タナゴ
空の箒を手にとって
地面を掃いていたら
箒から
桜の花びらが
広がって
一面が
花びらだらけになり
その合間から
また
チューリップが
のびてきて
色彩のクレヨンで
描いたような
花が咲き
感情の地平の
なだらかな
曲線の流れに
言葉たちが生まれ
草書体の
文字は崩れゆき
折り重なって
草原のような
どこかの景色に
似た
蜃気楼の
揺らいだ
その辺に
クチボソやら
タナゴやらが
宙を行き交い
釣り人が
糸を垂らして
釣れたのは
淡い天使だったりして
そんな世界に
春の刻はスライスされていく
その捲れた
ところには
春の見物人の新鮮なこころが
シャボン玉になって
浮かんで
そうして箒を空に戻すと
どこから来たのか
忘れた帰り道を
探し始めて
迷い道を行く