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【️12/12 番外編更新】俺を嫌ってるはずの幼馴染が『先輩に告白された』と相談してきたので背中を押してみる  作者: みつぎ


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第1話:好きと嫌い

夏海(なつみ)ちゃんって、大地(だいち)くんと付き合ってるの?」

「えっ!? ないない、そんなわけないでしょ! 大地はただの、幼馴染だよ」

「えー。でも、本当は好きなんじゃないの?」

「す、好きじゃないから! むしろ嫌いよ! 大嫌い! 生理的に無理だから!」

「そこまで言う……?」


 ***


「大地。お前、夏海と付き合ってんだろ?」

「付き合ってないよ。あいつとはただの、幼馴染だ」

「ほんとかー? でもあいつ可愛いしなー。内心、好きなんだろ?」

「ああ、好きだよ」

「お、おう、そうか。そんなまっすぐ言われるとは……」


 ***

 

 

 いつからだろう。俺が夏海のことを好きになったのは。

 

 

「ごめんねー、大地。急に呼び出して」

「いや、別にいいよ。なんだ相談って」


 放課後、俺は幼馴染の夏海に、誰もいない空き教室に呼び出された。

 二人で、後方の適当な席に並んで座る。 

「部活は?」と俺が聞くと、夏海は「仮病で休み」とだけ答えた。

 サボりかよ……。ちなみに俺は帰宅部だ。


「ていうか、あんたに改まって相談っていうのも、なんか恥ずいね」

「そうか? で、どうした」

「……えー、どうしよう。やっぱ言うのやめよっかな」

「急に呼び出しといて、そりゃないだろ」

「ねえ、聞きたい? 気になる? このまま帰ったら夜寝れなくなっちゃう? 『どうか聞かせてください』って言えたら、教えてあげなくもないけど」

「俺、お前の相談に乗りに来たんだよな?」

 

 ぷっ、と吹き出し、くすくす笑い出す夏海。俺をからかっているつもりなんだろう。

 まったく、相変わらず面倒な性格してるな……もう高校生だというのに、初めて出会った幼稚園の頃から全然変わらない。

 

 ていうかなんで俺、こんなやつのこと好きになったんだっけ……?

 


「私、箕輪(みのわ)先輩に告白されちゃった」



 唐突に、夏海はそう言った。

 

「……箕輪先輩? って、バスケ部キャプテンの?」


 夏海はコクンと頷いた。

 ……なんと。まさかあの夏海が、誰かに告白される日がこようとは。高一ともなれば、当然か。

 それに彼女も女子バスケ部に所属してるので、箕輪先輩との交流は以前からあったのだろう。


「昨日、部活終わりに体育館裏に呼び出されてさ。『付き合ってほしい』って言われた」

「おお……マジか」

「ね。私、どうしたらいいと思う? 付き合ったほうがいいかなあ?」

「……なるほど、そういう相談か」


 確かに昔からの幼馴染相手に、この手の相談が気恥ずかしくなる気持ちは分かる……が。

 しかしそれにしては、なんだこの「どうだ」とでも言わんばかりの自慢げな表情は。

 

「あっ。もしかして大地、ショック受けちゃったぁ?」

「は……? なんで?」

「うわ、白々しいー。涙ぐましいとぼけっぷりね。そんなに自尊心が大事? 全部バレてるとも知らずに、ほんとに滑稽――」

「とりあえず」


 また面倒な感じになりそうだったので、俺はわざとらしくパンと手を叩き、流れを断ち切った。

 

「せっかく相談してくれたわけだしな。ちょっとガチで考えてみるわ」

「えっ? あ、うん」


 そう言って俺は、腕を組んで思考を巡らす。

 

「箕輪先輩か……一言でいうと、かっこいいよな」

「……うん」

「顔は整ってるし、背も高いし、バスケ上手いし……キャプテンで、リーダーシップもあると」

「うんうん」

「おまけに、成績もなかなか優秀って聞くな。性格も明るくて、後輩にも優しいと評判だ」

「そうね」

「断る理由、なさそうだけど」

「……そ、そう思う? ほんとに?」

「うーん」


 もう一度しっかり、自分の考えに向き合ってみる。この件に関しては、慎重に答えを出すべきだと思ったから。

 

「……あーでも、なんか完璧超人すぎて、逆にきな臭いとはちょっと思う」

「そうよね!? やっぱりことわ――」

「でも、断る理由としては弱すぎるか。普通に考えて、完璧なら完璧なほど良いに決まってるし。付き合ったら?」

「……」


 唾を吐き捨てるかのような嫌そうな顔をされた。なんでだよ。

 

 そもそも口に出しては言わないけど、夏海のような性悪女があんなイケメンに告白されること自体、奇跡だろう。

 先輩の前ではきっと猫被ってたんだろうな。夏海、見た目だけは良いから。

 

「そう。あんたは付き合ったほうがいいと、思うわけね」

「うん。でも一番大事なのは、夏海の気持ちだと思うよ」

「……えっ?」

「夏海は、先輩と付き合うべきだと思うのか?」

「そ、それが分からないから、相談してるんじゃん」

「じゃあ質問変えるけど、夏海は先輩のこと好きなのか?」


 俺の言葉を受け、今度は夏海が「うーん」と腕を組んで考える素振りを見せる。

 

「箕輪先輩……尊敬できるし、かっこいいなあとは思う。でも恋愛対象として意識したことはなかった、かも……?」

「なるほど。じゃあ付き合うべきだな」

「なんでよっ!?」


 夏海は大声で叫んで、立ち上がった。

 そして俺が座っている席の机をバンと叩き、顔を近づけてくる。

 

「話聞いてたぁ!? 『恋愛対象として意識したことない』って言ってんのよ!?」

「いや、よく聞く話じゃん。最初はそうでもなくても、付き合い始めてから徐々に好きになってくパターン」

「そ、そうなるとは限らないじゃん!」

「でも、なるかもじゃん。ていうかあの完璧超人の告白を断るにしては、『今は好きじゃないから』って理由でも弱いって」

「あんた箕輪先輩の評価高すぎ!」

「この学校の生徒なら大体そうだろ……。おい、顔近いって」


 夏海は「ふんっ」と鼻を鳴らし、また席に座った。なぜ真剣に相談に乗っているのに、怒られたのだろう。

 納得いっていないような顔をしながら、夏海はまた口を開く。

 

「そもそも……好きでもないのに付き合うなんて、先輩に失礼じゃない?」

「そうかな?」

「そうよ。失礼よ」

「そうかな。俺が先輩なら、嬉しいけどな……」

「……へっ?」


 今度は呆けたような高い声を上げる夏海。俺は構わず続ける。


「だって、夏海と一旦は付き合えるんだぜ? そんで、好きになってもらうチャンスまで頂けるわけだろ? 羨ましい限りだよ」

「へ、へえ~……。あんたは、そう思うんだ?」

「うん。だからさ、先輩もきっと嬉しいと思うよ。付き合っちゃえよ」

「待ってって! さっきからあんた、すごい背中押してくるわね!?」 

「先輩と付き合いなよ、夏海。俺の目には二人の、幸せな未来が見えるよ」


 結論を決めるにふさわしいはずの俺の台詞に対して、なぜか夏海はいまだ、迷っているような表情を見せる。

 

「で、でもぉ……」

「……なあ、夏海。もしかして」

「な、なによ……?」 

「お前、俺に気を遣ってんのか?」

「えっ! そ、それは」

()()()()()()()()()()、知ってるんだろう? そのことをお前は気にしてるんじゃないのか」

「……」


 黙った。図星のようだった。

 

 やはり。いつだかクラスメイトに夏海に対しての想いを聞かれて、正直に答えたら、いつの間にかクラス中に噂が広まっていた。

 それが夏海の耳に入ってたとしても、おかしくはない。

 

「……うん。知ってた」


 夏海はあっさりその事実を、認めた。


短編ですが、ぜひ最後まで読んで頂きたい作品になります。よろしくお願いします。

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