表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【️12/12 番外編更新】俺を嫌ってるはずの幼馴染が『先輩に告白された』と相談してきたので背中を押してみる  作者: みつぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/6

第4話:夏海と大地

 えっ、と夏海は声を漏らした。

 俺は一歩前に進み、更に彼女との距離を詰める。

 

 さあ、ここからが勝負だ。

 

「な、なによ、改まって……いまさら、告白?」

「ああ。改まっていまさら、告白だ」

「いやだからもう、知ってるってば……。あんたが私を好きだっていうのはーー」

「そうじゃねえよ」


 俺が夏海との距離を詰めようとするたび、彼女は逆に後ずさりをして、どんどん教室の奥に下がっていく。

 

「ちょ、なに、なにっ!? 寄ってこないでよ!」

「いいから早く、一思いに振ってくれ」

「はあ……!? な、なに言ってーーひっ!?」

「分かるだろうが……っ! なあ、夏海っ!」


 とうとう窓際まで夏海を追い詰める形になり、俺は彼女越しに、窓に手をついた。小さく悲鳴を上げる夏海。

 

 そしてーー

 

「俺はお前に、()()()()()()()()()んだよ! 噂とか又聞きじゃなくて、面と向かってお前の気持ちを聞きたいんだ!」

「は、えっ……?」


 夏海は顔を真赤にして、泣きそうな顔をして俺を見つめていた。

 

「それならようやく、諦められそうだから……。だから頼む。俺の『初恋』に、お前の手で終止符を打ってくれ、夏海……っ!」


 多分いま、顔が赤いのは、彼女だけではないだろう。

 熱い。自分でもなにを言っているのか、分からなくなっている。

 

 でも俺だって、勇気を振り絞って言ってるんだ。ドキドキしながら言葉を紡いでいるんだ。

 本当に面倒くさい性格のお前だけどーーそれでも俺たちは幼稚園からの付き合いで、幼馴染だろう?


  

 だから、頼む。どうか俺の気持ち、伝わってくれ……っ!


 

「うっ……あ、あの、その……」

「……夏海」


 

「ご、ごめん、なさい……」

 


 夏海は消え入りそうな声で、そうこぼした。

 瞬間、俺は胸のあたりがフッと軽くなっていくのを自覚する。

 

「夏海……。分かったよ。ありがとうーー」

「ち、違う! その『ごめんなさい』じゃなくて……っ」


 夏海はブンブンと勢いよく首を横に振った。

 俺が疑問符を浮かべていると、彼女は緊張した面持ちで口を開いた。

 

「き、き、きき」

「……機器?」

「きき、きらいじゃない……嫌いじゃない、よ……」

「……えっ? 俺のこと?」

「う、うん。別に、嫌いとかじゃない……。あれ、みんなに言ったやつ、全部ウソだから……ウソついて、ごめんなさい」

「……なるほど、そういう意味か。それは……よかった」

 

 俺はふうと息を吐き、ゆっくりと、窓から手を離す。

 きっと夏海から見たら今の俺の顔は、心底安心しきったように見えているだろう。

 

「ほ、ほんと、ごめん……まさかあんたが、そんなに思い詰めてたなんて――」

「だったら!!」

「ひぇっ!?」

 

 俺は、すかさずもう一度窓に手をついて、夏海にグッと顔を近づけた。

 

「なおさら俺と付き合ってくれ、夏海。絶対に俺のことを好きにさせてみせるから」

「だ、だからぁ、それやめ……っ」


 顔を背ける夏海。近くで見ると白い肌は少し汗ばんでいて、耳はやはり真っ赤だった。

 

「な、なによぉ、急に……どうしちゃったの、大地……?」

「夏海……俺にチャンスをくれ。必ず俺が、お前を……」

「ま、まって、まってよぉ……ちかいってば……」

「……ごめん。ちょっと興奮しすぎたな」


 俺はまた窓から手を離すと、今度こそ後ろに下がり、少し彼女と距離を空けた。

 

「はぁ、はぁ……」

「夏海……?」


 夏海は崩れ落ちそうな体を支えるかのように膝に手をついて、息を切らす。

 

 そしてゆっくり顔を上げると、その目にはじんわりと、涙が浮かんでいた。

 しまった、泣かせるつもりはなかった。流石にやりすぎた……。


「夏海、悪かった……。でもマジで俺、お前に好きになってもらえるように頑張るから――」

「ち、違う……違うってばぁ」

「……『違う』?」

  

 ーーと、急に彼女は俺の顔を見ながら、口先をすぼめた。えっ、なぜこのタイミングでアヒル口を?


「すっ、すす、すす」

「……(すす)?」

「すす、好き……好き……だよ」

「はい?」

「だからぁ……っ」


 両手で自分の胸を抑えながら、夏海はすうっと息を吸って、


  

「とっくにもう、好きだってばぁ!!」


 

 今にも破裂しそうな真っ赤な顔で、そう叫んだ。

 

「……えっ?」

「あ、あんたのことなんて、とっくの昔から好きなのぉ!! わ、私だってはちゅ、はつこいはあんただし、い、いいいつからか覚えてないくらい昔からもう、ずっとずっとずぅっと好きなの!」

 

 早口かつ、めちゃくちゃ噛みながら、夏海は必死に訴えてくる。

 彼女のそんな姿を見るのは初めてで、流石に俺も戸惑う。

 っていうか……『ずっと好きだった』、だって? 俺のことが?

 

「……そうなの?」

「そ、そうよ……そう……う、ぅ」


 彼女の目から涙がとうとう溢れ、頬を伝うのが見えた。


「ごめん……ごめんね、大地。ずっと、ごめん……っ」

「は……? な、なに謝ってんだよ」   

「私が……私がこんな性格だから、いけないの。あんたのこと、みんなから聞かれたら『嫌い』って咄嗟に答えちゃうし、嫉妬してくれることを期待して恋愛相談しちゃったり、好きなのにきつく当たったり、からかったりする、面倒な女なのよ……私はっ」


 鼻をすすりながら、涙声で、夏海は続ける。


「それに、大地が『私のこと好き』だって知ってたから、その気になればいつでも付き合えると思って、余裕ぶってた……。でも本当は、自分からじゃ行動を起こせない臆病者なだけで、ずっと先延ばしにして……そしたら、そしたらあんたがっ!」


 両手をグーにして、俺の胸を叩いてくる夏海。なんの衝撃も感じない、あまりにも弱々しい力で。 

 

「新山先輩に告白されたとか言うからぁ……っ!」

「ああ……だからそれは、冗談だって」

「やめてよそういうの……っ! 大地のくせに、生意気なのよっ! あんたごときが私をからかうな、ばかぁ……っ!」

「いやそれは、今までのお返しみたいなとこもあったし……ごめん」

「冗談でよかった……っ! 嫌だよ……。私、誰にも大地をとられたくない……!」

「夏海……」 

「『付き合っちゃえ』なんて、言わないでよ……。本当は『先輩と付き合うな』って、言ってほしかった。私を『とられたくない』って、言ってほしかったのぉ……うっ、うっ……」


 気づけば夏海は叩くことをやめ、俺の胸に顔を埋めていた。

 こもった彼女の声が、胸の中から聞こえてくる。

  

「ごめんね、面倒くさいよね、私……。でもね、大地のことが好きなの。本当は、大好きなの……。ごめんなさい、今度からもっと、素直になるからぁ……だからーー」

「大丈夫だよ、夏海。全部分かってるから」

「えっーー」


 そんな夏海をぎゅっと、俺は両腕で抱きしめる。

 

「だ、大地……っ!?」

「何年の付き合いだと思ってる。そんな性格、お見通しなんだよ。俺は」

「えっ……」 

「まったく面倒なやつだよお前は……。でも、そんなお前が大好きだ」

「なんで……? なんでよぉ……こんな私でも、本当にいいの……?」

()()()()()()()()んだ。俺が絶対にお前を幸せにする。約束するよ」

「……うんっ、うん……ありがとぉ……うれしい、うれしいよぉ……うわあああん……」


 肩を震わしてわんわんと泣く夏海を、俺は力強く抱きしめる。

 顔が、体が、熱い。

 夏海と密着しているからーーだけではないだろう。本当に、顔から火が出るような、恥ずかしい台詞を言い過ぎた。


 だけど、言えてよかった。心からそう思う。

   

 こうして俺と夏海は、大きく遠回りをしながらも、晴れて恋人同士になったのだった。

 

 

 ***

 

 日は沈む。

 

 暗くなっていく教室をあとにして、俺たちは二人で廊下を歩く。

 夏海はもう、泣き止んでいた。


「ごめん、大地。泣いたりして……。恥ずかしいとこ見せちゃったわね」

「そんなの気にすんな。幼馴染だし……恋人同士なんだから」

「あはは、そうね。ねえ、大地……」

「なんだよ」 

「私のこと、好き?」

「ああ、大好きだよ」

「知ってるー。顔に書いてあるもん。デレデレしちゃってさぁ、ウケるー。どんだけ私のこと好きなのぉ?」

「……うるせえな。お前はどうなんだよ」

「えー? もちろん、私も大地のこと大好きだよっ」

「……」

「うわ、顔あかっ」

「お前もな!」


 まったく、急に素直になりやがって。どうやら彼女の中で、何かが吹っ切れたようだ。


「好き……好き、だいすきっ、大地。えへへっ」

「な、何回も言うなよ」 

「あー。正直に気持ちを伝えられたら、こんなにスッキリするんだあ」


 ほんと、もっと早く言えばよかったーー夏海はそう言って、頬を赤く染めながら、嬉しそうに笑った。

 俺もそんな彼女の笑顔に、自然と頬が緩む。

 

 この幸せそうな笑顔を、いつまでも守り続ける。この日、俺はそう誓ったのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ