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千石大名のアンビバレント!!な生活  作者: いばらぎとちぎ
第一章 物語は始まった
7/7

すれ違い空―夜

 日が落ち始めた公園で小町と江は楽しそうに話をしていた。泣き崩れていた小町の表情にも笑顔が戻っている。

「私ね、その時は本当にもうダメだって思ったの。きっとこの人たちに乱暴されて捨てられちゃうんだって」

「なんて卑劣な奴らだ。非力な少女に男三人で狼藉を働くとは! 僕がその場にいたら全員二度と足腰立たぬようにしてやるものを!!」

 江は思い出しただけでも恐ろしいと身を震わせた。小町が憤り膝を叩いたので、江は微笑み御礼を言った。

「必死で叫んで鞄を振りまわしたんだけど結局どうしようもなくて男の手が私の胸に伸びてきたの。もう怖くて、怖くて、思わずしゃがみ込んで頭を抱えたのね。そしたら、鈍い音と一緒に男たちの悲鳴が聞こえて」

「おっ、おぉ」

「それから殴る音とか叫び声とか聞こえてたんだけど、しばらくして何も聞こえなくなって、それでどうしたんだろうって、恐る恐る目を開けたのね。そしたら、目の前に手が差しだされてたの。今でも覚えてる。ケガして血が滲んでたけど優しい、綺麗な手。私が顔を上げると、その人はニッコリ笑って『大丈夫? ケガはない』って……」

 まるで王子様みたいだった。江は頬に手を添えるとうっとりした表情で物語を結んだ。

 江が語っていたのは、中学二年生の時、暴漢に襲われた際に助けてくれた男の子の話しだ。江の臨場感あふれる語りの甲斐あってか、すっかり引き込まれていた小町は興奮冷めやらぬといった様子で鼻から息を噴き出しす。そして、おもむろに腕を組むと納得したように何度も顎を上下させた。

「なるほど、それで江は大名のことが好きなのだな」

「えっ、ええぇぇぇ。ちっ、ちがっ……」

 江が驚きの声を上げた。たしかにこの話に出てくる男の子は事故にあう前の大名である。小町に昔の大名はどんな人物だったか聞きたいと頼まれてこの話を始めたのだが、どうして好意を抱いていることまでバレてしまったのか。上手く隠したつもりだったのに。

「別に初めて目を合わせた時から気づいていたぞ。この女性は大名のことを憎からず思っているなと」

 焦る江に対し事も無げに小町は答えた。それを知られては、この泥棒猫が的なドロドロ昼ドラみたいになってしまうのではないかと心配していた江だったが、あまりにあっけらかんとした小町の態度に毒気を抜かれてしまう。

「小町さん、千石くんのお嫁さんなんでしょう? 嫌じゃないの?」

「下らない女ならもちろん嫌だけどな。江は良い人だし、それに嫁といっても押し掛け女房みたいなものだ」

 小町が苦笑する。その言い方に複雑な事情があることを察して江はそれ以上追及することを止めた。

「ところで江。あたなに折り入って聞きたいことがある……あなたは、今の大名をどう思う?」

 小町の顔を見つめる。質問すること自体、気が咎めるのだろう。迷いがありありと声からも表情からも伝わってくる。

「どうって?」

「つまり、江は昔の大名のことを好きになったはずだ。正義感が強く王子様のような大名を。しかし、その、なんというか今の大名は違うだろう?」

 小町が一つ一つ丁寧に言葉を選びながら質問してくる。江もその言葉にいちいち頷くと考え込むように頬を撫でた。

 二人の間に沈黙が降りてくる。気がつけば前の道を通る人も随分と少なくなってしまった。耳に入るのは芽吹き始めた桜の木が風に擦れる音だけだ。

「違わないよ。うん、同じじゃないけど。違わない」

 それが江の答えだった。小町を眼鏡のレンズ越しに見つめる目はどこまでも優しく、迷いがない。どうして? と尋ねようとした小町が思わず躊躇してしまうほどに。

「たしかに今の千石くんはスケベだし、授業さぼったりするし、変なことばかりしてて、とても王子様とは呼べないけど……けど、一番大事なところは変わってないよ。それは小町さんもよく分かってるんじゃない?」

 江が小町の手を取った。暖かい江の人格をそのまま表しているような手だ。小町は数秒その手に見入っていたが顔を上げ微笑んだ。

「そうだな。僕もそう思う」

「でしょう? でも、何だかおかしい……あは、あははははっ」

「なんだ? 何がおかしいのだ?」

 突然笑い出した江に、小町が照れ顔になる。理由は分からないが、自分のことを笑われているような気がしたのだ。

「だって、お嫁さんとその旦那さんを好きな人が一緒に手を繋いでるんだよ。これって変だよ!」

「そっ、そうかな?」

「そうだよ。私が千石くんのことを好きだって認めても怒りもしないし。絶対変! あははは」

 ツボに入ってしまったのか、とうとうお腹を抱えてしまった江に小町は頬を膨らませた。たしかに変なことかもしれないがここまで笑うことはないだろう。

「別にそれだけ江のことを気に入ったというだけだ」

「あぁ、気を悪くしないでね。小町さん」

 そっぽを向いてしまった小町を宥めるように江が話しかける。まだ口元が痙攣している。真面目な顔に戻そうと努力はしているらしい。

 小町は頬染めたまま横目で何度も窺うように江へ視線を送る。そして江の笑いが何とか収まったころ、小さく口を動かした。

「……小町だ」

「え?」

 上手く聞きとれず江が首をかしげた。

「小町でいい。僕も江と呼んでいるのだから“さん”などいらない」

 江の手を握る小町の手に力が入った。江にはそれがとても可愛らしく感じてしまい、せっかく締め直した口元が緩んでいく。

「わかった。よろしくね。小町」

 そして、相貌を崩したまま握る手に力を入れ返した。一人の男を間に挟んでいるにしてはおかしな関係だ。しかしそれもいいかもしれない。

 互いに微笑みあいながら江はたしかに心が温まるのを感じていた。

「うむ。よろしく。これで僕と江はライバルだ!」

「えっ、えぇぇ」

 しかし、その暖かさも二人の間では温度差があったらしい。小町は勢いよく立ち上がった。

「二人で名乗り合い、互いを認め合った。江、あなたは僕にとって得難い強敵ともとなったのだ!」

 茫然とした江を置いてきぼりに一人燃え上がる小町。どうやら強敵と書いて友と呼べる存在に憧れていたらしくともて嬉しそうだ。放っておけばそのまま飛び跳ねそうな勢いである。

「間違いではないけど、なんか違う気がするなー」

 参ったなと眉を垂れるが小町には届いていない。

「でも、元気が出てよかったかも。おーい、小町。ちょっといい?」

 なぜかシャドーボクシングを始めていた小町を江が呼び止めた。

「私はそろそろ帰るけど、小町はどうするの?」

「うん。僕も帰ろうと思う。自分のどこが悪かったのかも理解できた。許してもらえるかは分からないが、やはりきちんと謝ろうと思う」

「そう。うん、千石くんなら許してくれるよ。いっつも誰かに怒られてるから。謝る人の気持ちよく分かると思うよ」

「そうか、流石我が夫だ。失敗から学び続けているわけだな!」

 感心したように頷く。

「違う違う、さすがは私の王子様、でしょ?……あっ」

 そして小町の調子に乗せられたのか珍しく江が不敵な発言をした。小町が虚を突かれたような表情になる。

「いやいやいやいや、今のは違うの。ちょっと、調子にのっちゃって……」

 恥ずかしさのあまり慌てて否定するが、小町は大真面目に頷く。

「うん、やはり僕のライバルとなればそうでなくてはな。江っ!」

 小町が江の名を呼び、まっすぐに拳を突き出した。

 それを見て江は少し戸惑ったが、気合を入れるように両手で自分の頬を叩くと、拳を突きだした。

 重なり合う二つの拳を祝福するかのように一陣の風が走る。日も落ち寒くなった公園で、なぜかその風は熱風のようだった。

 身を焦がすような互いの炎に包まれ二人は名実ともにライバル、つまり強敵と書いて友と呼ぶ関係になったのだ。




「それじゃぁ、またね。小町」

「あぁ、今日は本当に助かった。この恩義はまたいつか必ず返そう。ありがとう」

 互いをライバルと認めあった二人が手を振って別れて行く。これでまた学校に通う楽しみが増えたというものだ。

「知らなかったな……対等な関係がこんなにも嬉しいなんて」

 胸に手をあてその暖かさを確認する。数時間前には己への不甲斐なさと大名への申し訳なさで悲しみに染まっていたのが嘘のように暖かい。

これまで、師と弟子といった対等でない人間関係が多かった小町にとって、江は初めてできた対等な友人だった。友人といってもライバルだが、それでも得難い強敵ともには変わりない。

 拳を握り気合を入れる。大きく背伸びして、夜風をたっぷり肺に吸い込んだ。

 大名のことに関しては一歩先を行かれているようだが、小町とてこのままで終わるつもりもない。とりあえず今の大名を受け入れるところから始めよう。

 心の整理がついた小町がホッと息を突いた瞬間、背が粟立った。


「――えっ?」


 皮肉なことだった。人の温もりに触れたからこそ発生うまれてしまった彼女らしくない隙。背後をこうも容易く取られるなんて、普段ならばおおよそあり得ない出来事だったのに……

 迫りくるは血走ったまなこに大きく分厚い手。明らかに成人男性のものであるそれを認識した時はすでに遅く、首筋まで到達していた。

 避けることは……もう、叶わなかった。





「うっだーぁぁ! 小町のヤローどこに行きやがったんだ。手間かけさせやがって」

 家を飛び出した大名はすでに三十分以上も走り回っていた。息を切らせ側にあった電柱に手を突く。辺りはすっかり暗くなっており、電灯の明かりがポツポツと無機質な道路を照らしていた。

 すでに商店街からサトミタウンの中まで回った。まだ開いている店の店主などにも聞いてみたが、数時間前に見たという他に目撃情報もない。

 小町はまだこの街に来て日が浅い。そんなに行くところもないはずなのに。

「もしや電車に乗ったんじゃねぇだろうな」

 そうだとしたら最悪だ。とりあえず地下鉄に行って駅員さんに聞いてみよう。とにかく無駄に目立つ奴だから覚えているかもしれない。

 そう考えコートのボタンの上二つを外すと大名はまた走りだした。この道をまっすぐ行って、右手にある公園の真中を突っ切れば近道になる。

 風を切って進む。あと数メートルで公園だ。

「うわぁっと!」

「あをぅ!?」

 公園が目に入ったところで大名は急に立ち止まった。角から自転車を引いた警察官が出てきたのだ。

「あっ、あぶねーじゃねぇか、このメガネ!」

「誰だと思ったらまたお前か! いい加減にしないと本当にしょっぴくよ」

 吠えた大名に訝しげな瞳を向けてきたこの警察官は、近くの駐在所に勤務している巡査だ。大名からはメガネなどと呼ばれているが、肩幅は広く筋肉質な身体つきをしている。これまで何度か大名を補導しており、二人は因縁浅からぬ仲となっていた。

「ま~た女の尻追いかけてんじゃないだろうね。被害届とか出されても知らないよぉ。それに今ここら辺は物騒だから早く帰りな」

「だから焦ってんだよ! なぁ、こんなやつ見なかったか?」

 大名は携帯を取りだすと小町の写メを見せる。映っているのは和風メイド服姿の小町だ。奏が面白がって大名の携帯で撮ったのを消し忘れていたのだ。

 メガネは携帯を受け取ると記憶を探るようにじっくりと画面を見つめる。

 二人の隣を車が速度を落として通り過ぎて行く。一方通行となっており、大名の後ろかメガネの方へ進むようになっているこの道が狭いこともあるし、何より警察官であるメガネがいるからだろう。

 そして数代目かの車が二人に迫って来た時、メガネが口を開いた。

「あ~、あるある。あるぞ」

「まじかよ! どこだ、今すぐ教えてくれ!!」

「どこって……ほれ」

 メガネが隣を指さす。大名は一瞬理解が追いつかなかったが、釣られて首を向けたその先で目玉が飛び出しそうになった。なんと、今まさに横を通り過ぎようとしているミニバンの後ろに小町が乗っていたのだ。

「こっ、小町!!」

 大名が飛びつこうとしたが一拍遅かった。隣を通り過ぎたミニバンは逃げるかのようにスピードを上げ、そのまま商店街に挟まれた大通りへと進んでしまう。

 大名は唇を噛みしめミニバンを睨みつける。

 後部座席に乗っていたのは間違いなく小町だった。祈るようにして硬く目を閉じ震えており、車体の側面が削れリアターンランプには亀裂が入っていた。一体何があったのか……

 百メートルほど先でミニバンのリアターンランプが点滅する。どうやら右折して大通りを西へ向かうつもりらしい。このままでは見失ってしまう、片方がひび割れているためか、歪な光を残して去って行く車を見て大名は腹を決めた。不思議そうな顔をしたメガネの隣を素早くすり抜ける。

「なっ、人の自転車に何してんだ! 窃盗の現行犯で逮捕するぞ!」

「うるせー! それどころじゃねぇんだよ。誘拐だぞおまわり! 仕事しろってんだ!! 」

「なぁにー! 分かった。本官はパトカーを出してもらうように要請するから、お前は自転車から降りて大人しくって……こらぁぁぁ!!」

 メガネが叫ぶ。しかし、自転車に飛び乗った大名は、最後まで話しを聞くこともせずにさっさと走りだしてしまった。

 相手の声を置いてきぼりに大名はどんどん加速していく。

 公園を過ぎ、家を一軒過ぎ、更にもう一軒過ぎて、裏道を抜けだし道路まで躍り出た。急に道路に飛び出した大名に横から直進して来た車がクラクションを鳴らすがそんなこと今の大名には知ったことではない。小町の身の安全がかかっているのだ。

 大名は素早く右折すると立ち漕ぎのまま道路を爆走していく。ミニバンは大名よりも数十秒も早く大通りを西へ進んでおり、暗くなった今、視認することは不可能だった。

 舌打ちをする。ここから三百メートルほど先にある里美大橋前の信号に掴まっていれば助かるが、そうでなければ十字路に差し掛かるため一気に追跡は難しくなる。

 焦る気持ちを鞭に代えて、足と自転車を叱咤する。もっとスピードを、もっと加速を!

「ぬぅぅぅ、うぅぅぅぅぅぅぅ」

 息ができないほどに歯を食いしばる。身体が激しく沈み浮きを繰り返し、チェーンがガリガリと音を鳴らした。ギアなど今にも壊れてしまいそうだ。しかしそれにも構わない。ミニバンに追いつくまでもてばいい。

 いた! 数百メートルの距離を走り抜けた時、大名の目がミニバンを捉えた。距離はちょうど百といったところだろうか。奇跡的に信号で止まっていた。

 思わず笑みが零れたがすぐに引き締める。

 ここの信号は変わるのが早い。時間との勝負。一瞬でも速度を落とせば追いつくことは叶わない。

 早速、歩行者用信号機が点滅を始めた。あと数秒で車道の信号機も青に変わるだろう。

 大名は今にも断裂しそうな足の筋肉に一層強く負荷をかける。走り回った疲れも、酷使した筋肉の痛みも先ほどからまったく感じていない。あるのはただ小町を助けたいという想いと燃えるような脳の熱さだけだ。

 


 残り三十メートル――歩行者信号機の点滅が終わった。

 残り二十メートル――歩行者用信号機が赤に染まった。

 残り十四メートル――車道の信号機が青になって先頭の車が動き始めた。

 残り六メートル――ミニバンのエンジンがうねりを上げた。



 大名の目に小町の後ろ姿が映った。まだ俯いたまま震えている。なぜそんなに悲しそうにしているだろうか。何かされたのだろうか。痛い思いをしたのだろうか。

「――っつ、あぢっ!?」

 炎が走った。遂に限界を超えたのか、脳細胞の一つ一つが本当に燃えだしたかのように感じた。熱過ぎて溶けてしまいそうだ。

 目の前が点滅し、ある光景がフラッシュバックしてくる。

 ――ちくしょう……あとちょっとなのに、邪魔すんじゃねぇ

 まるで現実を浸食してくるかのように、大名の脳裏に何かの光景が浮かんでくる。

 深い森、川の流れと鏡合せに流れる雲、天を突く様な巨大な老木の下で、女の子が座りこんでいる。

 瞳と同じ色をした涙を浮かべ啜り泣いている。

 その子はなぜ泣いているのか、自分は一体なんと語りかけたのだったか……思い出せない。

 でも、気持ちだけは覚えている。否、思い出した。心の底から湧き出てくるような強い衝動。

 ――あいつのにことが気になるなんて当たり前のことだったんだ……だって、俺は、あいつの……!!

「こぉぉぉまぁぁぁちぃぃぃ! とどけぇぇぇぇ!!」

 大名は幻影を振り払う。今、目の前にいる少女を捕まえるため、あらん限りの力を持って腕を伸ばした。




「大名?」

 小町は顔を上げた。たしかに大名に呼ばれた気がして、また顔を戻した。そんなことがある分けない。

 自分を探しに来てくれたのではないか。などと考えてしまった自分に苦笑する。

「なっ、なんだ、こいつは?」

 仕方ない奴だと自分に呆れていたその時、運転していた男性がバックミラーを見て声を上げた。小町は急いで後ろを振り向くと、そこには鼻血をたらしながら必死の形相で自転車を漕ぐ大名がいた。大きく口を開き自分の名を呼んでいる。

「なんで……ここに」

 もしかして本当に探してに来てくれたのだろうか。あんなに傷つけたのに、たくさん我儘を言って困らせたのに、都合のいい解釈だって理解しているのに……

 小町は溢れる感情のままに大名に応えようと窓を開け、顔を出した。

「大名!」

「小町!」

 二人の視線が交差する。想いは届いた。


 『ガキンッ』


 伸ばしあった手と手が触れ合いそうなその時、金属の紐が切れるような甲高い音が響く。それに伴い、交差していた視線が、大名の方だけどんどん低く沈んで行った。

「あべぇし!!」

「だっ、大名!?」

 小町の顔色が真っ青に染まる。自転車の限界を超えた走りのためかチェーンが断裂し、車輪に絡まり急ブレーキがかかった。その結果、大名は自転車ごと前方に倒れこみ、そのまま回転しながらスピードを上げようとしていたミニバンを追いぬいたのだ。

 道路に投げ出され、うつ伏せに倒れ込む。疲れと痛みで薄れゆく意識の中で、大名は小町が車から降りてくるのを見た。

 周囲の車も止まり広がり始めた喧騒の中、遠くパトカーのサイレンの音が聞こえ大名はもう大丈夫だと安心する。

 ただ一つ、心残りなのはまた泣かせてしまったことぐらいだ。

 大名はそのことを心中で謝ると意識を手放した。




****


「小町はどうして泣いてるの?」

 大名は尋ねた。この夏、一緒に修行をすることになった桃山家の女の子。もう一週間も経つのに稽古が終わるとこうしていつも泣いている。小町の父高氏は放っておきなさいと言うが、大名にはどうにも放っておくことなど出来なかった。だって小町は見惚れてしまうくらい可愛いらしい子だったのだから。

 はっきりいって超好みだ。

「私、修行なんてしたくない。お母さんと離れたくないし、男の子にもなりたくない」

「修行をすると、お母さんと離れないといけないの? 男の子になるの?」

 小町は鼻を啜ると頷いた。

 それは困ったな。大名は難しい顔をして考え込む。

「そうだ。なら僕のお嫁さんになればいいよ。お嫁さんは女の人しかなれないから男の子にならないでいいし、僕のお嫁さんになればお母さんともずっと一緒にいれるようにしてあげる」

「ほっ、ほんとう?」

 小町が一筋の光明を見出したかのように大名を見つめる。吸い込まれるような真っ青な瞳だ。

 大名は鷹揚に頷くとそれで問題ないと胸を張った。それからは、どうすれば結婚できるか二人で話し合った。高氏は厳しいので、最低でも小町より強くなくては婿として認めてくれないだろう。ならば、組手で賭けをして大名が勝てば小町をお嫁さんにしてもらえるようにすればいい。

 小町は一体どこまで理解しているのか定かではないが、とりあえず賛成してくれた。

「僕のお嫁さんになったらずっと僕が守ってあげる。小町が泣かなくていいように、側にいてあげるから」

「すごい! 大名くんってヒーローみたい!!」

 小町が笑う。それに釣られるように、大名も顔を真っ赤に染めて笑った。この時大名は心に誓ったのだ。決してこの子を悲しませない。この子を守るヒーローになるのだと。


****



 薄暗い部屋で大名は目を覚ました。頭がぼうっとしているが意識はきちんとある。それに胸の奥が暖かい。なにかずっと忘れていたものを取り戻したかのような感覚がする。

「もしかしなくても、今のは昔の夢か……あいつ女だったんだな。てか、あの流れで勝つなよな」

 昔から空気読めなかったんだなと、大名はそんなことを思いながら上半身を起こした。辺りを見渡すとどうやら病院のベッドの上みたいだ。

 大名は痛む頭を押さえた。おぼろげな記憶を探って行く。たしか誘拐された小町を追って、その途中で自転車が……

「そうだ、小町!」

「なんだ?」

 布団を撥ね退け立ち上がろうとした大名に声がかけられる。いつの間にそこにいたのか、大名の隣に小町が立っていた。目立った外傷は見当たらない。大名は元気そうなその姿にホッと胸を撫で下ろしたが小町は不機嫌そうだ。

「な、なんだよ」

 大名がうろたえたようにそう言うと、小町は無言でベッドの上に腰掛けた。

「警察の人とお姉ちゃんから話しは聞いた。僕のことを心配してくれた事には感謝しよう」

 俯いて発せられたその一言一言が硬い。

「だからって、なぜあのような危険な真似をしたんだ……顔だって擦り切りずだらけで。本当に、この程度ですんだのが奇跡だったんだぞ、下手したら死ぬところだったんだ」

 大名の頬に小町が震える手を添えた。

 怒り責めているのだろう。自分なんかのために傷ついた大名を、傷つく原因を作ってしまった自分の不甲斐なさを……

 大名の胸が胃の底から燃え上がった。再び込み上げてきた感情を、目を閉じ一呼吸置くことで無理矢理押しとどめる。

「なんだよお前、また泣いてんのか? 武術家の癖にピーピー泣きやがって、まったく情けねぇなぁ」

「なっ、泣いてなどいない。下を向いているのはお前の顔がかなり愉快なことになっているので、笑わないように気を使っているだけだ。武士の情けだ」

「本当かよ。それなら証拠見せてみろ。ほら、その情けねぇ顔面つら見せてみやがれ」

 目を開けた大名が挑発する。すると小町もむきになって袖で目元を拭い睨みつけるように顔を上げた。

「どうだ、泣いてなんかいないだ……んっ」

 二人の顔が重なった。小町の目が柔らかい感触に見開く。その驚きが大名へも唇を通して伝わってくる。

「いきなりなにを……ちょっ、いやっ、ぅん」

 小町は大名の胸に手をあて距離を取ろうとする。しかし大名は小町の腰に手を回し、更にその小さな頭を後ろから抱えるようにして掴むと、またもやピンクの唇を押しつぶした。

「……ぅんンン」

 硬直する小町にも構わず口内を蹂躙する。小町はいつの間にか硬く瞳を閉じ、ベッドのシーツが皺くちゃになるほど強く掴んでいた。

 ……うす暗い静かな病室に相手を貪る音が響いた。

 そしてようやく大名の唇が離れた時には、小町は完全に放心していた。大名は小町の前髪を持ち上げると艶やかに微笑む。

「なぜそんな危険な真似をしたかって……俺はお前のヒーローだか――ぐひゃばふぉらぁ!」

 奇声とともに大名の頭が後ろの壁にめり込んだ。顔面には見事小町渾身の右ストレートが突き刺さり、まるで便所のすっぽんを押しつぶしたようになっていた。

「ふっぬぅぅぅぅぅ」

 顔面にめり込んでいた右腕を引き抜くとすぐさま左腕振り上げる。

 このままでは命が危ない。そう確信した大名は滝のように流れる鼻血を抑えると必死で弁明しようとした。

「ちょっと、ちょっと、タイムだ小町! たしかにいきなりディープなやつをかましたのは謝る! でも俺は思い出し――ごへぎゃはぁ」

「うるさいっ! うるさーい! 忘れろ! 今すぐすべてを消去しろぉぉぉぉ!!」

 小町は顔を真っ赤にして次々に大名の顔面へと拳を振りおろす。その威力はかなりのもので、ベッドの骨をひん曲げ病室を揺らすほどだった。

 この惨劇は、鉄球でコンクリートを殴ったような振動と大名の断末魔の叫びに駈けつけたナース、いつの間にか側にいた奏の手によって止められるまで続けられた。最終的に小町の顔は、恥ずかしくて赤いのか、大名の返り血によって赤いのか判断がつかなくなっていたそうな。




 翌日。大名が重たい瞼を開けたのは太陽も昇り切り燦々(さんさん)と輝く頃だった。その顔には全体を覆うように包帯が巻いており首にはコルセットがつけてある。何とか視線を動かすと隣で奏が本を読んでいた。

「あら、目が覚めたのね。このエロガキが。親に感謝すんのよ。頑丈さだけは人並み以上に産んでくれたんだから」

「……奏姉。ここ、どこだ?」

 本を閉じ呆れたように言った奏に大名はくぐもった声で答えた。その瞳は虚ろで、焦点が合っていない。

「あんたまさか」

 奏に不安が過ぎる。辛そうに上体を起こし、頭を抱えたその姿は三年前に記憶を失った時とそっくりだった。

 奏は注意深く大名を見つめる。そして、しばらくして大名は、頭痛を我慢しているかのようにきつく閉じていた瞳を愕然とした表情で開いた。

 

 奏は静かに息を飲んだ。


「そうだ、小町だ……小町はどうなったんだ!? 俺、あいつに伝えたいことがあんだよ!」

 しかし、次の瞬間大名の口からついて出た言葉は小町に対する安否についてだった。奏がカクンと頭を垂れる。

「はぁぁ、あんたどこから覚えてんの?」

「どこって、たしかメガネから自転車パクッて……あれ、そもそも俺はなんで自転車パクッたんだっけ?」

 混乱した大名がゆっくりと顔を左右に振る。何かを必死で追いかけていたようなそんな気がするが、どうにもはっきりしない。

「こりゃダメね……こまっちゃん、どうやら振り出しに戻っちゃったいよ」

「小町!?」

 大名が顔を上げる。奏は「記憶が飛びやすくなってんのかしら」などとぶつぶつ言いながら、背後にあるカーテンを開いた。裏側からぶすっと頬を膨らませた小町が出てくる。大名から微妙に距離を取っており、軽蔑したような目で大名をチラリと見下した。

「何だか警戒されてる気がすんだけど……」

「さぁ、自分の胸に手をあてて聞いてみたら?」

 奏はそう言って立ち上がると、小町を自分の席に座らせさっさと出て行こうとする。

 去り際に、

「あっ、二人っきりになるけど、もう発情すんじゃないわよ。この駄犬」

 と言い残して行ったが、大名にはなんのことかぜんぜん理解できなかった。

「男相手に発情するとか、なに言ってんだ奏姉のやつ」

 コルセットで首が曲がらないため上半身を曲げる。その様子を見て小町は何かを諦めたように息をついた。

「ふぅ、犬にでも噛まれたと思っておくか」

「あぁ、だから何のことだよ。さっきから人を犬呼ばわりしやがって。噛みつくぞこのやろう」

「なっ、か、噛みつくなんてなんと卑猥な!」

「……お前もなに言ってんの?」

 ゆでダコのように真っ赤に染まり、身を守るように両手を胸の前でクロスさせた小町は、さらに威嚇するようにうぅと唸りながら睨みつけてくる。どっちが犬だよ、と大名は呆れてしまった。

「まぁ、いいわ。とりあえず何があったのか教えてくれ。どうも記憶がハッキリしねぇからな」

 小町を探していてメガネの警察官に出会ったところまでは覚えている。しかし、その先がはっきりしない。ただ、必死に探していた物が見つかったような安心感はあるので、悪い結果ではなかったのだろうと大名は予測した。





「なるほど。つまり俺は勘違いして暴走した挙句にずっこけたってわけか……」

 小町から話しを聞き終えたところで気が抜けたように呟いた。大名の言っている勘違いとはまさしく小町が誘拐されたということで、実のところあれは人助けだったらしい。

 江と別れた後、小町の肩を叩いた男性。彼は陣痛が始まった妻を病院へ連れて行く途中だったのだが、運悪く狭い裏道で車のタイヤが排水溝に嵌って動けなくなってしまった。病院はもうすぐそこで、周りの人に手伝ってもらい抜けだそうとしていたのだが、奥さんを車の中で見ておく人がいない。そこでちょうど通りかかった小町に助けを求めたということらしい。

 その後、車が抜け出したのになぜか手を握って離さない奥さんのために小町もそのまま同乗。祈るように目を閉じていたのは、痛みに震える奥さんの手を握ってまさしく無事を祈っていたからだった。

 大名は骨折り損になった自分の苦労を思い脱力したが、無事出産も終えたようだしそれだけは良かったことだろうと思い思い直す。

 それに、小町も無事だった。結果良ければすべてよしというところか。大名は苦笑しつつも安堵の息をついた。

「……大名」

 しかし、大名とは逆に小町は浮かない表情だ。先ほどまでと違い声にも力がない。少し逡巡するよう沈黙したがしばらくしてじっと大名を見つめてきた。

「忘れているようだからもう一度言うが、あんなことは、もうよしてくれ。僕は正直心臓が止まるかと思った……大体、僕に心配などいらないことぐらい、大名が一番分かっているだろう」

 深青の瞳を揺らし、懇願する。

 大名はうっと身を引くと、その瞳に耐えかねるように視線をそらした。

 本当は、お前のどこに心配しない要素があるんだよ。すぐ騙されるくせに。と、いつもの調子で言い返したかったのだが、突然しおらしくなってしまった小町を見ていると、どうにも言い難い。別の意味で聞かん坊モードに入ってしまった。

 大名は困ったなと腕を組んだ。小町には伝えたいこともあるのだが、このままでは中々言い出せそうにない。そわそわと辺りを見渡していたら机の上にクッキーの袋が置いてあるのが視界に入った。

 転がった後に車にでも引かれたのだろうか。袋には黒いタイヤの跡がついており、所々破れてしまっている。大名が手を伸ばす。それに気がついた小町が焦って止めようしたが、構わず膝の上に置いて口を開けた。中身は粉々になっていた。

「はは……ボロボロになってしまったな。でもまた作りなおすからいいんだ。気にしないでくれ」

 粉々になり所々石や砕けたアスファルトが混じったクッキーを見た小町は、寂しそうに笑った。

 大名もじっとクッキーを見つめる。たしかにこれではもう食べられそうにない。残念だったなと小町を慰めるところである。あくまで普通の人なら、だが。

「あっ」

 小町が短く声を漏らした。大名は顔の包帯へ手を伸ばすと、邪魔だと言わんばかりに無造作に引きちぎり始めたのだ。

「何をしているんだ!? ダメじゃないか」

 大名の奇行に小町は気が動転してしまう。思わず腰が浮いてしまった小町であったが、次の瞬間にはまた別の意味で一驚いっきょうすることとなった。大名はボロボロになったクッキーの袋を持ち上げ、一気に口の中へ流し込んだのだ。

「うん。うまい。うめぇじゃねぇか。このクッキー」

 口の中でゴリゴリと明らかにクッキーではないモノを砕く音が聞こえる。顔はまだ所々腫れあがっており、口の中だって切れていて痛むだろうに……大名はそんなものは屁でもないとばかりに飲みこんでしまった。

 小町はグッと何かを堪えるように息をのんだ。

「大名!」

「おぉ、なんだぁ?」

 これから爽やかに笑って決めるつもりだった大名だが、小町の大声に意表を突かれ間の抜けた返事を返してしまう。

 隣をみると立ちあがった小町が深々と頭を下げていた。

「すまなかった。昔と今を比べる様な事をしてしまった。大切なのは今なのに。今、ここにいる大名を認めることが必要だったのに……今の大名もこんなにも素晴しい男だというのに気がつかなかった……許してくれ」

 大名の言葉を待っているのだろうか。謝った後も頭を上げようとはしない。

 大名は再び考え込むように沈黙する。そして答えがでたのか、もう一度小町を見据えると、少し動きづらそうにしながらも同じように深々と頭を下げた。

「悪かった小町。俺もお前のことをよく考えないで感情に任せて怒鳴っちまった。今の言葉がお前の優しさだって俺は分かってる。気を使わせてごめん。反省してる」

 大名は下げていた頭を上げ、両手をパチンと合せる。喧嘩はこれで終わりということだろう。小町もその潔い幕引きに安心したように胸を撫で下ろした。

「そういえば大名。さきほど僕に伝えたいことがあるとか言ってなかったか?」

 小町が尋ねる。カーテンの裏に隠れて大名と奏とのやりとりを聞いていた時、たしかに大名は小町に伝えたいことがあると口走っていた。ずっと気になっていたのだ。

「あぁ、それか……」

 大名が後ろ頭を掻いた。どうやら改まっていうにはどうにも気恥かしさがあるらしい。

「いやな、俺はお前にあんまり過去とか家のしがらみに捕らわれるなよって伝えたかっ……?」

「どうした?」

 言葉を止めた大名に小町が不思議そうに首をかしげた。

 ――気持ちが落ち着いてる。

 大名は確認するように胸へ手をあてる。己の家のことや過去について語る時、必ず渦巻き、心を乱すあの感情が嘘のように消えている。

 大名は過去の自分が死ぬほど嫌いだった。理由もなく闇雲に鍛え、ヒーローなどと称して人を助ける日々……小町が褒め称えたそれは、大名にとって消し去りたい記憶だったのだ。

「……な……んで」

 大名は唖然として小町の顔を見つめた。

 もちろん過去の大名の行為は理由がないものでは決してなかった。事故を起こす前の大名は、ずっと小町のヒーローになるという理由で努力していたのだから。

 そのために厳しい修行に耐え、困っている人を助けた。厳しい修行に耐えることと人を助けること、それは大名の考えるヒーローにとって最低条件だったからだ。そのためには、暴力でカタをつけることも多かった。

 しかし、その考えを支える小町との約束がすっぽり記憶から抜け落ちてしまった時、大名は激しい後悔の念に駆られたのだった。自分の行為は本当に正しかったのか。その場だけ暴力でカタをつけ、その後は放ったまま。逆に不幸にしてしまった人も多かったのではないか。

 一心不乱に自分の夢を追い求めていた少年が、十年前の“約束”という自身の行為を正当化する理由を見失った時、少年は自分の行為に自信が持てなくなったばかりか傲慢だと否定したのだ。

 それからは修行を止め、昔の自分を否定するように自らの欲求に従うようになった。だから小町にも自分らしく生きるように伝えようと思い、口にするのも忌まわしい過去について自ら語ろうと決意した。

 それはきっと、自分の心を抉るような作業になるだろう。そう覚悟していたのに……

「大名? 大丈夫か? やはり無理してあんなモノを食べたから辛くなったのか? 」

 茫然自失とした大名を見て、小町がおろおろし始める。口に手を突っ込んで吐き出させた方がいいのか、などと物騒なことを口走っているが大名にはまるで聞こえていない。 

「小町……お前」

 大名は熱をかるように伸ばして来た小町の手を掴む。小町はそれでまた一気に全身が赤く火照った。

「なっ、なななな、なんだ!? どうした!?」

「あのクッキーに、なんか入れたのか?」

「はっ?」

 小町の顔から赤みが引いていく。

「だから、なんか修行に抵抗感がなくなるような、そんな変な薬を入れたんじゃないか?」

 修行を嫌がる後継ぎに飲ませる桃山流秘伝の秘薬とか。そのせいで修行をしない原因である昔の自分に対する抵抗感も消えたとか……そう問いかける大名の顔は至って真剣だ。

 小町は口をぽかんと開けていたが、わなわなと肩を震わせると、開いている方の手で大名の頭をはたいた。

「そんなわけあるかぁ! せっかくの感動が台なしだ!!」

「あっ、ちょっと待てよ」

「知らん、僕はもう帰る!」

 小町は大名の手を振りほどくと肩を怒らせたまま病室を後にする。結局小町に何も伝えることが出来なかった大名は、やれやれと壁に背を持たれた。

 気持ちの奥の方が安定しているのが分かる。ずっと失くしていた芯を取り戻したような感覚だ。それが一体なんなのか、再び記憶を失くしてしまった大名には見当がつかない。

「あと二日で学校か……」

 思えば、小町と学校に行くことが億劫で仕方なかったが今はそうでもない。喧嘩することで相互理解が深まったというのだろうか。

 大名は開け放たれた窓から空を見つめる。遠くに見える山は香りがここまで届きそうなほど、新緑に染まっていた。

「春だなぁ……」

 呟く。始まりの季節。大名の胸に小さな種が芽吹き始める。花が咲くのはもう少し、先の話しだ。






はいっ、打ちきりエンドです。続きを楽しみにしていた方は申し訳ありません。とりあえず、最近私生活の方が忙しくなってしまったので、書く余裕もなく、無理矢理ですが終わらせることにしました。書くのを止めるわけではありませんが、ちょっと休憩ということで!

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