の中にいた個体は、全滅でしょうね」
「燃えてた巣、放ったらかしで大丈夫だったのか?」
「大丈夫ですよ。床は土ですし、燃え移るものはありませんよ。根からは大分引き離したようですし」
「……死角なし、だな」
本当に大したヤツらだよ。
「なあテールドルト、お前」
「ああ疲れたー」
「……そりゃ疲れるよな。蜂の群れを切り抜けたのだぞ」
「どうだった?」
「別にすごいとは思っていないぞ! わたしだったらあれを一人で殲滅して帰ってこれる!」
「その割には苦戦してたみたいっすけど」
「うるさいな! あのときは本気を出してなかったんだよ!」
我ながら情けない言い訳。
さて、そろそろ帰ろう、とわたしはラーナの方を見た。
「早く村に戻りましょう」
「逆にそれ以外に選択肢ある?」
そんなわけで早々に帰還。村長宅へ乗り込む。その時に村長の奥さんに右腕を縫ってもらった。外科医として優秀な人らしい。
村長さんに案内され、村長宅の地下へ。さすがに明かりはある。牢屋に続いてそうな石の螺旋階段を降りきると、やはり牢屋が、なんてそんなことはなく、鉄格子の向こうに小さな水晶玉らしき球体が。……元々牢屋だったよなここ。
「……村長さん」
「ああ、これは地の球と呼ばれていて、大地を支えているとされている宝玉だよ」
扉を開けながら説明してくれた。
「この村の長がずっと昔から一族で管理してきたが、ついに子供も生まれず、私の命もそう長くはない。だから、これを君に託そうと思う」
おい待て。それはいくらなんでもこいつには荷が重すぎるのではないか? 蜂退治しただけでこれとか。つーか、他に任せられるやつはいなかったのか?
「これは相当希少価値の高いもので、多くの収集家が狙っている。いいかい? これを所持していることを、誰にも知られてはいけないよ。そして、誰にも渡してはいけない」
わたしたちがいる時点で誰にも知られてないわけはないのだがな。
「村長さん、私には荷が重過ぎます」
そうだそうだ。こいつに任せるのは馬鹿のやることだ。こいつなら手を滑らせて割りかねないぞ。
「しかし、他に信頼できる人がいない。君だけだ。それに、時間がない。これからの短い時間の中で、村人の中から選ぶことはできないから」
「……」
どれだけ信用のおけないやつらなんだよ。
「解りました。ありがたく受け取らせていただきます」
ラーナが宝玉を受け取ると、また階段を上り、地上へ戻った。それから礼金を受け取り、外へ。やったー。所持金が増えた。
「さて、これからどうする?」
「早速これを売り払いましょう」
「いいねェ! これで一生遊び放題だよ!」
「アホかお前らは! 大地を支えてる宝石だぞ!」
「まさか信じてるんですか?」
「いや信じきってはいないけど、もし本当のことだったら困るだろう?」
こいつらとんでもない。村長さん、渡す人を間違えたみたいだな。
「もういい! これは私が管理する。よこせ!」
「ダメですよ! あなただったら即行で売っちゃいそうですから」
「お前だろ!」
そういえば、何か訊きわすれてたことがあるような気がする。ああ思い出した。あの男のことだ。
「ラーナ、あの老いぼれに訊きたいことを思い出した。もう一度村長の家に入るぞ」
そういうわけで村長宅へ再度侵攻。勿論ラーナが先鋒。質問の内容は伝えてあるぞ。
「すみません村長さん、訊きたいことがあるんでした」
「何だい?」
「ここらへんで、黒マントの奇妙な男を見かけませんでしたか?」
「黒マントの? 知らないなぁ。最近あまり外に出てないから。よく森に狩猟に行ってるアルヒェルに訊いてみたらどうかな」
「……アルヒェルさんですね。解りました。ありがとうございました」
そして退出。何度出入りしてることか。
「さて、アルヒェルとやらを探しに行くぞ」
「アルヒェルさんは、この時間は狩りに言ってることが多いですね」
「夜に狩猟か。夜行性の動物でも狩ってるのかね」
「昼にもやってますよ。朝と夕方に休むんです」
「……お前、本当に何でも知ってるのだな。村長からも信頼されているようだし」
何者だよ。まるで天から降ってきたようなヤツだな。神様の生まれ変わりか?
「それでどうするのだ? 行くのか? アルヒェルのところに」
「今行っても忙しくて相手にされないだけですから、朝になってからにしましょう。私たちも疲れていますし」
「ああ。そうだな。だが、朝は平気なのか? 寝ていたりしないか?」
「心配無用です。あの人は夕方に寝ます」
「……お前、ストーカーの如く詳しいな」
「ありがとうございます」
「褒めてるんじゃないのだからな!」
********
宿で朝まで休み、ついでに食事もしてから森に出かけることにした。もちろん食事は昨日のものよりいいものだぞ。それでも質素だが。
「なあ、アルヒェルってどんなヤツなんだ?」
「なんかすごい人です」
「お前のその返答がすごい」
漠然としすぎている。そんなんだったら世界中にアルヒェルが散らばっているぞ。わあ恐ろしい。
だがそいつはすぐに解った。森の中でハンモックかけて寝っ転がっている輩なんぞ、今私たちの目の前にいる人間以外、あまりいないであろう。
「貴様がアルヒェルか」
「……何だお前は。私に何用だ」
するとそいつは網から飛び降り、きれいに着地した。
背はわたしから見ればなかなか高い。凛々しい顔立ちをしていて、その眼光は鋭い。額に何やら巻きつけていて、左耳の後ろ辺りに薄緑の羽をはさんでいる。いかにも狩人っぽい感じの……女の子。最初見たときは男かと思った。ちなみにわたしよりは確実に年上。どうでもいいか。
「森の番人とも呼ばれている貴様に訊きたいことがひとつだけあるのだが」
「いいだろう。答えてやる。……別に番人とか呼ばれてないけど」
何かキャラ被ってるな。威圧感では圧倒的にこちらが劣っているが。
「このあたりで、黒マントの奇妙な男を見かけなかったか?」
「黒マントの人間……、ああ。昨日見たよ。木の向こうで高速移動してたのを見た。まあ、私からすれば静止画をスライドさせているようにしか見えなかったがな」
さりげなく自慢すんな!
「それで、そいつはどこへ向かった風だった?」
「多分、海のほうに向かったんじゃないかな。で、何だ? その人間を追っかけまわしてるのか?」
「まあ、いずれそうなるだろうけど。ヤツには借りがあってな」
「なるほど。…………ああ、なんだ、ラーナの知り合いか。今更気づいたよ。……何か心配になってきたな」
やっぱり?
「よし、私も行ってやろう。暇だしな。お前たちだけだと危険そうだし」
「……確かにその通りだ。その通りなのだが……」
「礼はいらないぞ」
「別にお前に感謝などしていない!」
「あっはっは、素直じゃないなぁ」
「うるさいな! ついて来るならさっさと歩いてこないと置いてゆくぞ!」
またうるさいやつが一人増えたよ。どうなることやら。
「おいお前ら早くしろ!」