表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

1:妹から逃げる!


――僕があの声を聞く30分前の話――



「だから、食べてないって!!」



僕、神代(かみしろ) (おぎ)はたった今人生最大の危機に瀕している。



「じゃあアタシのカッパ巻きはどこへ行ったってのよ荻兄ィ!さっさと出さないとぶっ殺すぞ!!」



今の言葉からも分かるように、どういうわけか命の危機に晒されている。

………実の妹によって。


くそっ!まさか日曜日の午前に家に居るだなんて!!いつもは遊びに行ってるから油断した!!ってか、女の子がぶっ殺すって!夢が壊れたわ!!



「アタシは昨日確かに3つあったカッパ巻きを2つ食べて明日用に1つを楽しみに残しといたの!それを食べるだなんて…アタシの大好物だって知ってるでしょ!?そんなだから彼女が出来ないのよ!!」



「今その話関係ねーし!!てか、カッパ巻きて!!何でそんな微妙なネタなんだよ!!誰がそんな微妙な物盗み食いするかバーカバーカ!!」



普段妹とは言い争わない僕だが、無実の罪を着せられ黙ってはいられなかった。



……いや、彼女出来ないって言葉にムキになった訳じゃないよ?

ホントダヨ!?



「………カッパ巻きを馬鹿にする奴は許さん!!」



妹はそう叫ぶや否や、僕の右手を掴み、



「いだだだっ!!折れる!骨折れるから!!」



……思いっ切り僕の間接を決めた。



「折られたくないなら、早く出せ!!」




さすが我が妹、まったく勝てる気がしない!



神代(かみしろ) 瑠璃(るり)



長く艶やかな髪の毛。大きくパッチリとした目。形の良い鼻と口。

僕と血が繋がってないんじゃね?、って位の美少女だ。

性格も明るく、ファンクラブが出来る程。

前に妹の忘れ物を届けに中学校に行った時、


『『お義兄さん、超あざっす!!!!』』



と何十人もの男子中学生が1列に並び、一斉に挨拶に来た。


………正直引いた。


ただ、それは表の顔だ。本当のこいつは、かなり厄介だ。

何を考えているのか分からないが、小学校の時に柔道を習いだし、今では有段者。平気で人の傷を抉り、僕のハートはボロボロだ。そして、やたらとカッパ巻きに執着している。所謂、残念な美少女という奴だろう。



「どうせ荻兄ィの事だから、もう食べちゃったんでしょ?買ってくるから金だして。」



呆れ顔で手をつきだしてくる瑠璃。抵抗するにも、何も武道をしていない僕の力じゃ、瑠璃に勝てそうにもない。

あぁ…これから僕は一生 妹に奴隷のようにパシられるのか…。



『小僧…力が欲しいか…?』



痛む右腕に涙目になっていると、不意に声が頭に響いた。これはあれか!漫画でありがちなパワーUPイベントか!!



「……欲しい。」



『ふむ……では、どのような力を望む?』



え?こういうのって無条件にすごい力が貰える仕様じゃないの?



「それは…まあ、誰でもフルボッコに出来る俺TUEEE!な力が…いや、何でもないです。」



僕が一人言を言っているように見えたのだろう、瑠璃の僕を見る目が氷のように冷たい。



「……何でもないです。」



『ならば…我の力を貸してやろう。貴様の望む力を行動で示せ…。』



声がそう言うと、右腕の痛みは嘘のように消え、ガクガクだった足(怖くて震えたんじゃないからな!……多分)には力がみなぎってきた。

これなら瑠璃も敵じゃない!

意気揚々に瑠璃を見ると、半分呆れたような目を僕にむける。



「……具合悪いの?頭が悪いの?」



相変わらず僕の心を抉る一言だ。いまから黙らせて……。



待てよ?僕は何がしたいんだろう?

力が湧く事で高揚する心身を鎮めながら、自分に問いかける。


確かに瑠璃は憎らしい妹だ。しかし、妹には変わりは無い。



例え口が悪くても、僕への信頼感が皆無でも、僕より喧嘩が強くても、カッパ巻きでマジギレするような変な奴でも僕の妹だ。兄が暴力を振るって良い理由にはならない。


だったら―――



「瑠璃。少し冷静に…」

「あ?」



少し冷静になって考えてくれ、と僕が言おうとした矢先、ギロッ、と擬音が聞こえんばかりに僕を睨む。



……こわッ!!

何あれ!?実の兄に、てか人に向けるような目じゃないよ!?あれはもうライオンが獲物を見る目だよ!?何でカッパ巻き1個にそこまで必死なのさ!?



『これで貴様は我と契約した…さぁ、その力を存分に扱うとよい!!』



声がまた響き渡る。

くそぅ!!だったらお望み通りに使ってやらぁ!!



僕は思いっ切り後ろを振り返り、



「うおぉぉお!!」



――人間離れした脚力で家を飛び出し、妹から逃げた。



『…………は?』




フフン、どうだ!僕がお前の望み通りに動くと思うなよ!!瑠璃が怖かったからじゃない!!

本当だからな!!








ところで、カッパ巻きは瑠璃が食べてたのを忘れてたみたいです。

皆も誤解には気をつけようね!!





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ