神を信じずに地獄へと送られた男
「貴様は神を信じず、教えを守らず、不敬を働き、冒涜した。よって地獄へと送られる」
その言葉を聞いて審判を待っていた男は泣き崩れる。
そしてすぐに天使がやってきて男を地獄へと連れて行った。
地獄へ案内された男は辺りを見回して首を傾げる。地獄の責め苦がなく、普通に人々が生活している光景が目の前に広がっていたのだ。
そんな不思議そうにしている男に、住民の一人が話しかけてくる。
「おや、新人さんかい?」
「え、ええ。地獄行きだと言われて絶望していたところだったのですが……」
住民は笑ってこう言った。
「神はこうお考えなのさ。神のいることを知っているのにその教えを守らず、神に見捨てられることこそが一番の地獄、とね。それ以上の責め苦など必要ないのさ。酒を飲むのもなにをするのも自由だぞ」
「なるほど……。あれ、地獄がこうなっているということは……」
神の教えの数々を思い出し、それらを守る窮屈さを想像した男は、産まれて初めて神に感謝した。
お読みいただきありがとうございます
面白ければ評価や感想をお願いします