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白銀のホフンティアψ  作者: 54
暗い雨上がりの章
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第十一話 運命はすぐそこに

 砂漠の集落で見たような白い石でできた建造物が点在している。古代の神殿らしき建物もある。柱の真ん中が太くなっている。中には人の彫刻が飾られており、外の壁は完全ではない。


「昔栄えた国らしいではないか」

「きれいな形で残ってる……ってわけじゃなさそうですね」

「そりゃあ、何千年も昔の建物だし、水没までしちゃって、完全な形で残ってる方が珍しいだろ」

「歴史の重みを感じるっす」

「お前が感じるのは金の重みだけだろう」


 金銀財宝が眠っていそうな遺跡ではあるな。こいつらの行動には注意しないと。


「これだけ広いと、どこに向かっていいのか解りませんね」

「……おや? おい、床に穴が開いておるぞ」


 階段つき。まるで馬鹿にしておるようだ。罠かも知れないが、他に進むべき道がない。この階段は不思議なことに水に沈んでいない。穴の入り口が何らかの力で水を弾いているようだ。わたしたちは階段を降り、神殿の地下ともぐっていく。初めのうちは白い岩の壁が横にあったのだが、ある地点を境に茶色い岩がむき出しになってきた。


「違う層が現れましたね。さてアイゼンディーテさん、ここで問題です。このように、突然茶色の土の層に変わりました。このことから何が言えますか? 次からひとつ選んでください。

 まず一つ目、『ア・神殿の地下まで白い石で作るのが面倒だった』

 そして二つ目、『イ・なんとなく雰囲気を出したかった』

 最後、『ウ・絶対神ラーナの時代がもうすぐ到来する』

 どれだと思います?」

「まともな選択肢がないような気がするんだけど」

「よし解った! エの『ラーナがここで果て、数億年後に化石として発掘されるだろう』」

「いやいやそれもどうかと思うよ」

「残念ながら不正解です。アイゼンディーテさんも勉強が足りませんね。正解はいうまでもなくウです」

「正直に言っておくが、お前の時代は何億年待ってもやってこないと思うぞ」


 というか少しふざけすぎではないか? もう少し真面目な話をするとか、そういった行動はお前らの頭にインプットされておらんのか?


 螺旋階段を降りきると、一直線に延びる通路に出た。横道も何もなさそうだ。迷う心配がなくて良いな。ここを造った者は非常に気が利くようだ。


「……広場です」

「そんな重い感じに言わなくても……」

「アルヒェル、広場は、そこで何かが待ち受けているという標識なのだ。今までのわたしたちの経験から推測すると、巨大な魔物が待ち構えているのではないかということが言える」

「広場の先にも通路がありますよ」

「中間地点ということか。手ごわい魔物が一体、かも知れぬ」


 円形の広場に入る。四人なら大丈夫であろう。どうせ一体だ。


 かなり広い部屋だ。ここは集会所なのだろうか。


 わたしたちが広場の中央に足をつけると、地面が揺れ始めた。見ると、部屋の中央だけが取り残されて、円周部分が沈んでいる。沈んだ後は水が満ちていく。それだけではない。部屋の出口と入り口も塞がれた。


「フッ、予想済みだな」

「ありゃ? 何かでかいのが浮かんできたよ」

「魔物だろう。どれどれ、ああ、あれか」


 右側から巨大な生物の頭部が浮かび上がってくる。


「違う違う。反対側」

「何だって? 魔物はこっち……」


 左側を見てみると、これまた巨大な頭がひとつ。


「……あれ? おかしいな。わたしの分析ではここには一体しかいないはずだったのだが……」

「ガッツリ外しましたね」


 まさかの二体同時に相手するパターン? 厳しいなあ。


「こっちがイカで、こっちがヘビだね」

「かなりの大きさだな。世界記録じゃないか?」

「甘いなアルヒェル、世界記録をぶん取ったイカは小島ほどあるそうだぞ」

「じゃあヘビは?」

「地球一周くらい」

「……なんというか、このサイズで良かったのか良くないのか……」


 ここで苦戦していてもここから先の試練に打ち勝てるわけがないのだからな。わたしたちの力を量るという面でも、ダブル巨大生物というのは損にならないと思う。


 二頭の魔物が水にもぐって姿を消した。


「ひとりにつきひとつの方向を担当しろ! 魔物を確認し次第その場から離れろ!」


 わたしが担当した方向から、イカが出現した。走って左側に逃げる。もう一方は?


 逃げた側からヘビが飛び出してくる。ヘビは広場の中央辺りで大きく跳ねた。わたしは無事だが、他の三人はどうだ?


 ヘビが反対側の水に勢いよく飛び込むと、イカの足から赤い光が漏れ出た。危険だと感じ、入り口から見て左側に逃げる。間もなく太いレーザー光線が発せられる。


 ……四人のうち、先ほどの攻撃を受けている者はいない。


 再び二頭が潜る。なかなか早い。タイミングがうまくつかめないな。


「出てきた瞬間か、攻撃の直後だな。攻撃後のほうが安全だが」


 独り言を漏らしながら中央に移動する。


「……後ろかっ!」


 すぐ後ろに蒼い鱗の生き物が迫ってきている。今回は飛び出たときに跳ねているようなのでヘビとすれ違うように動く。すぐに後ろから赤い光が見えた。


 仲間たちの無事を確認する暇も無い。心配ではあるが、今は仕方がない。


 魔物はすぐに潜水してしまう。隙が少ない。中央に移動し、待ち構える。


 前方からヘビが飛び出してくる。高い跳躍だったので動かずに待機する。すぐ上を巨大な胴が通り過ぎた。


 もう一方が横から来るものだと思っていたが、ヘビが飛び出たところから白い三角形が浮かんできた。光線が来る前に刃を飛ばす。しかし足で防がれた。足に傷がつけられたのは良かったが。


 光線の餌食にならないように右に向かって走る。深紅の光が通過する。


 その後すぐに現れた。目の前から。慌てて左に転がったが、勢い余って水の中に転落した。


「あれ? アイゼンディーテじゃん」

「……何故水中にいるのだ」


 落ちた先で出会ったのは山賊だ。さっきから見ないと思ったら水中にいたのか。


「下から壊していこうと思ったんすけど、意外に動きが激しくて下手に近寄れない状況」

「お前は山賊を辞めて海賊にでもなるのか?」


 でも、水中で戦うというのはいいかも知れぬ。わたしは嫌だが。


 横からイカが近付いてくる。


「こいつなら当てられるのでは?」

「足が邪魔で届かなくて」

「なるほどな」


 足を全て切り落とせばよいわけだ。わたしは地面すれすれに、白い生き物の真下にもぐりこむ。見上げると、鋭い歯のついた穴が見えた。これが口か。


 口に吸い込まれるかと思うところまで上る。注意を引かないために足には触れないようにする。早く行動しないと移動を始めてしまう。


 位置を再確認し、久しぶりだが果ての球の小竜巻を起こしてみる。風の流れは水に伝わり、小さな渦巻きを作った。その渦が魔物を切り裂きながら回転させていく。


 やがて渦は裏返され、魔物が高く打ち上げられた。地上ではきっと、逆さまになった奇妙な形の渦巻きが見ることができたに違いない。


 真っ白な足が落ちてきた。今更気づいたのだが、このイカは何故か皮をむかれたように白い。通常の種のように赤くはないのだ。


 本体が落ちてくる前にその場を離れる。少し待つと落下してきた。胴に切れ込みが幾つも入れられたこの生物は、まだ微かに動いている。


「後でいいでしょ」

「ああ、そうだな」


 わたしが水から上がろうとした丁度その時、大きく部屋全体が揺れ動いた。地上に這い上がると、ヘビが広場の中央で暴れていた。激しく動いているのでうかつに近づけない様子だ。遠くから風を飛ばすが、硬い鱗に弾かれてしまって全く効果がない。


 テールドルトが水から出てきた。床に立ち上がると暴れているヘビに向かって走っていく。高く跳躍し、刃を向ける。ハルバードの刃は重力に助けられてヘビの胴体に深く刺さった。動きがいっそう激しくなる。だが山賊は臆することなく刃を振り回し続けた。魔物にぶつからないようにうまく立ち回りながら、傷を増やしていく。


 アルヒェルがタイミングを見計らって一本の矢を放った。矢は見事に怪物の喉に刺さる。血が口から零れ出て、魔物は動きを止めた。尻尾の方はまだ痙攣するように震えてはいるが。


 テールドルトが喉もとにハルバードを振り下ろし、とどめをさす。


 ……後ろで水しぶきがたつ音がした。振り返ると、もう一方の魔物が起き上がっていた。だがその悪魔のような触手はもうない。


 イカは最後の足掻きとばかりに、真っ黒なスミを前方に撒き散らした。


「絶対に当たってはいけませんよ! このスミは強アルカリ性です!」

「アルカリ性!? 酸性ではなくて!?」

「はい! ですから酸をかけると中和されて安全になります!」


 強酸でも危険なことに変わりないのだが。その場合は中和が難しくなるか。アルカリ性の物質を持ち歩くような変人なんぞ滅多にいないからな。え? すい液? 知るかそんなもん。


 このままでは広場全体を埋め尽くしかねないので、一旦水の中に飛び込む。飛び込んですぐに地上に上がったが、その時には既におさまっていた。


 テールドルトが突撃する。ハルバードの槍の部分をイカの胴(顔の上に胴があるのは通常のイカと変わらない)に突き刺す。素早く引っこ抜き、次は斧の部分でぶった切る。すると中から残ったスミが飛び出た。イカの魔物は腹が半分だけ裂けて、垂れたフードのような滑稽な姿になった。


 二対の魔物が生命の活動を停止したことを、この部屋が察知したようで、水が干上がっていき、沈んだ円周部分が浮き上がってきた。出入り口も開放される。


「よし、とっとと先へ進むぞ」


 広場を抜けた後もまた長い直線の廊下が続いている。歩くのが少し嫌になってきた。


 十分ほど歩いてようやく行き止まりだ。地面に穴が開いている。だが不親切なことに、階段がついていない。穴の下は水で満ち満ちている。


 何も考えずに飛び込んだ。沈んだ先には、闘技場の真下と同じ様な景色が待っていた。神殿の造りも全く同じだ。違うのは、街の中が岩の壁で不自然に区切られているということだけだ。


 壁で道が作られているように見える。それに沿って歩けということなのか。


 海に沈んだ町に存在する建造物は、レンガ造りであったり、コンクリートであったりと様々だ。白い石で作られた建物も多い。そうでないものは、赤や青など、鮮やかな色の屋根が張ってある。


 歩いていると、前方に、真っ青な塔が建っているのが見えた。明らかに不自然だ。それに、あの形はとても人間が創ったものとは思えない。その、何というか……、言葉で言い表わしたくとも、そうしようとすると心の中に邪悪な気が入ってきて考えることが出来ない。


「あれですかね」

「……どう考えてもな」


 他に怪しい建造物は見当たらない。そこら辺の民家で最終決戦とか嫌だからな。


 道は塔に向かって真っ直ぐに延びている、わけではない。なんと面倒なことに、曲がり角が幾つも作られている。明らかな時間稼ぎだ。……でも、よく考えてみれば、ハルグドリオンは七つの宝玉の力によって復活するのだろう? そのうち五つはわたしが所持している。わたしたちが塔に辿り着けなければ、かの怪物は復活しないのでは?


 ……このまま家に帰って、こっぴどく叱られるのも、いいかも知れぬな。


「なあラーナ、わたしたちが帰ったらどうなるのだ?」

「確実にハルグドリオンが復活します」

「だが宝玉は」

「宝玉が全て揃わなくても蘇るものは蘇るんですよ。まあ、七つ全てよりは力が劣りますが」


 末恐ろしい魔物だ。何千年の眠りについてもなお、この世に滅びを与えることのできる力を強く欲している。それが先代の功績であり、過ちだ。


 塔に近付くと、そこから青白い光が昇っていくのが見えた。


「危険な香りがします。きっと芳香剤の香りですね」

「……何でだよ」


 危険な香りって、比喩ではなかったのか? 元々そういう用法だったっけ? いや多分違う。


 塔の入り口に着いた。遠くから見るとそれほどでもなかったが、結構外周がある。入り口には扉などの仕切りはなく、開け放されていた。


「……さあ、入るぞ」


 心臓の鼓動が高まっていく。


 内部の床は、青い石のタイルが敷き詰められたような格好になっている。


 中に入るとすぐに広場になっていて、中央に太い柱が立っている。


 四人全員が中に入った。背後で何かが落ちる音がする。入り口が塞がれたようだ。


「……よくここまで来ましたね。それだけは褒めて差し上げましょう」

「……そんなテンプレな台詞使う人は初めて見ました」


 柱の前にハイライアが黒い気をまとって浮かんでいた。


「あなた方がいらしたことで、悪魔の復活の時間が短縮されました。礼を言いますよ」

「だが、ここで貴様を倒せば問題ない」

「それが大有りなんですよ。この柱は、この部屋に存在する宝玉の力を、塔の最上階にいる悪魔の元へ届けるための装置……。つまり、あなた達が持っている宝玉の力は、こうして話している間に、ハルグドリオンの復活に貢献しているのですよ。……フフフ、ハッハッハッハッハ!」


 ハイライアが狂った笑い声を上げた。


「……っ? 何だ、この空間が歪むような邪悪な気は!?」

「ヒャーッハッハァッ! これが神の力だ! 地上の人間どもよ、今に見よ! 破壊の神ハルグドリオンが、この世に存在する万物に滅びを与え、新たな世界を創造するのだ! 力無き者ども、脆弱なる生命ども、神の力に畏れ、慄き、古き世と共に滅びを迎えるがよい!!」


 ハイライアから爆発しそうなほどのエネルギーが発せられるのが解る。


 太い柱から黒球が発せられる。球体は散らばっていき、部屋中を駆け回る。これ以上ない、厄介な代物だ。動きが大きく制限される。


 近くに悪魔の気配を感じる。だんだんと闇が近付いてくるのが解る。その闇はハルグドリオンそのものを表すのか、それとも、自分の破滅を表すものなのかは解らない。


 横から飛んできた球体が目の前を通過する。少しでも前に歩みを進めていたらと思うとひやりとする。


 反撃する気も起きない。このままではハルグドリオンの復活は確実であるし、どちらみちこの男を懲らしめなければならないというのは解っている。だが、その闘志も大いなる闇に吸い込まれてしまって、光すら抜け出すことのできないその空間に閉じ込められている。しかしまだ戦わなければという矛盾が、わたしの動きを止める。


 ……ついにハイライアのエネルギーが爆発した。ヤツの周囲を占領している邪悪な力の八方から、黒い光線が発せられる。慌てて身を屈めたのが正解だった。黒い光線は宙を駆ける黒球に当たって反射し、部屋中を埋め尽くす。光線は下に降りてくることがなかった。


 ヤツはまだ本気ではない。わたしたちを殺そうとはしていない。わたしたちのもつ“何か”が、ハルグドリオン復活に重要なのだ。宝玉ではない“何か”が……。


 光線と黒球が消えた。反撃のチャンスだ。ハイライアに向かって矢が飛んでいくのが見える。だがそれもヤツから滲み出る邪悪な空気に呑まれて消えてしまう。


 矢の無効化を見て、どうすることもできずに諦めかけていたとき、再び空間をも歪ませるような気配を感じた。続いて大きな揺れ。揺れというよりもそれは巨人の歩みであった。


「……神が蘇ったぞ」


「……手遅れということか」


「あなた方のおかげで、破滅の神ハルグドリオンは復活の刻を迎えた。本当に感謝しているよ。ハァーッハッハッハッハッハァ!!」


「くっ、何ということだ」


 努力は報われなかったということなのか? いいや、まだ解らない。


「……さて、あなたたちももはや用済みだ。さあ、ラーナよ、この者たちを始末せよ」


「……待て! 何だどういうことだ!? おいラーナ、答えろ!」


 ラーナの目が死んだ魚のそれのように濁っている。


「……みなさん、黙っていてごめんなさい。私は…………、ハイライアによって蘇った、英雄ディートリッヒの妹です」


 なっ、何だってぇー!? なんて言える心の余裕など無い。


「……私は召喚主に操られています。ですから、勝手な行動を取ることは適いませんでした。私は、蘇生してからの二十年間、ずっとツァプフェンクロイツ家を見守ってきました。アイゼンディーテさんのこともよく知っています。父親がいないせいでひねくれた性格に育ってしまったことも、実はピーマンが食べられないことも」


「二個目のヤツ要らない情報だろう」


「A型ってことも知っていますよ」


「えぇー? 意外」


「……お前ら反応するな」


 ほとんどムダ知識ではないか。ただのストーカーに成り果てておるぞ。


「お喋りはここまでだ。さっさと殺してしまえ」


「…………テールドルトさん、アイゼンディーテさん、私の行いを許してください」


「私の名前言われてなかったような気がするんだけど!」


「いやそんなこと言っておる場合ではないぞ! 今一番大事なのは……」


 急に体が動かなくなった。石化魔法をかけられたときのように。


 ……ラーナが矢を番える。


「……あなたに、永遠の眠りを捧げます。



















 ………………ハイライア、さようなら」


 ラーナが急に方向転換し、ハイライアに向かって矢を放った。完全に油断しきっていたハイライアは胸を貫かれ、その場に倒れた。


「ぐぅッ……、く、この私を倒したところでッ、……神は、ハルグドリオンは、……止められんッ……! 神は、……神は永遠だ……! 貴様らは、滅びを受け入れるほかに……、道は、…………ない…………ッ! フヘヘ、ヘヒャヒャヒャヒャヒャ……!!」


 目の前で高笑いを上げていた奇妙な男は、そのあとぴくりとも動かなくなった。


「……ラーナ、お前」

「……」

「いや、もういい。それよりお前、操られているのではなかったのか?」

「あれはハイライアを油断させるためです。敵を欺くにはまず味方から、と、大昔の外国の方は言っていますよ」


 さすがはラーナだ。


「それより、これからどうする? 入り口は塞がれたままであるし」

「……もうそろそろですよ。後戻りなどできません」

「もうそろそろって、何が……」


 突然、地面が大きく震えた。中央の柱が塔の外から見たときのような青い光を放っている。


「みなさん離れて!」


 言われるがままに部屋の端へ行き、壁に張り付いて待機する。すると青い光を帯びた巨大な柱は爆発するように外側に向かって砕け散り、その中身を現した。


「植物の根だと? 馬鹿な」

「空に続いています。今の衝撃で塔が壊れました。この根を這い登って、空中に浮かぶ古代都市に行くことができます」

「古代都市!?」


 初めて聞くことばかりで頭が混乱してきた。


「本当はあなたたちを巻き込みたくなかったのですが、こうなってしまった以上、わたしにはどうすることもできません。塔が破壊されたとはいえ、強い結界が張ってあって抜け出すことができませんから」

「ハルグは……」

「誠に残念ながら、最大の力をもって、現世に蘇りました。誰もその悪魔を止めることはかないません。できるのは、ここにいる四人のみ」


 わたしたち四人は顔を見合わせると、強く頷き、不気味にのびる根っこにつかまった。

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