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2:【satanic tale1】『エナ』【プロローグ】

イストリア作『エネアロイア』より『エナ』。1である人間と1以下の非人間の物語。※設定が少々グロ分を含みます。ご注意下さい。あるいは半人半獣系のモンスターをご想像下さい。


 人とは何かと神は尋ねました。

 ある者は言いました。それは“素晴らしい知能”のことである、と。

 ある者は言いました。それは“人間らしい姿形”のことである、と。

 ある者は言いました。それは“やさしいこころ”のことである、と。

 神は彼等の言葉に失望し、彼等を“望む姿”へ変えました。

 それならば、“知能のない”者は人間ではない。

 それならば、“姿の欠けた”者は人間ではない。

 それならば、“心の貧しい”者は人間ではない。


 天は人を罰し、その罪深さを刻み込まん。

 お前達は人にあらず。

 人以下。一以下の存在。

 栄えし呪いよ。未来永劫お前達を蝕んでいけ。


 罪を生み出す掌よ  永久に人から消え失せろ

 罪を囁く唇よ     永久に開く事なかれ

 罪に魅せられ双眸よ 永久の闇を彷徨うがいい

 罪へと歩んだ両足に 永久にこの地を踏ませるな

 罪に汚れし人間よ  永久に己を無くし続けろ


 水鏡が映すモノ。それこそ主らの現であろう。

 それならば、主らが人間であるはずがない。

 それならば、この地上に何人の人間が生きていようか。

 足りぬ。足りない。欠けている。壱へと至れぬ者ばかり。

 ひとり。私はひとり。地上でひとりの壱なる存在。

 神は完全な存在、人間すなわちエナ求む。


 「我が片割れよ何処に在らん」


 終わらない花嫁捜し。

 人の滅んだ世界では、何年待っても神は一人きり。

 永き年月のその果てで、巡り会ったひとりの“人間”は……

 剣を手にした血塗れた“花嫁”。召喚されし“救世主”。


 三日三晩に渡る戦いの末……遂には神は敗れたり。

 神が最期に歌った詩は、呪いの言葉の贈り物。


 「剣から伝う黒き血が、人を神へと変えるだろう」

 「主はエナ。ヒリアに至る……気狂う程の時の中、足されることも引かれることもない不変の壱として世界に君臨するがいい」


 世界に降りた“救世主”。

 ひとりだけの“エナ”なる存在。

 過去か未来か何時頃か、彼もそれを求めるだろう。


  「我は此処に。我は此処に。片割れ、花嫁、何処に在らん」



 救世主は世界を救いました。けれど神を討っても民にかけられた呪いは解けないまま。


 《戦え、奪われたものを取り戻すために!エナを求める心があるなら!》


 それは、神が残した言葉の一部。

 彼等が人に戻るためには、犠牲が必要。呪われし民が最後のひとつになった時、呪いは解けるという……神が残した言葉。

 それが真実か偽りか、それは誰にも解らない。けれど人の心を持たない民達は、疑うことを知らずそれを信じてしまう。

 神が倒されて数百年。多くの種が消えていった。


 残ったのは、呪われし五つの民。

 手を失った空の民。キアン=ソロン。

 足を失った海の民。クルシェドラ。

 口を失った草原の民。バロメッツ。

 瞳を失った洞穴の民。オラーマ。

 形を失った共生の民。フェルデランス。

 そして壱を超えた混血、禁忌の民。キマイラ。


 目的のために手段は選ばず、手段のために目的を忘れ……彼等の内に残ったのはひとつの憧憬。

 それが彼等を突き動かす力であり、存在理由。

 人がどんなモノかも知りもせず、それでも人に憧れる純粋な愚者の物語。


 *


 元は同じ人間だったはずの彼等。それでも彼等は人ではない。だから知性も理性も人であった頃より劣ってしまった。

 足りないモノがあるのなら、それを喰らえばいい。そうすればそれが取り戻せる。そう考えた民がいた。

 獣になった彼等の世界は弱肉強食。元が何であれ、今は敵同士。形の異なる民達は、人間に戻るために互いを殺し合うようになった。

 それに拍車をかけたのは創世神。最後の民を人間に戻してやるという彼の言葉が世界に多くの死と悲しみを呼び寄せた。

 そんな世界を救ったのは異世界より現れし救世主。彼は創世神を撃ち倒し、呪いを解く方法を見いだした。

 それでもその方法は、とても残酷なモノだった。

 だから救世主は他の方法を探した。その間も多くの民が地上からは消えていく……


 多種多様だった民の数が五まで減った時……救世主はかつて封印したその方法を世に知らしめる。

 救世主の力を持ってしても、人に戻せるのは一種族が限界。創世神が残した方法を用いて戻せるのも一種族。つまり、それが真実ならば二種族を救うことが出来る。

 それを彼がこれまで秘めていたのには理由があった。それを民に教えれば、争いを好まない民も戦いに巻き込まれてしまうから。

 それでも今、それを教えたのは、このまま滅ぶとしても……滅びゆく民にも希望は等しくあって然るべき。そう思ったからでしょう。


 救世主の解呪の儀式。それは生贄の儀。

 長の血を引くモノ。彼等の血を持って、呪いは解ける。一つの民のために、四つの民……その頭が消える。

 もう一つの解呪のためには、戦力……民の数を削れない。一種族一人という最小限の犠牲で済む救世主の儀式は、民達にとってありがたいもの。民の数に関係ないこれは、弱小の民にも一縷の希望を与えました。

 救世主は長達に十年の月日を与え、彼等の子等を強く育てることを命じ、儀式の終了まで民達は互いに休戦……世界は束の間の休息に包まれました。

 儀式で戦う者達は“次期長”と呼ばれ……その候補達は、まだ幼い子供達。それでも彼等は十年後まで技を磨き、強く生き抜くことを強いられて……それぞれが成長を遂げました。

 《グリームヒルド》……来るべき戦いの日まで、あと半年。そんな時……世界に一つの星が降る。それが招くは救済、厄災。ヒリアへ至る救世主、新たに使わされし一人のエナ。けれどエナではヒリアの花嫁にはなれず、呪いは千年の時を経て……歴史は再び繰り返す。


 幸い哉、幸い哉。愛すべき愚かさよ。無知なる盲目よ。疑念を知らぬ獣たちの潔さ。悩むも偽るも人が特権、そして罪。

 罪には罰を。報いは報い、血は血でもって贖わん。


最初は腕の代わりに羽とか足の代わりの尾びれとか付ける設定がありませんでした。ないとグロ過ぎると自重した結果、民がモンスター化。まぁ、いいか。

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